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ある日突然、心の声が聞こえるようになったけど高嶺さんは静かです

作者: 朔乃

小説初挑戦なので、至らないところがあると思いますが、お手柔らかにお願いします。

主人公の心の声は『』

その他の心の声は()です。

 

―♪〜♪〜〜♪


 『んー?もう朝か。…昨日はキリのいいとこまで、と思ったのに結構遅くまで勉強しちゃったな』


―♪〜♪〜〜♪

 『……さすがに、もう起きるかー。』

「ふわぁー。」

―トン、トン、トン


―ガチャ

 「…おはよー。」

 「あら?おはよう。眠そうね?」

 「んー。…勉強してたらのってきちゃってさ。」


 「もー。始業式の日くらい勉強お休みしなさいよ。」

 (こんな勉強ばっかりしちゃって、これじゃあ、彼女なんてまだまだできないわね。顔だけじゃなくて中身もお父さん似だと思うんだけど。)


 「勉強しないよりは良いだろ?…それに、彼女は別に今欲しいとか思ってないだけだから。」


 「…あら!よくお母さんの言いたい事分かったわね!はい、早く朝ごはん食べちゃって。」


 『……ん?あれ?』

 「…はーい。いただきます。」


 


― ガチャ

 「……おはよ。ママ、おにーちゃん」

 「おはよう。絵麻、1人で起きてこられたのねー。偉いじゃない。」

 「おはよ。絵麻。」

 

―トタッ、トタッ、トタッ…ギュッ

 「どうした?絵麻。まだ眠いか?」

 「むー。」

 「こら、あんまグリグリすんなー。くすぐったいだろ。」


 「絵麻はお兄ちゃんっ子ねー。」

 (今日は仕事遅くなりそうだし、絢人(あやと)にお迎え頼もうかしら?)


 「今日、始業式で午前で終わりだからお迎え行けるよ?」

 「あら?気がきくじゃない。ちょうど今日は遅くなりそうだったから頼もうかと思ってたのよね。」


 『…あれ?』

 「…全然良いよ。」


 「きょうは、おにーちゃんおむかえ?」

 「うん。そうだよ。」

― ピョン、ピョン

 (やったー!!ムフー!おにーちゃんビックリするかなー!?)


 「……絵麻?なんかお兄ちゃんに隠し事ある?」

 「!!なんで!?なにもないよー!ほんとにないからねー!」

 『なんか、話し声とは別に声?が聞こえてる?』


 「…ふーん?そっか。あ!もう出ないとだ。

 行って来まーす!」

 「「いってらっしゃーい!」」おにーちゃん!」

 『とりあえず後で考えよう!』

 



―ガヤ ガヤ ガヤ

 (あー。だりぃ〜)

 (昨日、彼氏とケンカしちゃって学校の気分じゃなーい。)

 (…うっほー!朝から高嶺さん見れた!ラッキー!)

 (気怠げな王子、眼福すぎ!)


 「ガチでやばい…。気持ち悪いし、うるさ過ぎる。」

 『電車が、ヤバすぎて吐くかと思ったー。』



 「おーい!おっはよ〜!絢人」

―バシン!

 「うお。痛ってぇ。……何だ、(はる)か。」

 「何だとは失礼なやつだなー?唯一の親友だぞー!大切にしろー!」

 (こいつ、顔色悪いけど大丈夫か?)


 「…そうですね。ごめん、ごめん。」

 「謝罪が適当だなー。…まぁ、いいや!クラス表見に行こうぜ!」

 (今年も絢人と一緒のクラスだと良いなー。修学旅行もあるし!)


 「…クラスまた一緒だと良いな。」

 「!このー!ツンデレさんめ!俺も今ちょうど同じ事考えてた!俺たちやっぱ心友だぜ!」

―ギュッ

 「うわっ。やめろ!抱きつくな。」

 「照れるなよー。」(照れるなよー。)


 「……ふっ。お前は本当裏表のないやつだな?」

―ザワッ

  (ひゃー!王子スマイル見れた!)

  (わたわたコンビ!良い一年になりそう!)

  (くそっ。イケメンどもめ!)


 「なんだぁ?それ?」

 (よく分かんないけど、顔色はマシになったか?)




 「…よっしゃー!同じクラスだ。2年でもよろしくなー!

 今年は俺とお前だけじゃなくて高嶺さんまで一緒のクラスとか顔面偏差値高いな!」 

 「おー。よろしく。…いつも言ってるけどイケメン枠に俺まで入れるなよ。てか、高嶺さんって誰?そんな人居たっけ?」

 『こいつ謎に俺をイケメン枠に入れてくるんだよな。ただの目立たないメガネ君なのに。』


 「…お前本当、自分にも他人にも興味ないのな!白雪さんだよ!」

 (この無自覚イケメンさんめ!)


 「…あぁー。白雪(しらゆき)のばらさんね?じゃあ、そう言えよ。」

 「なんだよ!女の子に興味ないかと思ったら美人はチェック済みか?」

 「アホか。同級生の名前くらい覚えてるだろ。」

 「けっ!頭良いやつは言うことが違うねぇ。」

 (…俺調べでは、2人はお似合いだと思ってるんだけどなー。何かキッカケさえあれば。)



 「ふん。余計なお世話だ。ほら、早く教室行くぞ!」

 「…?何だよ。余計なお世話って、意味わかんねー。待てよー!」




―ざわ、ざわ、ざわ

 「絢人、席は名前順だってさー。また、ご近所さんだな!」

 「おー。渡辺(わたなべ)渡会(わたらい)だしな。」


 (ヤバっ!マジでわたわたコンビじゃん!)

