元奴隷の社畜無双 ~「死なないなら休憩と同じだ」と笑う新人が、異世界の地獄で鍛えたスキルで現代社会を粉砕する件。ブラック企業の奉仕(仕事)を完遂するたび、俺の「スレイブ・ブック」が進化していく~
はじめまして。
異世界のどん底から、現代日本のブラック企業へ。
価値観が完全に逆転した男の、型破りな成り上がりストーリーが始まります。
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石を運べ。
指の皮が剥け、爪が割れようとも、止まれば背中に鞭が飛ぶ。
食事は三日に一度、泥水のようなスープと、石より硬いパンの欠片のみ。
それが、俺の人生のすべてだった。
名前はない。ただ「三番」と呼ばれていた。
「……あが、っ」
視界が焼ける。
心臓が、限界を告げる不協和音を鳴らした。
喉が焼け、肺が潰れ、意識が泥の中に沈んでいく。
死ぬのか。
ああ、やっと休める。
その時、意識の底で、カチリと音がした。
【条件を満たしました。固有スキル『奴隷の記録』を開示します】
脳裏に浮かんだのは、古びた一冊の本のイメージ。
ページが猛烈な勢いでめくられ、俺がこれまでの地獄で得た「成果」が刻まれていく。
• 【苦痛耐性:Lv.MAX】
• 【不眠:Lv.99】
• 【環境適応:Lv.MAX】
• 【鉄の精神:Lv.80】
(……なんだ、これは。死ぬ間際に見る、夢か……?)
めくられた最後のページに、一際大きく文字が浮かぶ。
【全経験値の集計を完了。——これより、新たな『奉仕先』へ転送します】
俺の意識は、そこで完全に途絶えた。
***
「——おい! 起きろ! いつまで寝てんだ新人がッ!」
激しい怒号と、机を叩く衝撃音。
俺は、跳ねるように目を開けた。
「……あ?」
そこは、石切り場ではなかった。
白く輝く天井。冷房の効いた、快適すぎる空気。
そして目の前には、顔を真っ赤にして叫んでいる、太った男がいた。
「入社三ヶ月で居眠りか? 貴様、この資料の山が見えないのか! 明日の朝までに全部入力してチェックしておけと言っただろうが!」
ドサリ、と目の前に紙の束が置かれる。
だが、俺の意識は男の言葉よりも、自分の「状態」に釘付けだった。
(……布だ)
思わず、自分の胸元を触る。
ボロ布ではない。滑らかで、清潔な、白い布。
足元を見れば、穴の空いた泥まみれの素足ではなく、光沢のある靴を履いている。
(身体を……覆っている。鞭から身を守るためじゃない、柔らかな服を、俺は着ているのか……?)
信じられない心地で震える指先。
さらに、視界の隅に「それ」を見つけた。
デスクの端に置かれた、透明な筒。中には、透き通った液体。
「……みず」
「あぁ!? 水が飲みてえのか? 仕事も終わってないのに一人前に喉が渇くのかよ、ええ!?」
上司が鼻で笑う。
俺は震える手でその筒——ペットボトルを掴み、蓋を回した。
カチリ、という軽い感触と共に、封が解ける。
——泥の味がしない。
——喉を焼くような熱さもない。
ただただ、清らかで、冷たい。
そんな奇跡のような液体が、今の俺には「好きなだけ飲める」状態で目の前にある。
(なんだここは……。天国か?)
俺の視覚の端に、あの『ブック』がふわりと浮かんだ。
【新規環境:『ブラック企業』を検知しました】
【現在までの経験により、新スキルを習得しました】
• 【神速の指先:Lv.1】
• 【解析:Lv.1】
「……これ、全部やればいいんですか?」
俺は、上司を見上げて問いかけた。
「そうだ! だがどうせ無理だろうな、お前のような無能には……。せいぜい一睡もせずに絶望することだな!」
「……御意」
俺は、自然と口をついた言葉に自分でも驚いた。
奴隷時代の癖だ。
だが、今の俺には「ブック」がある。
鞭で叩かれない。肌を保護する服がある。
そして、毒ではない清らかな水が、すぐそこにある。
こんな「超・好条件」で、たかが紙の情報を光る板に移すだけ?
——冗談じゃない。楽勝すぎて笑いが止まらない。
俺は、吸い込まれるように黒い箱と板に向き合った。
指が、思考を追い越す速度で動き始める。
「さあ、奉仕(仕事)を始めよう」
地獄を生き抜いた奴隷の現代無双が始まった。
第1話をお読みいただき、ありがとうございました。
九条蓮となった元奴隷の彼にとって、現代のブラック企業は「最高のリゾート地」にしか見えないようです。
これから彼がどうやって現代社会を「奉仕」で粉砕していくのか、ぜひお見逃しなく!
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