ブラックウルフ
FORを初めて数十分、森を歩き続けている。
「なあ、道はあってるのか?」
「合ってる…はず。」
『なんか違くね?』
『ここホープタウンの方向じゃないぞ。』
『俺の記憶が正しければ、ここって怨嗟の森じゃないか?』
「怨嗟の森?」
『推奨レベル25以上の場所で少し慣れてきたかなっていうプレイヤーが行く場所。初心者が行く場所じゃない。』
「だとよ。どうする?」
「ねぇお兄ちゃん…ひよってるの?」
「あ?」
ゼロは煽り口調でそう言ってくる。
「この森を突っ走っていけばどこにつくの?」
『多分反対方向まで行けばコンバットタウンがあるはず。』
『あぁ、闘技場とかがあるあそこか』
「だって。行くでしょ?」
「はぁ…付き合ってやるよ。」
そして俺たちはさらに奥に進んでいく。
・・・
スノー《役職:剣士》Lv9
HP:39 MP:5 STR:15 AGI:13 LUK:10 DEX:10 INT:5 DEF:10
ゼロ《役職:魔法使い》Lv9
HP:36 MP:27 STR:10 AGI:8 LUK:7 DEX:15 INT:17 DEF:7
・・・
怨嗟の森に入ってから数分、未だに襲われてはいない。
「来ないねぇ。」
「そうだな。」
俺たちがそういった瞬間、目の前からものすごい勢いで突っ込んでくる影があった。俺たちは咄嗟にそれを避ける。
「なんだ!?」
それの方向を見るとそこには黒いオオカミがいた。
『でた!ブラックウルフ!』
『最低レベル20でSTRとAGIが異様に高い初心者狩りの代名詞ともいわれているモンスターだ。』
「なるほどね。」
俺は刀に手を添える。ゼロも杖を構え詠唱を始める。だが相手がそんな悠長に待ってくれるはずもなく、襲いかかってくる。
「させねぇよ。【《抜刀》一閃 】」
だがブラックウルフは止まるだけでほぼダメージを食らっていない。逆に俺の方が押されているほどだ。
「【《第一階級魔法》ロックス 】」
ゼロがそう唱えると無数の鎖がブラックウルフの足や手、首、至る所に絡まっていく。
『ロックスって一階級でも最高難易度じゃなかったっけ?』
『そのはず。でもMP消費が激しいせいで誰も使わない。』
ブラックウルフはその鎖を一本一本壊していく。
「一瞬止まるだけでいいんだよ。そしたらお兄ちゃんが決めてくれるから。」
「【《抜刀》月光 】」
瞬間ブラックウルフの首が飛ぶ。
「攻撃力が足りないなら速さで補えばいい。それが俺の剣術の神髄だ。」
『ただの脳筋で草』
『マジでブラックウルフ倒しちゃったよ。』
『でも一体でこれだときつくない?』
「どうする?」
「うーん。調子乗りすぎたね。やっぱりホープタウンを目指そうか。」
『いやいや!』
『普通に始まりの街に行けよ!w』
『兄妹そろって脳筋すぎるw』
そんなコメントをガン無視して俺たちは元の目的地に向かうのだった。
・・・
あれから何度かゴブリンやスライムに襲われたがその程度にやられるはずもなく、無事にホープタウンにつくことができた。
「それじゃあきりもいいし今日の配信はここまでかな。じゃあねー」
ゼロはそういうと配信を閉じた。
「お兄ちゃんはまだ続ける?」
「いや、疲れたしログアウトして寝る。」
「そっかー。私もそうしようかな。」
そして俺たちは同時にログアウトした。
・・・
「うーん、疲れた~」
「ふー…寝るか。おやすみ」
「うん、おやすみー」
・・・
とある掲示板
『あの初心者兄妹、ブラックウルフをレベル9で倒したらしいぞ。』
『嘘乙』
『ガチだぞ、これ』
『リアルタイムで見てたけど剣士の人の攻撃が化け物すぎた』
『悲報:初心者兄妹、脳筋だった』
『悲報じゃないだろw』