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依頼主との遭遇

私たちは、さっそく依頼主に会うべく冒険者の店を後にした。

『ユライアの晩餐会亭』は、貴族や大金持ちが住む高級住宅街にあるグルメ相手の料理店だ。

裏通りの屋台や酒場が常連の私たちには、かなり敷居の高い店だ。


「この依頼はちょろいわね♪」


鼻歌を歌いながら、カメリアは今にもスキップをふみそうな足取りだ。

動きやすいなめし皮のチュニックと半ズボンの軽装。

腰には盗賊として必須のアイテムの七つ道具、小ぶりの短剣で武装している。

南方出身の彼女は、引き締まった体躯と小麦色の肌で、茶色の髪を短く刈った見るからに活発な女性だ。

鳥を捕まえるだけで2000ガメルの報酬。

金庫番の彼女は、かなり舞い上がっているらしい。


私はそこまで楽観的にはなれなかった。

まだ正体もよく解らない新種の鳥、どんな習性や毒をもっているか、解ったもんじゃない。

まずは依頼主にあって、くわしい話を聞いて、下調べをしてからでないと鳥退治にはいけないし・・・。


「ローザ、そんな難しい顔、あなたには似合わなくてよ」


いきなり私の頬をつついたのは、ハーフエルフのリリーだった。

エルフの血を引く彼女は、銀髪と淡い色の瞳と華奢な体つきの守ってやりたくなるような美少女だ。

だが、精霊魔法と神聖魔法を使う強力な冒険者でもある。

胸にさげた癒しの女神の聖印は、その証しだ。

彼女の魔法のおかげで、負傷しても安心して戦える。


「悩みすぎるのが、お前の悪い癖だ。闘う時は猪突猛進だが」


低い声でそう指摘したのは、魔法の杖をついたアイリスだ。

長い黒髪を束ね、フードの中に隠している。

秋になったとはいえ、まだまだ暑いのに長袖の胴着と長ズボン、その上からフード付のマントを羽織っているのだ。

魔法使いたる者、みだりにその姿を人目にさらしてはいけないらしい。

暑くないのかと、この姿を見るたび思ってしまうが。


「そうそう、行ってみたら話しはわかるって♪」


カメリアがアイリスの言葉を受け取って、私の背中を強くたたいた。


「そうだな、悩むのはあとでいいか」


私たち、女性ばかりの冒険者『花咲ける乙女達』の一行は、やっと目的地にたどり着いた。


高価そうな家具と、装飾品。

フカフカの椅子と、高価な大理石張りのテーブル。

ほっそりとした優美な曲線を描く、白磁のティーセット。

お上品な一口サイズの焼き菓子。

しかし、ポットの仲のお茶はすっかり冷めてしまった。

私たち4人は、すぐに『ユライアの晩餐会亭』にある個室に案内されてお茶とお菓子を供された。


「ユライア様は、今手が離せませんので少々お待ちくださいませ」


メイドの言葉を聞いて待つこと2時間。

そろそろ、みんな痺れを切らし始めたようだ。


「私、床に胡坐をかきたい」


カメリアがもじもじしながらそう呟く。


「なんだか落ち着きませんわ」


「早くユライア殿ガきてはくれまいか」


リリーもアイリスも、どうにも落ち着かないらしい。

私たちが贔屓にするのは、広場の屋台や裏通りの居酒屋である。

お金持ち相手のこんな店は、どうにも苦手だった。


「様子をみてくるか・・・」


こんな時、最初に動くのがリーダーの役割だ。

私は席を立って、扉の方を振り向いた。

それと同時に、部屋の扉がバーーンッと大きく開いた。


「皆様~~、お・ま・た・せ!」


飛び込んできたのは、にこやかな笑顔の小柄な中年女性だった。

小太りのいかにも人の良さそうな女性だ。


が、その姿は!


血にまみれた白衣と帽子。

これまた血と油にまみれた、両手持ちの牛刀。

にこやかな笑顔だけに、その姿は異様で凄惨だった。


「何者だ!」


思わず、私たちは戦闘態勢をとった。

リリーとアイリスは呪文の詠唱を。

私とカメリアは、武器を構え、魔法使いの前に立つ。


「あ、あのう~驚かせてしまいました? 私がユライアですのよ~」

 

・・・これが、私たちと依頼者ユライアとの出会いだった。

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