 (今年こそ王子とお近づきになりたい!)

 (高嶺さんとまた、同じクラスになれた!これはチャンスでは!?)


 

 『うるさっ。』

 「おい。絢人?」

 「…何でもない。行こ。」

 (本当かよ?…まぁ、気をつけて見とくか。)



―ガラガラガラ

 「はーい。席着けー!ホームルーム始めるぞ。」

 

 (谷やん来た!)

 (やったー。また谷やん♪)


 『谷屋(たにや)先生人気だな。』


 「それじゃあ諸君。2年への進級おめでとう。担任の谷屋昌史(まさふみ)だ。去年と同じ顔も居るが、まずは自己紹介からしようか。

 じゃあ名前順、後ろから!」


 『俺からか。』

―ガタン

 「渡会 絢人(わたらい あやと)です。よろしくお願いします。」


 (はぁー。マジ王子。)

 (これから1年、王子と一緒とか!感謝!)

 (渡会くんクールイケメン過ぎる!)

 (渡会絢人!女子にモテるくせにクール振りやがって!…くそっ。顔がいい!)

 (王子のおこぼれに与りてー。)


 『…んん??』


 「渡辺 晴(わたなべ はる)でーす!気軽に晴って呼んでね!

 体育祭は任せて欲しいので、皆んな勉強で助けて下さい!」


 (晴くん可愛い!)

 (晴くんの為にノートを作る!)

 (爽やかイケメンめ!何でわたわたコンビがいるんだよ!)

 (イケメンが憎いのに!あまりにも爽やか過ぎて憎めない!心までイケメンだ。悔しい!)


 『…まぁ、晴が爽やかイケメンなのは確かだな。それより問題なのは俺の事だよ。なに?王子って、まさか俺ってそんな恥ずかしい呼ばれ方してんの?嫌過ぎる!』








―ガタ

 「白雪のばらです。よろしくお願いします。」

 (高嶺さん。本当に白雪姫みたい。)

 (高嶺さんともお近づきになりたーい!)

 (俺はなるぞ!高嶺さんの彼氏に!)

 (わたわたコンビなんかどうでもいい!高嶺さんだ!)


 『…高嶺の花で、高嶺さんって呼ばれてるのか、勝手に親近感湧いてきたな。』





 「よーし。自己紹介は終わったな!」

 (渡会、渡辺、白雪かぁー。学年どころか、学校の人気者がうちのクラスに固まってるとか…はぁ。3人とも楽しく過ごせると良いんだけど。)

 「それじゃ、クラス委員とか決めてくぞー!」


 『…谷屋先生すごい良い先生だな。』


((((王子・晴くん・高嶺さんと同じ!))))


 『うるっせぇー!つか怖いよ!』


 「まずは、クラス委員やりたい奴いるかー?」


― シーン

 

 「いないなら俺が勝手に決めるな?委員長は中村 祐樹(なかむら ゆうき)!副委員長は前田 結菜(まえだ ゆいな)!」


 「ちょっ、谷やん去年と一緒じゃん!」

  (どうせなら高嶺さんとが良い!)

 「そうよー!めんど臭いからって横暴だよ!?」

  (もー!何でまた中村なのよ?あ〜晴くん)


 「うるせー。時間短縮!適材適所だ!心配すんな。去年、お前らの仕事ぶりの評価あってこその決定だ!」


 「じゃあ、どんどん決めてくぞー!」






 「最後は、図書委員!誰かいるかー?」

 「はーい!」

 「お?渡辺!お前がやるのか?」

 「いえ!推薦しまーす!絢人と白雪さん!

2人ともよく本読んでるのでピッタリです!」


―ざわざわざわ

(((((な、何だって!?)))))


 「……は?」

 「……えっ?」

―ざわざわ


 (絢人!俺がキューピッドになってやるから!)

 『…何、勝手な事してんだか。』


 「2人はどうだ?推薦があったけど、どうする?」


 「…俺は別に問題ないです。」

 「…私も大丈夫です。」

(((((別の人よりは良い、か?)))))


 「よし!じゃあこれで全部決まりだな!委員になった奴は初回の集りがこの後あるからそれぞれの教室に行くように!

 委員長!最初の仕事だぞー。号令。」


 「はーい。起立、気をつけ、礼!」

「「「「「ありがとうございました!」」」」」



―ざわざわざわ



 「…おい、晴。どうゆう事だよ。

勝手に、しかも白雪さんまで巻き込んでよ。」

 「まぁまぁ。絢人くん。きっといつか晴様に感謝する日がきますよ!」

 (絢人!俺はこれがお前の幸せに繋がってると信じてるぜ!)


 「…はぁー。俺は良いけど、白雪さんには謝っとけよ。巻き込んだんだから。」

 『…俺の幸せねー。』

 

 「それは、もちろん謝る。てか委員会あるなら白雪さんと一緒に行くだろ?

 俺もついてくから先に謝らせて?」


 「おー、そうだな。行くぞ。」


― シーン

(((((3人が話す、だと!?)))))

 『…静かなはずなのにうるせぇ。さっさと白雪さんと話して委員会行こう。』





 「白雪さん!急に推薦とかしてごめんねー。

2人は図書委員が本当に良いと思ったんだよね。もし、委員会で困った事あったら絢人頼りになるから!委員会以外でも良いよ!」


 「おい、お前はまた何勝手に言ってんだ。」

―フッ

 『…何だ?その何か言いたげな不敵な笑みは、どうせまた、よく分からん事考えてんだろ。………あれ?もしかして声、聞こえない?』


 「おーい、絢人?今日なんか、ぼーっとしてんな?」

 「あぁ、悪い。……白雪さんごめんね。晴の変な思いつきに巻き込んで、本当に大丈夫だった?」


 「ふふっ。2人は仲良しなんですね?」

 『うわっ。笑顔…か、わっ』


―ざわざわざわ

 『うぉ!急に教室がザワつきだした。そりゃあの笑顔見たらなー。………いや、今までならここで、もう一つの声がうるさくなるはず!

