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終わりの始まり?

見事な牛刀捌きで、ユライアさんはついにレインボーフェザードラゴンを解体し終わった。


「さあ、お嬢さん方。これから血抜きを始めます事よ!」


血まみれの牛刀を拭き清め、そう号令をかける。

メイド部隊の面々が一斉に駆けつけ、ユライアさんの前に整列する。

そして協力して、レインボーの巨体を、解体して組み立てなおした大八車の方へ運び出した。

一見、なよやかな乙女達だが、その怪力ぶりには驚かされる。

私たちも慌てて手を貸そうとしたのだが、慣れていない者は手をださないで下さいと断られてしまった。

あれよあれよと見ているうちに、かの鳥は大八車を解体した台に逆さにつるされた。

そのまま血抜きされつつ、外の皮膚には幾重にも香草塩がまぶされてゆく。

その様子を監督していたユライアさんが、いきなり衣を裂くような悲鳴をあげた。

何事かと彼女を見やると、両頬に掌をあてて驚愕の表情で吊るされた鳥をみつめている。


「あああぁぁぁ~~~なんてことなのおおおぉぉ!!

なんて初歩的なミスを犯してしまったの~~~!!」


その尋常でない様子と叫びに、メイド部隊全員が集まってユライアさんを取り囲んだ。

彼女はがっくりと膝をつき、両手を握りしめてぶるぶると震えている。

顔色は真っ青だ…よほどのことがあったとしか思えない。

私たち4人は顔を見合わせ、頷きあった。

代表して私がユライアさんのぞばにいき両肩に手をかけた。


「ユライアさん、どうしたんです?

私たちに解決できるなら、どんな事でも手を貸します。

それが我らの仕事です」


「…に…は…ませんの」


ユライアさんは視線を私の方におよがせ、小さく呟いた。


「なんですって?」


「あの大きさだと、お店のオーブンにはいりませんのよ!」


「おーぶん?」


おーぶんにハイラナイ…

おーぶんって、オーブンのことか?


「なんてこと~~!料理人たるこの私が、素材の大きさを見誤るなんて!!

ああ、どうしましょう~~せっかくのレインボーちゃんを~~!

ローストできないだなんて!!」


そう叫ぶなり、ユライアさんは肩を震わせ、私の胸に取りすがって号泣し始めた。

メイド部隊のお嬢さん方も、それにつられて泣き始める。


「ユライアさま~~泣かないで~~」


泣き叫ぶ乙女達の阿鼻叫喚・・・どうしたらいいんだ。

泣き崩れそうになるユライアさんを抱きとめ、私は救いを求めて仲間たちの顔を眺めていった。

すると、ずっと何かを考えていたカメリアがはっと顔を上げた。


「ここから徒歩で一日の距離に、火山があっただろう。

 あそこの火口で炉を作って蒸し焼きにしたらどうだろう?」


「火山の地熱を利用するのだな。ふむ、いけるかもしれぬな」


アイリスがそういい、リリーも目で同意をしめした。

そうか、さすが博識なカメリアだ。

ユライアさんは泣くのをやめ、同意を求めるように私の顔を見上げてきた。


「そうですわね…諦めるなんて、料理人の魂にあるまじきことですわ!」


再び彼女の瞳に、魂の炎が燃え上がり始めた。


「皆さん、泣いてなんかいられませんことよ!

 レインボーちゃんの中を洗い清め、詰め物をいたします!!」


やりますわよ~~!と雄叫びを上げて、ユライアさんはレインボーフェザードラゴンに突進していった。

…なんて立ち直りの早い人なんだ。

詰め物をする作業は、一糸乱れるメイド部隊の活躍で、完璧に出来上がった。

巨大なローストチキンの焼きあがる一歩手前のものが、組みなおされた大八車に積まれている。

それを満足そうに眺め確認してから、ユライアさんはぼーっと見物していたわたし達4人の方に歩み寄ってきた。


「皆様、ここまでほんとうにお世話になりました。

 改めて火山までのッ道案内と、帰路の道中の護衛をお願いいたしますわ」


「いえ、『7レインボーフェザードラゴンを捕まえて、店に持ち帰る』  

 のが私たちの請け負った仕事。当然のことです」


「皆様の仕事ぶり、ほんとうに素晴らしかったですことよ」


ユライアさんはパン!と両手を打ち鳴らし、高らかに宣言した。

すっかりと夜が明け、燦燦と降り注ぐ陽光を背にして叫ぶ。


「さあ、レインボーちゃんをローストしに参りましょう!」


火山口への旅は、これからだ。

「花咲ける乙女達」と「マダム・ユライアとゆかいな仲間」の冒険は、まだまだ続く!

・・・私たちの性格も変えられそうだが・・・。

                                 FIN

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