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「ユライア親衛隊第一小隊!

本日の食材をもって至急出頭せよ!

繰り返す、至急出頭せよ!


『壷よ、道を開け!』」


ユライアさんが叫ぶとともに、彼女の抱える壷に描かれた文様が青白く発光し始めた。

四方八方に光を放ちながら、ゆっくり脈動し始める。

ユライアさんの顔に、歓喜の笑みが浮かんだ、


「さあ、来ましてよ~♪」


「一体何が?」


青白い光は我慢できないぐらい眩くなって、私たちは全員目を閉じてしまった。

ユライアさんの方から、強い風が吹いてくる。

光と風に煽られ、私は両手で顔をかばった。

しばらくして風も光も収まって、やっと当たりは静かになった。

そして幾人もの人の気配がして・・・。


「お待たせしました~ユライアさま!」


と唱和する、若い乙女達の声がした。

私はあわてて目をあけた。

眩い光のせいで少し目がちかちかしてはいたが、視力に異常はないはずだ。

だが、私は自分の目を疑ってしまった。

壷を抱えて立つユライアさんのまわりに、信じられないものが存在していたからだ。

おそろいの糊のきいた真っ白なエプロンと青いワンピース、緑のギンガムチェックの頭巾をつけた若い乙女達が4人立っていたのだ。

彼女たちはみんなそろって、両手に山盛りの食材を抱えていた。


「ユライアさま、今日はとびっきりの新鮮なマグロが手に入りましたの~。

 綺麗に解体して一番美味しい赤身のブロックをお持ちしました」


「私は今朝取れたての野菜と香草を、近郊の農家から仕入れてきました」


「私は地鶏の卵と、しぼりたての牛乳。

 それに新鮮な生クリームとバターですわ」


「私は頼まれました包丁一式、ぴっかぴかに研いでまいりました」


きゃわきゃわきゃわ~~♪

おそろいの服を纏った若い娘たちが、ユライアさんと壷の周りを飛び回っている。

場違いこの上無しの光景だ。

私たぢ『花咲ける乙女達』のメンバーは、あごかっくん、膝かっくんで、、その場に座り込んでしまった。



「ゲートの壷ですと?」


魔法使いのアイリスは、驚愕の表情で叫んだ。


「そうですの~♪先祖代々伝わった、魔法の品ですの=」


ユライアさんは紅茶のカップを優雅に傾けて、にっこり微笑んだ。

毎日、食材を運んでいたのは、『ユライアの晩餐会』亭に勤務している、彼女のメイド達だった。

彼女たちは自らを『ユライア新鋭隊』と称し、4人編成で第一から第四小隊まで存在する。

お店とユライアさんの自宅で、かわるがわる働いているという。

例の怪しい壷は「ゲートの壷」という。

古代魔法王国時代の品で二つ一組なのだそうな。

片方の壷を遠く離れた土地に置いて呪文を唱えたら、少人数の人間をその地に送れる移動魔法がかけられているのだ。


「それは非常に珍しい品で、何十万ガメルもするんでは?」


カメリアが恐る恐る問いかける。


「そんな品を旅に持ち出すなんて…信じられませんわ」


リリーは頭痛をこらえるようにして、かすかに首をふった。

今、私たちはメイド小隊にお茶を入れてもらいながら、ユライアさんから事情を聞いていた。


彼女曰く。


「新鮮な食材を使ってこその、最高級の料理なんですのよ」


炎天下の旅で、保存食料を使っての料理なんて死んでも作りたくない。

自分の料理人のプライドが許さない。

ならば「ゲートの壷」と、もう1つの先祖伝来のお宝「氷の箱」を使用して、食材の保存と配達をすればいいと思いついたそうだ。

毎日、メイド部隊を指揮して、食材と酒とを配達させていたらしい。


・・・私はショックだった。皆もそうだ。

それなりの冒険をしてきた冒険者だというのに、毎晩来ていたメイド部隊の気配に気がつかなかったとは・・・。

野営の時は順番に当直をしていたのに・・・だ。

今晩からレインボーフェザードラゴンの狩りにかかるというのに、私たちは依頼をこなすことができるのか。

最高に美味しいお茶とお菓子を目前にして、どよ~~んとする私達とは対照的に、ユライアさんとメイド部隊はほんわかほんわかしているのだった。



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