 それが無いって事はあの変な症状も治ったか?

それか、寝不足で幻聴でも聞こえてたか?どっちにしろ聞こえないなら良いや。』


 「確かに急に推薦されて驚きましたけど、本は好きなので大丈夫ですよ?」

 「ほら!白雪さん大丈夫だってー。絢人良かったじゃん!」

 「…そこで何で俺が良かったになるんだよ?」


―ふふん!

 「だから何だよ?その意味深な笑みは。」

 「俺のこの高尚な考えは心でも読まない限り、綾人くんには分かりませんよー。」



 「はぁー。……白雪さん委員会行こうか?」

 「あぁ!無視ですか?絢人くんひど〜い!」

 「ふふふっ。」


―ざわざわざわ




 「…騒がしくてごめんね。」

 「いえいえ。新鮮で楽しかったです。」

 「晴も言ってたけど、何か困った事あったら言ってね。」

 「そんなに気にしなくて大丈夫ですよ?」

 「いや、でも……」


 「んー。…!それじゃあ、渡会くんも本よく読むんですよね?」

 「え?うん。ミステリー小説とかよく読むよ?」


 「それだったら、私ミステリーはまだ読んだことないので、渡会くんのオススメを教えてくれませんか?」

 「…寧ろそんな事で良いの?」

 「そんな事だなんて…!自分が知らない世界を知れるんですから、とても嬉しい事ですよ?」

 

 「…ふっ。確かにそうだね?ミステリー小説なら家にいっぱいあるからオススメの持ってくるよ。」

 「……!…は、い。お願いします。」


 「ん?顔赤いけど、大丈夫?」

 「!いえ、はい!大丈夫です。あの…あっ、でもお家から本を持って来てもらうなんて大変じゃないですか?」


 「…?全然そんな事ないよ。ところで、白雪さんはいつもどんなの読んでるの?」

 「えっと、私は恋愛小説が多くて次にファンタジー小説が好きです。」


 「そうなんだ。あっ!図書室着いたね。」

 「そうですね!入りましょうか。」



―ガラガラガラ



 「「失礼します。」」


―ざわっ

 「……王子と高嶺さ、」


 「どうしました?先輩。」

 『今、絶対王子と高嶺さんって言っただろ。やめてくれ!その恥ずかしい呼び方。』

 「…ん?」―こてん


― サッ

 「何でもないよ?白雪さん。空いてる席座ろっか。」

 『あっぶねー。首かしげて上目遣いとか、可愛すぎて他の男子高校生が見たらダメだろ。良かった。白雪さんが小柄で、俺の体で完全に隠せる。

……ふっ。頭の上に、はてなマークが見える。……もう本当に、、、』


― ざわざわっ


 「ん"ん"っ。…えーと、それでは各クラスの図書委員が集まったので自己紹介から、私は委員長の3年早坂 深雪(はやさか みゆき)です。」


 「私は、3年1………」

 「僕は、2……

 「俺は、…


 

 「では、自己紹介も終わったので月曜から金曜の図書当番を決めます!

 各学年2名ずつで、それぞれ5組まであるので合計30名を5日に振り分けます。

 じゃあ、各クラス代表者1名出てくじ引きします。」



 「…くじ引きどうする?やりたい?」

― ぱぁー

 「!…やってみたいです。」

 「ククッ!…良いよ。やっておいで。」


 「はわっ、わ、笑いましたか?」

 「ははっ!はわって…っ……笑ってないよ?…っ。」

 「う、嘘です。声が震えてます!」

 「ふっ…っ。ごめん、ごめん。バカにした訳じゃないから、そんなに真っ赤になって怒らないで?……ね?

 それにそんなに手、ぎゅっとしてたら傷ついちゃうよ?ほら、力抜いて?」

 

 「!……っ………。…くじ、ひきにいきます。」

 『…大丈夫かな?ふらふらしてるけど。まぁ、ずっと見てるから大丈夫か。』


―ざわざわざわざわ


― パンッ

 「えっと、それじゃ気を取り直してくじを引いて下さい!あと、窓開けましょう!!」

 

 『…?なんか皆んな顔赤いけど、暑いのか?』





 「戻りました。」

 『あ、残念。元にもどってる。』


 「お帰り。…楽しかった?」

 「ぅ…はぃ。木曜日になりました。」

 「そっか。楽しめたなら良かった。」

 「…っ……ふぅー。」

 『……?』


―ざわざわざわ


 「……気にしちゃダメだわ。…よし、1年生だけになったりとかもないのでそのまま進めます。

 木曜日の人は職員会議の関係で30分閉館時間が遅れるけど大丈夫かな?大体6時30分だけど。」


 「白雪さんは大丈夫?俺は問題ないけど。」

 「はぃ、大丈夫です。」

 『………』


 「木曜日大丈夫です。」

 「あっ、君たちだったのね。木曜は委員長の私と、今日は体調不良で休みだけど赤松ってやつの4人ね。木曜日は利用者少ないし司書の先生も会議でいないから楽だよ。」


 「じゃあ後は、仕事内容教えるね!

