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砂糖細工の船  作者: 酒田青
第四章 「その後」の日々
30/30

4-5 砂糖細工の船

「三毛。皆どうにかなったようだね」

 老人の部屋は真っ白だ。布団も、椅子も白い。三毛はベッドで眠っている老人の上に乗っていた。

「大変だったよ、今回は。あんなに大勢の人々を現実に帰すんだからね」

 老人はほとんど目を閉じて、ささやいていた。

「私もそろそろ祖国に帰りたい。三毛、君は私の交代要員なんだよ」

 三毛が首を傾げる。

「眠るとね、船の皆の行動が見えるんだ。三毛、君も眠ってご覧。そろそろ君も出来るようになっているはずだ」

 三毛は疑っていたが、言われた通りに目を閉じた。

「そう、さっき目を閉じたら松子たちの今が見えただろう? ああいう感じだ」

 三毛は次第に眠気を覚えながら体を布団に沈める。

「見えるか? そう、これが君のこれからの仕事だよ。君が現実に帰れるのは、何百年後かなあ。分からないけれど、君なら出来るよ」

 意識が遠のく。すると段々何かが見えてくる。

「三毛、君は白い船の番人だよ」

 船全体が見える。真っ青な中にある、真っ白な点。段々大きくなる。ぽつりぽつりとデッキを歩くのは、暗い顔をした人々。吸い込まれるように船の中に入ると、各部屋で一人、泣いている人々。

 三毛は思った。孤独とは甘やかなものだ。孤独と孤独が出会うことは、砂糖のように甘い、と。

《了》


 最後までお読みいただきありがとうございました。


 2010.6.19 塩原歩

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― 新着の感想 ―
[良い点] 30/30 ・読みました! ・最後まで穏やかでしたが、心に染みました。 ・水島の変化が劇的すぎてビックリしました。 [気になる点] 『孤独とは甘やかなものだ。孤独と孤独が出会うことは…
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