依頼を受ける
「ドラゴン退治の報酬が2000ガメルだあ~?
ありえねえだろう。
何の冗談だ?どうしてこんな依頼を私たちに勧める!」
冒険者の店のカウンターで、私は思わず叫んでしまった。
ドラゴンといったら、この世界で最強のモンスターじゃないか。
小型種でも軽く身の丈20メートルを越える。
駆け出しの冒険者なら、尻尾の一振りで全滅しかねない。
大陸中に名を轟かせる超有名な冒険者だって、ドラゴン退治はことわるだろうさ。
よっぽど金に困ってない限り。
「よくみなされよ。姉ちゃん」
店の亭主は、にんまりと笑って依頼書の冒頭をさししめした。
なんだ?
なんか書いてあるのか?
「れいんぼーふぇざーどらごん??
…なんじゃこれは~??」
今まで聞いたことのないモンスターの名前だ。
私は後ろの仲間達に視線をやった。
古代魔法の使い手のアイリス。
盗賊で博学なカメリア
ハーフエルフで精霊魔法と神聖魔法の使い手リリー。
3人とも首をふって、聞いた事もないと告げる。
全員、妙齢の女性達だ。
それぞれタイプの違う女性の冒険者がそろっていると、嫌でも視線を集める。
昼下がりの冒険者の店は、あまり客もいないのだが、柄の悪そうな男たちが面白そうに私たちを見つめている。
「これはな、新たに発見された鳥の名だ」
店主は幼子に話すような口調で、私に説明を始めた。
「大きさは身の丈2メートル程度。
極彩色の羽で覆われた派手な鳥だよ。
なんでもその肉はすごく旨いそうでなあ、グルメ通の垂涎の的なのさ」
「鳥かよ・・・ややこしい名前つけるんじゃないよ。まったく」
「まあ、しかたあるまいよ。
文句なら名づけた賢者の学院のお偉いさんにいいな。
で、依頼主だが、『ユライアの晩餐会亭』の女主人さ。
この鳥を食材としてお求めなのさ。どうする?
この依頼受けるかね?ローズマリーさん」
「私の名前はローザだ」
大嫌いな本当の名前を嫌味に使う店主をにらみつけ、きっちり訂正してやる。
私は彼の手から依頼書を奪って、もう一度内容を確かめた。
鳥を捕まえて店に持ち込むだけで2000ガメル。
それなら破格の報酬だ。
2000ガメルあれば、4人で一ヶ月遊んで暮らせる。
「受けるさ」
私はにやりと笑って答えた。「
「この依頼、私たち『花咲ける乙女達』が引き受けた」
「よし、交渉成立だな」
こうして、私たちの奇妙な冒険が始まったのだ。