私たちがやる事は本の管理と広報。

 管理は貸出返却、これはバーコード管理だから利用者の生徒手帳のバーコードと本をピッとしたらオッケー!それと、整理したり修理したりだね。

 広報はオススメの本のポップを作ったりかな?

本のリクエストは司書さんに伝えて下さい。以上!

 分かんない事あったら私でも司書さんでも良いからいつでも聞いてね?

 何か質問ある人。……ないね!じゃっ解散!」



―ガヤガヤガヤ


 「白雪さん。帰ろ?」

 「あっ。うん!」





 「白雪さん、さっき本当は大丈夫じゃなかったんじゃない?」

 「え?……何で?」

 「んー。何となく?」

 「っ…えっと、あのね、帰り道、暗いかな?って思っただけ。」

 

 「白雪さんって電車通学?最寄りってどこ?」

 「えっと……徒歩。…み、水城駅」

 「はっ!?最寄り駅が水城で歩き?

 1時間以上はかかるでしょ?何か理由があるの?」


 「……うん。………。」

 「ごめん。…ちょっと大きい声出しちゃったね。ビックリさせたよね?……ここ、空き教室だから取り敢えず入ろ?おいで?」


―ガラガラガラ、タンッ

 『しまったなー。驚いて大きい声出た。

怯えさせちゃったかなー?』


 「…あの、渡会くんは怖くないよ!……ただ、あの、あのね、」

 「大丈夫。…ゆっくりで良いよ。」

 「うん…。あの、1年生の途中までは電車、使ってたんだけど、…あの、満員電車でたくさん、人がいたからほんとは、違うかもしれないけど、…なんか、…あの、…何度か、……触られた、気がして…あの、だから……」



 「大丈夫。…もう大丈夫。分かったから。

ほら、さっきも言ったじゃん。手、ぎゅって握ったら傷つくって。…握れないように俺が持っとくよ。」


 「ぐすっ、…ぅん。もってて。…っ……。」


 



 

 「……ごめん。渡会くん、ありがとう。」

 「ううん。いいよ。少しは落ち着いてきた?」

 「…うん、話せて少しスッキリした。」

 「そっか。なら良かった。」



 「白雪さん。俺と毎日一緒に登下校しよう?」

 「…え?でも、渡会くんお家近いの?」

 「水城駅でしょ?俺は一個前の霧坂だから家から自転車で白雪さんの家まで迎えに行くよ。

 で、そこから一緒に電車に乗って行こう?

帰りも同じ様に家まで送るから。…ね?」


 「そんな…遠回りになっちゃうし悪いよ。」

 「悪くない。白雪さんは何も悪くないよ。

自転車とばせば5、6分くらいだし歩いても15分くらいだよ?

 電車代だって、そもそも水城までの定期だから変わんない。…ね?大丈夫でしょ?」


 「…うん。」

 「もし、俺と一緒でも電車が怖かったら俺も一緒に歩くよ。」

 「え!?だ、大丈夫だよ。渡会くんと一緒なら乗れそうな気がする。」

 「本当?……無理してない?」


―むにゅ

 「!ぅむ…!むーっ!にゃんでほっへ、ちゅまうの!?」

 「ふふっ、なんでほっぺ摘むのって?

だって白雪さんが無理して大丈夫って、嘘ついてたら嫌だからしっかり目を見て確かめようと思って。」


―むにゅ

 「んむー!ちゅいてにゃいでしょ?」

 「…うん。」

―むに、むに、むに

 「……?」

 

 「…………………あぁ〜ほんっと、かわいっ。」

 「!?っ……!」


 「あ。ごめん。むにむにし過ぎて赤くなっちゃったかも。」


 「だ、大丈夫!…あの、帰る準備してくる!」

―バタバタバタバタ


 「あ、逃げられちゃった。…ははっ。」

 『何だろ?この逃げられちゃうと追いかけたくなる衝動は。』



―ガタン

 「おい!さっき白雪さんが真っ赤な顔で走ってったけど、お前何かしたの、か?……しただろ!!」

 (何なんだ!その顔!中学からの親友の俺でさえ見た事ないぞ!!ヤバいぞ!か弱いうさぎちゃんを捕食するエロオオカミの顔してるぞ!!!)


―ガクン、ガクン、ガクン

 「おい、揺らすな。………エロオオカミみたいな顔してる?」


 「え?…あれ?声に出てた?

はっきり言って、してる!うさぎちゃんが気絶しちゃうね!」


 

 「うーん。気絶させちゃうのも、逃げられるのも絶対ダメだから………これは?どう?」

 「おぉー!お前のいつものポーカーフェイスだ。」

 「あー。今までと一緒でもダメなんだよなー。

なぁ、これは?」

 「おおっ!爽やかが追加された!けど胡散臭ぇ!」


 「え?これもダメ?」

 「いやっ!俺以外は騙せる。」

 「そっか。じゃあ、これで暫くいくわ。」

 (一体この短い時間に何があったんだ!絢人!!つい30分くらい前は女、興味ないです。って感じだったのに!これ、絶っ対白雪さん狙われてるじゃん!!2人はお似合いだ!と、思って無理やり引き合わせたけど絢人がヤ・バ・す・ぎ・る!件について!?どうしよ。白雪さんを逃してあ、)


―ガシッッ、ミシッ

 「…晴?」

 「……はぃっ?」

 「俺と白雪さんはお似合いだって、言ってたよね?」

 「はぃ…。」

 「俺も確かにそうだなって、思った。

あと、俺を頼れば良いって言ってただろ?……白雪さん電車で痴漢に遭ってから1時間以上かけて通学してるみたいだから、登下校一緒にする事にした。で、絶対に逃がさないから邪魔はしないで?」

