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やどらん

 夜になって、一応、人がはけてないかなと成都武侯祠の様子を見に行く、プレッシャーが弱まり、大分人は少なくなっているが警備などはそのままだ、どうやら英霊たちは人間時代と同様夜は休息をとるらしい。


「斉天大聖ちゃん、関羽の気配は?」


 碧が斉天大聖に尋ねる。

「ないな、奴は確か自身を祀った場所が他にある。そちらにいるのだろう。劉備などの…同格の武将? がいる感じもしない、休んでいるのかね」


 今行っても仕方がないかと、碧と葵と斉天大聖(人がざわつかないよう人間の男に変化済み)がチェックインしておいた安全で評判もいいホテルに入って、まっさきに向かったのは風呂。


「明日は女を磨かないといけないからねえ……しっかり清めていかないと」


 碧が撃たせ湯で修行風味に手を合わせながら語る。


「ある意味清められてるけど、何か清め方が違うんじゃない」


 葵はジャグジーで体の芯から疲れを取っている。


「それより斉天大聖ちゃんは?」


「一緒にいれるわけにはいかないでしょ、不安だけど男湯よ」


「じゃあ連絡とってみる」


「お、碧か、ここ面白いな、変な湯や仕掛けがいっぱいあるぜ! 俺の生まれ故郷でもモチーフにしてるのか?」


「そんなものだよ、入るだけにしておいてね」


「泳いでたけど駄目だったか」


「だめー」


「香りのする水飲んだら味しなかった」


「成分だけはいってます」


「ジュース風呂ない?」


「あーいいねえ、ないけど」


「碧、そろそろあがりましょう、見張ってないと駄目だわこれ」


 葵の提案で風呂から上がることとなった。


「ふぁー、気持ちよかった……」


「お疲れ様碧、誰かさんのおかげでちょっと短かったけど……もうちょっと堪能したかったわねー」


「仕方ないだろ、知らないものは知らないんだからよ、おい、ところであれは何だ」


 風呂から上がり、バスローブに着替えて部屋へと向かっていく途中にある遊技場。


 過去になかったものがいろいろある場所に斉天大聖が興味を引かれたようだ。


「ゲームセンターかぁ、なんていえばいいかしらね、遊技場よ。それに、卓球台ね」


 葵がとりあえず説明するが、並んでいるゲームはよくわからないものが多い。なんだこの300個のゲームが一個に入ってるって……


「姉ちゃん、やらせてみたら?」


「オチが見えてるんだけど」


「オチ?」


「ぶち壊すわよ絶対」


「ま、まぁゲームはねー、イラッとするのを楽しむものと理解しないとね。でも、卓球ならなんとかならないかな」


「まぁピンポン玉とテーブルの周りに結界を貼れば何とか」


 と、いうことで中国の国技といってもいい卓球勝負などと洒落込む。斉天大聖にルールも簡単に教え込む。


「分身していい?」


「ダメ、人間の範疇で」


 斉天大聖の猿知恵に葵が突っ込む。


「斉天大聖ちゃん、関羽に負けて落ち込んでるところ悪いけど、私手加減しないよー?」


 碧が挑発する。


「あー、猿の古傷えぐる? いいよ、こっちもこの姿でのフルパワーいくから」


 斉天大聖も本気でいくようだ。


 碧のサーブ。金剛なみの強度を得ているピンポン玉がものすごい速度・角度でバウンドし斉天大聖側のテーブルの隅を叩く。


「正確だな、だが、読みやすい!」


 碧の身体能力なら際どいラインを狙ってくるだろうと思っていた斉天大聖はあっさりと玉をとらえ、こちらも剛速球のスマッシュで返す。

 狙いは碧の立ち位置の線対称のネットギリギリ。


「うわわわわ、この位置はまずいよ!?」


 正面に戻っていた碧だったが、速度的にまともに返す体制を取るのは困難な位置に打ち込まれている。


 どうしようもないので、受け止めて、体のバネを使いを玉の勢いを殺しながら、緩い球をなんとか反対側に浮かせて返す。だが、位置取りをしに行く余裕が奪われている。


「これで詰みっと」


 斉天大聖はさらに揺さぶるようにスマッシュを打ち込む。


「どうですかねー」


 碧はニヤリ……と笑う。


「なっ、落下地点に滑り込んで返してきやがった!」


 そしてゆっくりと球が戻っていく間に碧は姿勢を整える。


 一瞬だが終わらないラリーのように思えたが、それぞれの体力が消耗しだすと、初心者同士の戦い。

 球のスピードと威力がちょっとの打ち方の変化でも大きな偶然が発生する技となり、それぞれが理解できない失点を繰り返いていく。


 そして、ギャラリーもつき始める。


 碧10-斉天大聖9で迎え、ギャラリーの数は十数人にも膨れ上がっている。


「はぁ……はぁ……」


 二人とも息も絶え絶えである。


「ワーワー」


 ギャラリーはわいているが、応えている余裕はない。


「さぁ、私の劇的勝利の瞬間を皆さんに見てもらいましょうか」


「へへ、逆転こそが勝負の美しさを魅せるんだぜ」


 碧がサーブをしようとする……


「って、おい」


 すか、とサーブをミスする碧。


「なんですか、声掛けですか!? 長嶋監督戦法は卑怯じゃありませんか!?」


 気を取り直してもう一度サーブをしようとする碧。


「そうじゃなくて、碧!」


 今度は葵が緑に話しかけ、またもやサーブをミスする。


「二人とも何ですかー!? 今のなしですよ!?」


「違うの、ふたりのバスローブが運動量に耐えきれなくて、その分解して、ほつれて、見えてる状態なのよ!」


 葵が指摘する。


「おおおおお?!」


 式神シキオウジを呼び出し、そのまま自らとついでに猿を囲わせると再び風呂場方面に走っていく碧。


「……あちゃあ」


 葵はその様子を呆れながら見ていた。


 シキオウジパンツ姿になっていう斉天大聖も、風呂場に向かい再び体をきよめることとなった。


「勝負は俺の勝ちでいいのかな」


「……一応いいんじゃないかしらねえ」


 斉天大聖の落ち着きっぷりを見てたら、まぁ貫録勝ちといったところだろうか。


 そう葵は考えた。


 そして部屋に移動、3人? で一部屋。 


 そこそこ以上に広いし、アメニティも充実している。


「もうお嫁にいけないよ」


「大丈夫、元からいけないわ」


「ひどい」


 喚く葵を受け流しながら、3人で歯磨きをする。


 明日は早い……


 早く眠ろう。


 ──深夜──


「お姉ちゃんお姉ちゃん」


 碧が葵に呼びかける。


「うん……? 何?」


「妖精さんが部屋ノックしてる」


「開けてあげれば?」


 碧達にとってはこんなこと日常茶飯事である。


「うん」


 碧がドアを開けると……


 そこには小人サイズの武将がいた。

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