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冒険者 二度目の交戦


「なんてことだ・・・」


私は、七色の巨大な鳥を見上げてそう呟いた。

巨大なレインボーフェザードラゴンは、月に向かって咆哮した。


「グゲエエエエェエエ~」


足元に寝ているレインボーたちの鳴き声が可愛く思えるほどの、凄まじい声だった。

まさか、これほど巨大な鳥が出てくるとは・・・。

この鳥の生態はまだまだ謎だらけだったのだ。

成鳥と思われた2メートルサイズの鳥が雛鳥だなんて、誰が想像しただろうか。

親鳥は動きこそ鈍いけれど、あれに襲われたらひとたまりもない。


「みんな、一旦引くぞ。ユライアさんを守りながら撤退だ」


私はそう叫んで、剣を構えなおした。

ここは依頼主の安全が最優先だ。

せっかく捕獲寸前だったレインボーだけど、あきらめざるをえない。

私たちだけで、あの大物を倒すのは・・・

悔しいけど無理なんだ。


「了解した。さ、ユライア殿」


冷静なアイリスが、呆気にとられた様子のユライアさんをそっと連れ出そうとしている。

まっすぐにこちらを睨みつけている親鳥を牽制しつつ、私はユライアさんの方を振り向いた。

アイリスとカメリアが2人がかりで、彼女を抱え込んでいる。

リリーがその前に弓を構えて立っている。

そのまま、じりじりと進んでいる。


「みんな、早くしろ!」


私はその様子にじれて、大声で叫んだ。

この声に正気づいたのは、ユライアさんと親鳥だ。、

巨大なレインボーフェザードラゴンが、ゆっくりと1歩を踏み出した。


「さ、ユライア殿、早くここから離れましょう」


「危ないですから、今のうちに」


驚愕して固まっていたと思われたユライアさんは、フリーズが溶けると同時に、両の目をキラキラさせ頬をほんのりと紅く染めた。

初恋の君を見る乙女もかくやの、初々しい表情だった。


「えええ~~~っ、そんなぁ~。

 あんなに可愛いくて綺麗なレインボーちゃんを連れていかないなんて、

 いけませんわ~」


場違いな彼女の黄色い叫びに、私はその場に座り込みそうになった。

この期におよんで、

あれを「可愛くて綺麗」と感じるユライアさんの感性に、

すっかり緊張を解かれてしまったのだ。


文字通り巨大なあの七色ドラゴンが、可愛くて綺麗に見えるのか?


「いゃあぁあん♪ あれを料理できるなら、

 全財産を引き換えにしてもかまいませんわ~♪」


見えているらしい・・・信じられないけど。

それどころか、料理の素材として認識している。

・・・恐れ入る料理人根性だ。

ここまできたら、まさしく神の領域に踏み込んでいるのかもしれない。

アイリスもカメリアも、そしてリリーも、あまりなユライアさんの言動に、その場にフリーズしている。

いやいや、ここで私までフリーズしてはいけない。

ユライアさんを守らなければ!


「みんな、しっかりしろ!ここは、私が囮になって時間を稼ぐ!

 その間に、担いででもユライアさんを避難させろ!」


私の叫びに真っ先に反応したのは、カメリアだった。

すぐさま、アイリスとリリーの頬をたたいて正気づかせた。


「呆けてる場合じゃない。行くよ!」


その間に私は、巨大レインボーとの距離を縮めた。

巨大レインボーの動く速度は遅い。

ここになんとかできるチャンスがありそうだ。

相手の首が届くか届かないかの位置まで進んで、私は再び剣をかまえる。


「さあ、お前の相手はこの私だ!かかって来い!」


腰をおとして爪先立ちになり、どこへでも動ける態勢をとって鳥を挑発する。

巨大レインボーの注目が私に集まる。


「さあ、来い!」


今夜2番目の戦いが始まった。


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