 「…はぃ。」


 「俺さ、知らなかったんだけど"王子"って呼ばれてるよね?で、俺と晴でわたわたコンビって言われてるでしょ。だからさ、もし邪魔したら王子パワー使うから。…分かるよね?」


 「(あははっ。邪魔する訳ないじゃないですか!確かに真・絢人はヤバいけど、白雪さんを考えての事だろ?怖いからそのまま、幸せになって下さい!)」



 『ふっ、声と心の声が完全に重なってる。

この感じだと多分心の声が聴こえるのは治ってなくて、でも白雪さんの近くにいると聴こえなくなるんだよな。

 正直、色んな人の心の声が聴こえるのは面倒だけど、それより白雪さん心が分からないのが嫌だな。

 だから、慎重に優しくしてドロドロに甘やかしてあげないとな。』


 「絢人!またヤバいの出てるぞ!」

 「!ありがとう。もしまた出てたら教えてよ。

…晴、お前が親友で本当に良かったよ。」

 「…そうでしょうよ!俺ほど友達想いなやついないよ?」

 (こいつ、恋するとこうなるのか。)


 「さて、教室戻って白雪さん捕まえないとだから、先帰るな。」

 「おー。ほどほどにな!」





 「うぅーー…っ……。」

 「どうしたの?そんな隅っこにうずくまって。」

 「!…え!?何でここにいるの?」

 「何でって、ここ俺の席だよ?

 教室の窓側の1番後ろの角の席。俺が椅子に座ったら出れないね?

 …ずっとここにいても良いよ?」


 「…な、何か!イジワルだよ…!」

 「え?……イジワルだったかな?

ごめんね。

 なんとなく隅っこって落ち着くから白雪さんも安心するかな?って思ったんだ。」


 「ん、もー!そんな悲しい顔しないでよー。

私こそごめんね。イジワルなんて言って、こんなに優しくしてくれてるのに。」


 『ふふっ。白雪さんのが優しいよ。』

 「ううん。俺の言い方が良くなかった。

そんな隅っこに座ってたら制服も足も汚れるからここに座りなよ。」


 「ここって、机?…お行儀悪いからダメだよ。」

 「でもあと座れるのは俺の膝しかないよ?」

 「え、…そ、そんな事ないよ!隣か前の人の席に座れば良いでしょ?」

 「でも、俺白雪さんのこと心配だから手の届く範囲の所に今はいて欲しいな。」


 「もー。だからその顔やめて。

分かったから、じゃあ机借りるね?」


 『本当に優しいねぇ。』

 「…うん。どうぞ。」

 「……渡会くんってそんなに表情変わってたっけ?」

 「んー?最近かな?」

 「ふーん?」



 「それよりも今後のこと話そ?

まずは毎日、登下校一緒は俺は大丈夫だからご両親にも話して良い?」

 「……やっぱり話した方が良いかなぁ?」

 「うん、良いと思うよ。

 だって自分達の娘が嫌な事あっても言えなくて、ずっと1人で我慢して闘わせてたって知ったら悲しいよ?

 もしそれで通学はご両親が送り迎えするってなるならそれでも良いし、電車を克服したいなら俺がいるし、選べるよ?」


 「…そうだよね。言うよ!」

 「よし。じゃあ早速、電車乗ってみる?

…大丈夫この時間はまだ空いてるから。」

 

 「うん、渡会くんとだったら乗れそう。」

 「よし。それじゃあ荷物取って行こうか?」






― ガタン ガタン ガタン ガタン

 「もうすぐ乗る電車来るけど大丈夫?」

 「……うん。」

 「緊張してるよね?俺の腕掴んでて良いよ?」


―ギュウゥ

 「……乗るよ?」

 「ぅん。」

 『こんなに怯えちゃって、…痴漢野郎をもし見つけたら社会的に抹殺してやる。』


 「やっぱり、お昼だし空いてるね。

ここの端に座ろう? 自分のバック膝に置いといて、俺のバックは手すりとの間に置いてて?

 お客さん多かったらできないけど、今日は大丈夫そうだね。」

 「うん。」

 「ねぇ、白雪さん。お願いがあるんだけど、俺の手、握ってくれない?」


 「え!?…な、何で?」

 「…白雪さんを守れてるか不安だから。」

 

―ギュッ

 「そんな事ないよ!今も十分守られてるし、すごく心強いよ!」

 「……ほんと?俺に近づかれたり、触られたりするの怖くない?」

 

 「え?こ、怖くない、よ?」

 「……本当に?」


― じぃっ

 「う、うん。怖くない。ただ、は、恥ずかしいだけ…。そうやって、すぐ覗き込むし。」

 

 

 

 『ふむ。恥ずかしいのは回数重ねれば慣れてくるから大丈夫か。』

 「…白雪さんにはさ、俺といる時は怖い想いせずに、安心して過ごして欲しいんだ。

 だから、ちゃんと目を見て表情を見て大丈夫か確かめたいんだ。」


―にぎ にぎ にぎ 

 「あの、…手が…」

 「…でもさ、恥ずかしいとドキドキして安心できないと思うからまずは、手から練習しよっか?」


 「…え!」

 「今、繋いでる手をもう少し絡めてみる?」


― きゅっ

 「ぅえ?…これってこ、恋び 」

 「怖くない?」

―じぃっ



 「うっ、怖くない、よ。」

 「ふふっ。じゃあ恥ずかしいだけ?」

 「っ…!…うっ、そうだよ。」


 『恋人繋ぎは大丈夫だな。』

 「すぐ水城駅だから降りる準備しよ?

