轟音
あれから特に問題もなく船路は進み、目の前には港町が見えてきた。
感謝の言葉を口にする彼女に「気が早い」と釘を刺しながらも、俺も上陸後の予定について考えて始める。
「なぁ、上陸したらひとつだけ頼み事があるんだが……」
俺の言葉に振り向く彼女。
俺と彼女の目線が合ったとき。
突然、轟音が上がった。
激しく揺れる船体。
俺は扉に駆け寄ると、甲板へと飛び出した。
***
彼に呼ばれた気がして振り向いたとき。
突然の轟音が上がりました。
「くそっ!」
激しく揺れる船の上で、彼は忌々しげに叫び声を上げて飛び出します。
私も続いて甲板へと出ると、港へと繋留されていた軍艦が、こちらへと砲身を向けているのが目に入りました。
「あのクソ領主、自分の宝が盗まれたからって俺たちを海賊にしやがって!」
目の前で砲身がうなり声を上げます。
「戻れ!」
そう怒鳴られたと思った途端、目の前がひっくり返りました。
漸く事態を把握したとき、私は船内に吹き飛ばされていました。
背後に目を向けると、彼がクッションのように挟まっていて。
その腹部から血が溢れているのを見た私は、思わず悲鳴を上げました。
「大丈夫だから、落ち着け」
そう言って、ぽんと頭に手を置く彼。
私の心配をするようなその仕草に、思わず涙が溢れ出します。
なんで、なんでこんな怪我をしてまで、厄介事を持ち込んだ私の心配を……。
私の涙を無言で受け止めていた彼は、唐突に妙なことを口にしました。