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初恋

作者: なおとっと

静かな教室


午前中の暖かな日差しが窓辺の席を照らしている


外は木々が落とした赤と黄の葉で染まっている


風にのって聞こえてくる葉っぱ同士のこすれる音が心地よい


教卓には先生が立っていて

古文の訳を説明している


しかし僕の目線は

先生では無くその前に座る

一人の女子に向けられていた


彼女は真剣な目で先生の説明を聞いては

ノートにメモをとっている


僕は彼女が好きだ


……恋愛の対象として


こんな感情を彼女に抱くようになったのはつい最近だ


きっかけは彼女の笑顔だった




いつものように僕は学校に登校するために家を出る


まだ夏の生ぬるい空気の中

鞄を肩にかけて道をゆっくりと歩く


…学校はなにもなくてつまらない


ぼーっと道を歩いていくと


道端に

ノートが落ちていた


ちょっとした好奇心で

ノートを拾う


まだ真新しく、表紙には彼女の名前が書いてあった


普段なら

面倒くさいから捨てていただろう


ただなにも無い学校生活の

足しになればと思った



「これ、道に落ちてたぞ…」


そう言って僕がノートを見せる


彼女は読んでいた本から顔を上げた


その状態は偶然にも

真正面で顔をあわせる形になった


僕は彼女の顔から目が離せなくなった


凛としたまつげ


薄い桜色の唇


普段は伏し目がちで見ることのない彼女の目


それらは僕にとって

とても新鮮だった


僕の手にあるノートを見て


すごく驚いた顔で

こちらを見た


「あなたが拾ってくれたの?」


彼女の声は鈴の音のような


優しく儚い声だった


「あ、あぁそうだ…よ」


口ごもる僕


すると彼女は急に僕の手を取り

「…ありがとう」


と笑顔を僕に向けた


その瞬間


僕は胸がぎゅっと

キツく締め付けられた


辛くはなかった


寧ろ心地よかったくらいだ




その日を境に

僕の毎日は虹色だった


暇があれば彼女を見つめて

ほぅっとため息をつく


友達と話している時も

片隅には彼女のあの笑顔があった


僕がこんな感情を抱いている事を

彼女はしらないだろう


彼女にこの気持ちを伝えたい


彼女に僕の気持ちを知ってもらいたい


いつもそんな事を考えていた


もちろん

どんな風に告白するかも


『自分の思いを受け取って欲しい』


『ずっとあなたが好きでした…』


…ダメだ月並み過ぎる


考えれば考えるほどに


思いが絡まっていく


僕は彼女をどうしたいのか


そばにいるだけでいいのか…?


デートがしたいのか

キスをしたいのか…


そして僕はある一つの答えを出す


人を好きになることと恋をすること


それは似てるけど違う




僕は彼女に対して


恋をしているのか……?




「じゃあ、今日はここまで~」


僕がはっと気付くと

授業は終わっていた


前の席をみると彼女はノートの整理していた


その中に僕の見つけたノートがあった


彼女はノートの一ページを破って


何か書きこみ、紙を折って紙飛行機をつくった


紙飛行機は角が綺麗に折られている


そして彼女は窓に向かって飛ばす


紙飛行機はそのまま窓から空に向かって飛び出していった




学校からの帰り


道の植え込みに白いものが刺さっているのを見た


拾ってみると


紙飛行機だった


…僕はよく彼女のものを拾うな…


ふとさっきの様子が思い出される


そういえば、何か書いてたような…


僕は開いて中に書いてあるものを見てみる


そこには僕の名前と彼女の名前が


相合傘の下仲良く並んでいた



僕はその場でまわれ右をして


来た道を戻って行った




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