慣れる為に手はこのままね。」

 「え?うん。」

 『顔、真っ赤だ。嫌ではなさそうかな?

今、心の声が聴こえたら俺でいっぱいだったらいいのになぁ。』



 「じゃあ、家まで送るから案内してよ。」

 「うん。…歩いて15分くらいかかるんだ。」

 

 「そういえば、ミステリー小説貸すって話したと思うんだけど、俺にも白雪さんのオススメ教えてくれない?」

 「え?うん!いいよ。

私も沢山あるから貸すね!」

 「ほんと?ありがとう。読み終わったら感想会もしようね。」

 「っ…!うん!楽しみ!」


―じっ

 「やっと、笑ってくれた。」

 「あ、…は、恥ずかしいだけだから!」

 「うん、ふふっ。分かってる。たくさん手つないで早く慣れようね?」

 「うん、…がんばる。」

 『…何でも俺の言う通りに頑張らなくても良いのに。本当に素直だな。』



 「えっと、着きました。母もいると思います。」

 

 

 「あら?のばら今帰った、の?」

― ドサッ

 「きゃー!のばらが、彼氏連れてきたわー!しかも、すごいイケメン!でかしたわ!さっ、立ち話も何だしお茶でもどうぞ!」

―ガチャ


 「……ごめんね。ママはとっても明るい人なの。」

 「謝る事ないよ。素敵なお母さんだね?」

 「ふふっ、ありがとう。」

 

 「ただいまー。」

 「お邪魔します。」


― カチャ カチャ

 「ほら!早く手洗いうがいして来なさい。

お茶とケーキあるから!その後、馴れ初めを教えるのよ!」


 「もー!!違うから!渡会くんこっち!」

―ぺこ

 『うん。お母さんは味方になってくれそうかな?』



 「さぁ!馴れ初めを話してちょうだい!」

 「だからー!違うの!」

 



 「こんにちは、初めまして。のばらさんと同じクラスの渡会絢人です。……俺から話そうか?」

 「ううん。…ちゃんと自分で話す。」

 「そっか、じゃあこれだけ貸しとくね?」

―グッ、パー グッ、パー

 『せめて手だけでも一緒にね。』

―ギュウッ


 「あのね。1年生の途中から早く家を出るようになったと思うんだけど、ママ達に話してた理由が本当は違くて、あの、あの……電車で何度か触られた気がして、…それが嫌でずっと歩いて学校いってるの。……今まで黙っててごめんなさい。」

 

 

 「……そんなの…っ!ママこそ気づいてあげれなくてごめんなさい!怖かったでしょ?パパに頼んで車で送ってもらいましょう?」

 「でもパパの会社と学校、正反対の場所だから無理なんじゃないかな?」

 「そんなの!娘の一大事なんだからどうにかしてくれるわよ!」


 

 「あの、のばらさんのお母さん。少し良いですか?」

 「あら、ごめんなさい。私ったら興奮してしまって。」

 「いえ。お気持ちは分かるので大丈夫です。

あのもし、ご両親の許可が出たら僕が毎日送り迎えするのでまた、電車通学させて頂けませんか?」



 「…のばらは、また電車通学できるの?」

 「1人ではまだ絶対無理。……でも、渡会くんと一緒なら大丈夫。…今日だって一緒に電車に乗って送ってくれたの。それに、渡会くんが私は悪くないって言ってくれたの。

 悪くないのに私が電車に乗れないのは、悔しいから克服したいの!」


 「僕からも説明して良いですか?

 僕の家からのばらさんの家まで自転車で5・6分なので毎朝家まで迎えに行きます。

 そこから一緒に電車に乗って守ります。

帰りも同じ様にして送ります。

 ただ僕たちが図書委員になったので、毎週木曜日が当番で帰りが遅くなると思います。

 あと、これは僕の都合なんですが保育園に通う妹がいて、たまに迎えを頼まれるのでその時は、僕の最寄りの霧坂駅で一緒に降りてもらって保育園に寄ってから歩いて送る事になるので、少し遅くなると思います。」

 


― ガタンッ

 「…なんてしっかりした良いお子さんなの!?

私さゆりって言うんだけどお義母さん(おかあさん)って呼んでね!

 そこまで娘のこと考えてくれてるなら私は問題ないわ。

 ただし、遅くなる時や何かあった時は必ず連絡してちょうだい。いいわね?

 それと帰りは家まで送ってくれると安心だけど、朝はのばらが絢人くんの家に行くようにしましょう?その方が、お互い負担が少ないし。

 パパの説得は私がやっとくから!大丈夫!

さっ!ケーキ食べましょ?」


 「でも、…僕は別に負担だなんて思ってないですよ?」

 「良いのよ。こうゆうのはお互い相手に寄り添って、支え合うからこそ長続きするのよ?」


 『…なるほど?俺がやってあげたい事だけじゃなくて白雪さんが、俺にしたい事をさせてあげるのも大事か。』

 「分かりました。…それでも良いかな?白雪さん。」

 「うん!むしろそれが良いと思う。」

 

 「決まった事だし、さっ。食べましょ!」

 「はい。「「「いただきます。」」」



 「ごちそうさまでした。美味しかったです。」

 「いいえー。良かったわー♪

なんなら、お夕飯も食べていかない?」


 「いえ、今日は挨拶だけでもと思ってたので帰ります。

 それにお迎えも頼まれてるのでそろそろ出ないといけないので。」

 「あら、そうなの?残念だけどしょうがないわね。また、ゆっくり遊びにいらっしゃい。

 あ!そうだ。連絡先聞いて良いかしら?

