表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/7

金糸雀の歌

――歌うんだ――

最初は私の聞き間違いかと思いました。

しかし、彼は再び同じ言葉を口にします。


――歌うんだ。こういうときは歌うものなんだよ――

彼の場違いな提案がおかしくて、私は思わず笑ってしまいます。

若干の落ち着きを取り戻した私は、彼に対して反論します。

でも、私はこんなに泣いちゃったから。きっと、酷い歌声になりますよ。って。


すると、彼は私の頭を優しく叩くと、神妙な面持ちで告げます。

歌うのも水夫の大事な仕事だ。だから、歌え。って。

彼の言葉に微笑みを返すと、私は天を見上げて喉を開きます。




私の歌声が朗々と響き渡ります。

それが海原へと溶け込むと、まるで歓声が上がるかのように飛沫が巻き上がり。

瞬く間にその姿を変貌させる海の上で、私たちを乗せた小船は木の葉が舞うように踊り出します。


荒々しく揺れ動く船内は、なぜだか妙に心地が良くて。

私は彼の頭を膝に乗せると、優しく歌いかけました。


――俺は子守唄が必要な年齢じゃない――

そう言いながらも、彼の瞼は少しずつ下がっていきます。


そして……。

一際高い波が巻き起こり、木の葉はゆっくりと舞い降りていきます。

くるり、くるりと海の底へと進みゆくそれは、最期の時まで優しい、優しい歌声を響かせて。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