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ギルドは本日も平和なり  作者: ナヤカ
規格外の最強と最凶 編
157/206

一話 十年前の報告書

ーー王都。


不正な魔術式発覚のため、魔術師ギルドで強制捜査が行われた。それは、十年前に壊滅した組織『ラリエス』との関わりが疑われたことによるものであり、関係者とおぼしき者たちは皆逮捕される。


その結果、魔術師ギルドからは大量に保管された『ラリエス』の書類が見つかった。それは彼らを罰するための証拠として押収されたのだが、その途中、大量の証拠書類を抱えて運んでいる兵士の腕から、一枚の報告書が風によって飛ばされてしまう。



ーーーーーー


『実験施設壊滅の概要』


……先日、タウーレン西に建設された実験施設が、何者かの手によって破壊されたのを確認した。実験施設では、魔核を体に埋め込んだ『対魔物生物兵器』の開発が進められており、これの失敗によるものではないかと推測される。生存者はなし。生物兵器の残骸もいくつか回収することに成功。しかし、その残骸は少なかったことから、生物兵器が逃亡したと思われる。また、施設の破壊も、生物兵器によって行われたものであると思われる。回収できなかった残骸から予想するに、逃亡したのは十体。その中でも、雷竜の魔石を結合させて生成した最上級魔核の生物兵器、第四十四号は実験体の中でも計測不可能な魔力を保持しているため、危険と判断される。本部には至急、生物兵器破壊の追手を要請する。

なお、実験施設は原型を止めないほどに破壊されていたため、強力な魔法によるものと思われる。追手には魔法の扱いに長けた者たちを選別されたし。

また、破壊された施設の回収予算は…………。



ーーーーーー



その報告書は風に飛ばされ、近くの川のなかに落ちた。水で濡れた文字はすぐに読めなくなり、その報告書が誰かによって読まれることはなく、内容を知る者もいないだろう。





ーーカルバスト。


その町は、アスカレア王国の主要な町の一つ。夜、その町の酒場では、タウーレンで行われる『闘技大会』の事が冒険者たちの話題になっていた。


「なんでも俺たち冒険者も参加できるらしいぞ?」

「王族も招待されるって話だ」

「ほんとかよ。なら、そこで優勝しちまえば……」

「ばか野郎。ランクCのお前が優勝出来るわけないだろ?」

「……それもそうだな」


タウーレンの闘技場で行われる『闘技大会』は、アスカレア王国中に伝わり、いまや冒険者たちの話題となっていた。そして、それは冒険者だけでなく、王都の騎士団、兵士、強さに自信のあるものたちの話題にもなっていた。


そんな話を近くで聞く男がいた。


全身は真っ黒なローブで隠され、その左目には眼帯をしている。酒のグラスを持つ手には、五本の指全てに指輪がはめられており、その手首にもかなりゴツいブレスレットが見える。年はまだ若く、二十代そこそこと思われた。


「そうか……タウーレンで」


男はその話を聞いて、笑みを浮かべる。それから、立ち上がると会計を済ませて店を出る。男はあり得ない跳躍で近くの建物を駆け上がると、何かを呟く。


その数秒後、カルバストの町上空を物凄い速度で何かが通りすぎた。それは、男の立つ場所を一直線に通り抜け、すぐにカルバストを過ぎ去ってしまう。


その日、月は雲に隠れて星すらも見えない。ただ、ふと空を眺めた者は偶然にもその何かを目にした。


その一人、酒に酔いつぶれた男がそのシルエットに一瞬驚きの声をあげる。そして、目をこすってもう一度見上げるも、既にそれは過ぎ去った後だった。


だから、酒のせいで幻覚を見たのだと思ったのだ。


こんな人里の真上を、ドラゴンが通りすぎるはずはない……と。





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