これから必要になる事あると思うし。」


 「はい。そうですね。――登録しました。

白雪さんも交換しよう?俺が学校休む時とか連絡できなかったら大変だし。」

 「あ!うん!そうだね。――登録できた。

渡会くんのお家の場所も聞いて良い?」

 「うん。今LIMEに送るね?」




 「…あなた達、苗字で呼び合ってるの?

私も白雪だし名前で呼んだら?

 それに、のばらだってこんな良くしてくれてるんだから絢人くんのご両親に挨拶した方が良いと思うの。その時に名前呼びの方が誰に話しかけてるか分かりやすいでしょう?」



 『お義母さんの、アシストが素晴らしい。』

 「…確かにそうですね。じゃあ今度から、のばらちゃんって呼ぶね?」

― じぃっ


 「うっ……はぃ。……あ、絢人くん。」

 「ふふっ、なぁに?のばらちゃん?」

― じっ

 「っ……ぅう…。よ、呼ぶ練習しただけですぅ。」

 「そうなの?…じゃあ、俺と一緒にいっぱい練習しようね。 のばらちゃん。」

 「ぅ、はい。…あ、あの!あ、絢人くんお迎えの時間があるんじゃないんですか?」



 『んー。残念、時間切れか。』

 「…そうだね。のばらちゃん。

 じゃあ明日、7時30分頃に来てくれる?」

 「うん。…分かった。」

 

 「すいません。お義母さん。僕はこれで失礼します。のばらちゃんもまた、明日。」

 「はーい♪絢人くんならいつでも歓迎だからねー!また、いらっしゃい♪」

 「また、明日。…絢人くん」







 『うん。今日1日で結構、進展あったのでは?

 何よりお義母さんの協力があるのがでかい。

のばらちゃんも嫌がってるそぶりは、今の所ないし、取り敢えず明日からの学校はもう少し攻めるか?』



 「こんばんは。」

 「あ!絵麻ちゃんのお兄さんですね?

ちょっとお待ちください。

 今ちょうど帰る準備してるので!

絵麻ちゃーん、お兄ちゃんお迎えに来たよー!」


― パタ パタ パタ  ボスンッ

 「わっ、とっと、と。ごめん。遅かったか?」


 『やったー。おにーちゃんのおむかえだ!』

 「ううん。じかんぴったりよー。

あのね、えまね、おにーちゃんにプレゼントあるのー!」

 「そうなんだ。何くれるの?」

 

 「むふー。じゃーん!ブレスレットだよ!

 おにーちゃんの、すきなあおいろと、えまのすきなむらさきでつくったんだ!」


 『よろこんでくれるかな?どーかな?』

 「…すげーじゃん。めっちゃ可愛く作れてる。」

 「むっふー。えまがつけてあげる!」

 「あぁ。ありがとう。」


 「よし。似合うか?」

 「(うん!ずこくにあうー!)」

 「ふふっ。ありがとな?…さっ、帰るか。」






 「ただいまー。(あ"ぁー、疲れた。)」

 「おかえりー。」

 「絢人お迎えありがとうねー。ご飯もう食べた?」

 「うん。適当にカレー作って食べたよ。

絵麻も、もう寝かせた。」

 「そう、ありがとう。お母さんも絢人カレー食べちゃお!」

 (持つべき物はよくできた息子だわ!ご飯はカレーしか作れないけど、美味しいのよね♪)



 「あら?そのブレスレットどうしたの?

随分かわいいじゃない。」

 「あぁー。絵麻からもらった。」

 「えぇー!ずるいー!お母さんも欲しい!」

 「多分、絵麻に言ったら作ってくれると思うよ?」

 「本当!?じゃあ、お願いしちゃお♪」


 『……うちの母さんとお義母さん気が合いそうだな。』

 「母さん、俺さ図書委員になって毎週木曜が当番になったんだよね。で、その日は帰りが遅くなる。 あと、俺好きな人できたんだけど、その子のこと毎日家まで送るから少しだけ帰る時間遅くなるね。

 あ!でも、絵麻のお迎えは木曜以外なら大丈夫だから。」



― シーン

 「えー!急展開じゃない!まだお付き合いしてないの?毎日家まで送るのに!?」

 (きゃー!今朝は想像できなかった事が現実に起きようとしてるわ!)



 「図書委員で一緒になって、その時に電車で痴漢にあってからずっと徒歩で通学してるって知って、そんなクズのせいで行動が制限されてるの許せないから俺が守ろうと思ってさ。」

 「まぁっ!なんて酷い!絢人、ちゃんと守ってあげるのよ!」


 「もちろん。でも彼女すごい恥ずかしがり屋だから、ゆっくり慣らしていくつもり。

 朝はうちに来てから一緒に登校するから多分その内挨拶にくるよ。」


 「そうなのね!楽しみだわ♪」

 (…あぁ。やっぱり雅人(まさと)さんにそっくりだわ!多分彼女は恥ずかしがり屋じゃなくて、それが普通の反応なのよ!私だけがその子の理解者になれるはずよ!)



 『…ずっと父さんに似てるって言われて納得してなかったけど、この変な症状のお陰で周りにどう思われてるか分かったし、母さんの心の声聴く限り、中身も似てるんだろうな。』




 「じゃあ。もう部屋行くね。おやすみ。」

 「はーい。おやすみー。」




―♪〜♪〜〜♪

 『うっ、朝だ…。』

 「……起きないと。」



―トン、トン、トン



―ガチャ

 「…おはよー。」

 「おはよう♪もう朝ごはん出来てるわよ。」


 「…なんかテンション高いね。」

 「それはそうよ!息子が今日から女の子と登下校するのよ!?

