表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ギルドは本日も平和なり  作者: ナヤカ
規格外の最強と最凶 編
168/206

十二話 GO HOMO

走って冒険者ギルドに戻る。やがて、ギルドの建物を目にすると少しだけホッとした。見た感じは、何も起きてはいないようだったからだ。


なんだか、冒険者ギルドは俺の『わが家』みたくなりつつある。

中に入ると、バリザスが目の前にいた。


「うおっ」

「なっ、なんじゃ! ……テプト!」


鉢合わせである。バリザスは俺だと分かってから、肩をいきなり掴んでくる。その勢いは強く、思わず後ろによろめいてしまった。


「おぬし……無事だったのか!」

「ちょっ、ちょっと待ってください」

「わしはてっきり……今から診療所に向かおうと思っていたところじゃった」


その言葉から、どうやら一足遅かったことに気づく。


「来たんですね?」

「ということは……やはり、奴が言っておったのはテプトじゃったか」

「はい。町に入る前に止めようとしたんですが……」

「やられたのか」


バリザスに言い逃れは出来なかった。


「……はい」


「そうか。じゃが、無事で何よりじゃ」


その言葉に、胸が熱くなる。


「すいません。その……奴は何者なんですか? ここの冒険者だと言っていましたが」

「その話は部屋でするべきじゃな」


そう言ってバリザスは、踵を返し部屋に戻り始める。それに俺も従った。バリザスは階段を上がる際に、受付の女性たちに声をかける。


「わしはこれからテプトと大事な話がある。わしに用がある者が来ても、通さぬように」

「……心得ました。どれくらい……その話はかかりますか?」


その言葉に、バリザスは俺の方を向いた。


「テプトよ。少し顔色が悪いぞ。長期戦になるが、大丈夫かの?」


傷は治ったといっても、確かに体調は万全ではない。それが顔色に出ていたのだろう。だが、奴のことを早く知りたいという気持ちが勝っていた。


「問題ありません。俺のことは気になさらず」

「そうか。……では、三時間ほどじゃ」


ブッシュ!!


突然、奥の方でそんな音がした。なんだ? 見れば、鼻血を出して倒れている受付の女性が見える。


「どうした!?」


バリザスの言葉に、倒れた女性に駆け寄った別の受付員が頭を下げる。


「申しわけありません。どうやら、発作が起きたようです」

「発作じゃと!? すぐに診療所に」

「俺が診ます」


そう言って女性に駆け寄る。


「バリザス様と……テプト部長……うひ、うひひ」


なにやら、幸せそうな笑みを浮かべて倒れていた。俺はとりあえず、彼女に回復魔法をかける。その時、少し頭がクラクラした。


「テプト部長、この子は大丈夫です。それよりもご自分の心配をなさってください」


別の受付員はそう言ってくる。どうやら、俺の顔色は相当悪いらしい。


「わかりました。本当に大丈夫なんですね?」

「はい。むしろ、彼女は今幸せを噛み締めている最中だと思います」


幸せを噛み締める? どういうことだよ。


「じゃあ、頼みますね」


それから、バリザスの元に戻った。


「……また顔色が悪くなったな」

「ちょっと、回復魔法で無茶をしたもので」

「横になっていた方が良いのではないかの? そうじゃ。ベッドが置いてある休憩室を使わせてもらおう」


ブッシュ!


見れば、今度は別の受付員が倒れていた。


「大丈夫です! この子も発作ですから!」


また別の受付員が駆けつけてそう叫ぶ。気になったが、大丈夫だというので今度は駆け寄らなかった。


「いえ、休憩室を使うのは止めましょう。俺は大丈夫ですから」

「……そうか」


バリザスは残念そうな表情をする。


「そういえば……テプトは初めてかの?」


唐突に、バリザスはそんなことを聞いてくる。初めて? なにがだ?


「なんのことですか?」

「いや、その……わしは信じられなくてな。お主がそのーー」


それから、バリザスは俺に顔を近づけて耳打ちしてきた。


『負けたことじゃ』


ブシュッ!


「……はい。初めてです」


ブシュッ!


「そうか。……わしは何度も経験がある。お主もあると思っておったぞ」


ブシュッ!


「そうですか。……あまり、良い気はしないですね」

「大丈夫じゃ。経験を重ねればすぐに切り替えられるようになる」


ブシュッ!


「善処します」

「うむ。では、行くかの」

「はい」


そうして、階段を上がる。直後、冒険者ギルドはしばらく受付を停止していたらしい。なんでも、受付担当の者がいなくなったからだそうだ。その事実を知るのは、ギルドマスターの部屋で話を終えた後なのだが、理由については不明であった。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