【4】first-
【4】first-
――なんて綺麗なんだろう。
目の前の小さな天使。その天使は13、14歳程の少女だった。
楓はじっと少女を見つめる。
ドクンと高鳴る胸の鼓動。そして、奇妙な既視感。
楓は、不思議にも少女に惹かれる自分を自覚した。初めての感覚に楓は戸惑う。
――どうして彼女に惹かれるのだろう。
――どうして胸が高鳴るのだろう。
――そしてこの既視感は一体。
重なる疑問の数々。それらが渦を巻き答えを求め楓の頭の中をぐるぐると回る。
しかし、とろけだした楓の思考がそれを拒んだ。
疑問は淡く彼方へと夢散する。
そんなの、どうでもいいじゃないか。
と誰かの囁く声を聞いた気がした。
ふと、通信機から声がする。
「楓君。それの拘束器を外すからね。
一応、気をつけておきなさい。
まあ、大丈夫だとは思うけどね」
通信機がプツリと切れ、同時にカチャンと目の前から音がした。
拘束器の外れた音だ。
卵型の檻が地面へ引っ込み、少女の拘束器も上から順に弾けてゆく。
カチャリ、カチャリ、と拘束器は左右に開き遂に少女を留め置くものが無くなった。
そして、少女の身体が重力に引かれ前へ傾きゆっくり地面へと倒れ伏す。
しかし、それは現実には起こらなかった。
少女のクリスタルの様に透明な翼がトクンと脈動し僅かに光を放った。
すると重力に逆らう様に身体が一瞬、ふわりと浮き上がり、そして静かに地面に降り立った。
まるで本物の天使が大地に舞い降りた様な、そんな光景。
少女の瞳がゆっくりと開く。
透き通った翡翠色の大きな眼。その奥には神秘的な七色の輝きが散りばめられていた。
その眼が楓を捉えると、驚いた様にぱちくりと何度かはためく。
まじまじと観察する様に此方を見つめる少女に楓は少しむず痒さを感じた。
そして、こてんと可愛らしく首を傾げ
りんと鈴のような声が少女の口からこぼれた。
「あなたは……だれ?」
疑問に満ちた言葉。
当然、少女はまだ自分を知らない。
少女の言葉に続けて通信機から声がした。
「ほらほら。
自己紹介だよ、楓君?」
早く、早くと急かす局長の声。
煩わしい彼の忠告を頭の外へと追いやる。
静かに地面に膝をついて、彼女と同じ目線で答えた。
「僕は、楓って言うんだ」
「……かえで。……かえで」
繰り返し繰り返し、
彼女は自分に覚えこませるように、確かめるように何度も呟いた。
「――君の名前は?」
紙面上では知っている。
でも、聞かずにはいられなかった。
彼女は小さく一言。
「…………いぶ」
と言った。
これが僕と彼女の最初の邂逅である。
なんだか主人公が急にロリコンっぽく……。