 迷ったりしてないかしら?」

 「だからってなんで母さんがテンション上がんの?

 一応、家の場所教えた時はすぐわかってたみたいだけど。エントランスの所のソファに座って待っててって、言ってるよ。」


 「もう!こんなマンションに入るなんて最初は不安なんだから、今日は早めに出て待っときなさい!」


 「んー。確かにそれもそうか。

 ありがとう、母さん。」

 「良いのよ!頑張って。いってらっしゃい♪」

 「行ってきます。」



 『約束の時間の10分前だけど迷ってないか、電話してみるか?』


―プルルルル、プルルルル、プルッ


 「…もしもし、渡会くん?」

 「おはよう。のばらちゃん。一応、場所分かるかなって思って、電話してみた。」

 「そうなの?…ありがとう。

 もうすぐ、着くと思う。」

 「早いね?じゃあ、外で待ってるね?」



 『…もうすぐ着くって言ってたけ、ど……?』

 「おーい!渡会くん!」

 

― パタ パタ パタ

 「おはよう。そんな急がなくて良いのに。」

 「おはよう。だって渡会くんが見えたから!」


 「ふふっ、俺が見えて嬉しくなっちゃったの?」

―じぃっ

 「ところで、…のばらちゃん?呼び方は?」

 「う、…ぁ、えっと…絢人くん。」

 

 「うん。間違えないようにね?

 じゃあ、ロビーに案内するから一緒にきて?」

 「……分かった。」


 「ここの奥にソファとかがあるから、ここに座って待ってて? 

 まだ早いしちょっと座ろうか?

そうだ。小説持ってきたけど、どうする?」

 「あ!私も持ってきたの。今、交換しよう?」

 「分かった。…はい、これ探偵シリーズ物で俺がミステリーにハマったキッカケの小説ね。」

 「わぁ!そうなんだ。楽しみ!

じゃあ……はい!私も恋愛小説にハマったキッカケの先生の物。ヒーローがすごくかっこいいの!」

 「…ワタライマサト?」

 「そうなの!もしかして見たことある?」

 「いや。…見たことないよ?

ありがとう。俺も楽しみだよ。」


 

 「ちょうど、時間もいいしそろそろ行こうか?

はい、…どうぞ。」

 「……うん?」

 「手繋がないと、俺と一緒に練習してくれるんでしょ?

大丈夫、電車降りたら離すから。…ダメ?」

 「っ…だ、ダメじゃないよ。」

 「ふふっ、良かった。じゃあ行こう?」



 


 「こっちの端に居よう?…人増えてくるけど、俺が壁になるか大丈夫だからね?」

 「…う、うん。ありがとう。」

 

 『ん?…なんだ?どうしたんだろ……あぁ。』

 「向かい合ってるの、恥ずかしい?」

 「うっ……ぅん。」

 

 「今は動くの難しいし、今度からは反対向きにしよっか?」

 「う、うん。そうだね。」

― じぃっ

 

 「……な、なんでそんなに見るの?」

 「ん?…だって、次からは後ろ向いて顔見れないから今のうちにいっぱい見とこうと思って。」

 「べ、別に普通の時に見れるんだから、今見なくてもいいよ。」

 「ふふっ。そうだね。」





 「どうだった?久しぶりの電車は。」

 「……他の事が気になって、よく分かんなかった。」

 「他の事?それは、怖かったり嫌な事だったりする?」

 

 「……むぅ。…別に、嫌じゃないけど。」

 「…どうしたの?そんな可愛い顔して?」

 「っ…かっ、…可愛い顔なんてしてないよ!?

睨んでるの!」

 「え?そうだったんだ。ごめんね?」

 「……もう、良いよ。学校行こう?」

 「ふふっ。そうだね。」

 



― ガヤ ガヤ ガヤ

 「え!?王子と高嶺さんが一緒に登校してる!」

 「そんな、偶然隣歩いてるだけだよね!?」

 「みんなの王子がぁー!」 

 「クソッやっぱり顔かよー!!」

 「悔しいが、お似合い過ぎる。」


 『んー。すごい反応だ。でも、皆んなには早くこの光景に慣れてもらわないとね。』

 



―ざわ ざわ ざわ

 (朝、2人で登校してたって本当なのかな?)

 (嘘だと言ってくれ!高嶺さん!!)


 (((((確かめるのが怖い!)))))




 「おはよー!お前ら朝から噂の的じゃん?」

 「…噂?何のこと?」―にこっ

― ざわっ

 

 (((((王子が笑った!?)))))

 「……お前すごいね?まぁ、その感じからすると順調なの?」

 「どうだろうね?…でも、大切にしたいから静かに見守って欲しいかな?」


 (((((王子の方は本気だ!!

高嶺さんの方はどうなんだ!?)))))


 「っ……うぅ…。」

 (((((いや、付き合っちゃえよ!)))))



 「…可哀想に真っ赤じゃん。気絶しちゃうんじゃない?」

 「大丈夫だよ。気絶しても俺が支えれるから。」

 「……そうですか。お前は大丈夫そうだから、俺は白雪さんの事応援するわ。」

 「うん。よろしく。」―にこっ


 


『これから楽しみだなぁ。ねぇ、のばらちゃん?』

 

 


 初小説なので、短編をと思ってたらなんか長くなりました。終わりどきが分からず、無理やり終わらせました。

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