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ざまぁ見ろです。親に捨てられ、挙句の果てには国外追放までされた私ですが、優しいお兄さんに拾ってもらい、呪術を教わり、復讐してきましたよ。

作者: Azusa.

どうも、高校生作家のAzusa.です。

今回公開の作品との類似作品がありますが、今作は一部改変を加えておりますので、理解をお願いします。

良ければ★★★★★、ブックマークなどをよろしくお願いします!


前置き

呪術はこの5段階があります。

第1呪術:イグニッション

第2呪術: カース・ザ・ウィンド

第3呪術:ワーストスリープ

第4呪術:リムーブ・リーブ(特級呪術)

第5呪術:カース・ワールド(特級呪術)

 両親は、私を捨てた。

あれは私が7歳くらいの時だ。

いつものように夜に家で寝ていた私を、両親は何のためらいもなくベッドから引きずり下ろし、外に備えてあった馬車に私を乗せ、異国の地へと旅立たせていった。

確か、馬車には一人の青年がいた気がする。


「ごめんな…」


 そう言って、彼は自らの美しい銀髪をたなびかせながら、馬車の外に出たがる私を必死に止めていた。

その時は、ただただ失望していたっけか。


 その後、私が異国の地に放り出されると、青年も姿を消し、私独りが取り残された。

悲しくて、何したら良いのか分からなかったけど、何とか周りの人に衣食住を請い、しばらく耐え忍んだ。

まだ住まいはないけれど、食べ物と服はある程度あるし、生活できる最低限度の基準値は満たしている。

いつかこの状況から脱却できるようにと、ギルドのアルバイトをしてちまちま稼いでいる。

平穏と言えばそうかもしれない。

人脈にも恵まれていたし、この生活が続いてもいいとまでは行かなくても、それに近しい感情は抱いていた。


 そんな、最中だった。


「我が国に、住まいのない下級民などいらん。

 そいつらは我が国の足手まといだ。

 今すぐに追放しろ」


 この国の王から、そんな発言が飛び出した。

“住まいのない下級民”とは、まさに私が対象である。

これには流石に、絶望するしかなかった。


「やめてっ、離してっ!」


 この宣言が出てまもなく、私が追放される時が来た。

王の側近が迫ってき、ひ弱な私をひょいと持ち上げ、抵抗できないようにガッチリと手足をロープで縛り、まるでゴミでも捨てるかのように私を運搬用の馬車に投げ入れた。

投げ入れられた時は、身体中が痛くなった。

ついでに、心までも。

これまで生活してきて、ようやく平穏な生活を手に入られるかと思った矢先に、これだ。

酷い、酷すぎる。


 馬車が出発し、身動きが取れずに揺らされる中で、私は叫んだ。


「いつか呪ってやるー!!!!!!!!」










―――――



 そして、今に至る。

あれから奴隷市場に買い取られたので、今は絶賛販売中。

私をモノとして扱わないでほしいものだ。


 ………ここでは、衣食住の提供など、全くもってされない。

狭い檻の中に収められ、食料の提供もなく、服もボロボロでほぼ裸と変わらない。

この市場に買い取られて5日目なので、流石に私の身体は痩せ細りきっている。


「……………」


 ここに来てからを思い出すと、それは悲惨なものだ。

市場を経営している太った男と一夜、一緒に寝させられると、


「お前は違うな」 


と言い、すぐにこの檻に放り投げられた。

そして、檻に入れられてから、私を買いに来ようと見に来た客も、太った汚いおっさんばかりで、どうせ身体目当ての腐りきった思考の持ち主だ。

臭い息を吐いて興奮していた。


「…ホントに可愛いなぁ……おじさんと一緒に来ない?」

「……おじさん、一緒にベッドで抱き合って寝たいよぉ…」


 思い出すと、涙がポロッと出てきた。


「……なんで私って生きてるんだろ……………」


 買われたとしても、ろくにいい扱いもされず、性奴隷として使用されるだけなんだ。

そんなことになるなら……。

……なるなら………。

いっそのこと……。


「……………」


…………。


(…死んじゃえば楽になるよね………)


 ………死んじゃおう。

その方が楽だ。

何も苦しくなくなる。

あんな汚いおっさんと会わなくて済む。

何より、私の死を悲しむ人がいないから、悩む理由もない。

なら……。


 そう考えていると、ふと、付近の窓辺に目がいった。

鋭く尖ったガラスの破片が数枚落ちていたのだ。


(……はっ…)


 これだ、と思った。


 私はありったけの力で手を伸ばし、ガラス片を1枚拾った。

間近で見ると、本当に鋭く、何でも切れそうだった。


「……これで………これで………」


 私はガラス片を握りしめ、首元に近づけた。

握りしめると、その鋭さを身を持って実感できる。


(あとは切り裂くだけ……)


 あとは力を込めるだけで死ねる。

それが、たまらなく嬉しく感じた。

だから、だから……。


 そして、私が力を込めようとした、その時だった。




スタスタスタ




 私の檻付近に近づく足音が聞こえた。


(……!)


 私は咄嗟にガラス片を隠し、目を瞑った。

足音の正体があの経営者か層の悪い客なのなら、こんなところを見つかってしまえば止められるに決まってる。

それで死ねなかったらどうするのか、それを瞬時に感じとった。

死ぬのはいつでもできる。

今は、耐えるだけ。




……。




 私の檻の手前で、足音が止まった。


(……怖いよぉ…)


 私は恐怖で怯え、少し震えた。

何かされると思うと、何やら優しい声が聞こえてきた。


「こんにちは、ちょっと怖がらせちゃったかな?」


 穏やかな、銀髪の青年の声だった。


「…………?」


 私は霞んだ声で、疑問符を呟いた。

すると、青年は優しい声で返してくれた。


「僕はプエルタ。

 君を買いに来ました」








「狭い部屋でごめんね。

 まぁでも、好きなだけくつろいで。

 遠慮はしなくていいから」

「…ありがとうございます」


 私はあの後、プエルタさんに購入された。

当初、彼を容姿が違うだけで、性格は同じの腐った人間なのかと疑っていたが、そんなことは全くなく。

ご飯を好きなだけ食べさせてもらい、風呂屋にも連れて行ってもらったりと、これ以上ないくらいに世話をしてもらった。

そして、今はプエルタさんの家にお邪魔している。

話してる感じは優しいし、なんだかお兄ちゃんのような存在だ。

それとなく、ホッとする。


「プエルタさん、今日はありがとうございました」

「いやいや、俺は自分の責務を全うしてるだけだから。

 それに、感謝を言わなきゃなのはこっちだよ。

 こんなに良い子でいてくれてありがとう」

「…テヘヘ……」


 プエルタさんはやっぱり、お兄ちゃん気質だ。

そう感じ取ると、私は椅子に座るプエルタさんの足元にもたれた。

そうすると、さらに温もりを感じ取れた。


 私とプエルタさんの仲は、今日だけでものすごく良くなった。

半日弱くらいしか一緒にいないのにだ。

それはまるで、魔法にでもかかったかのようで。

ただただ、心地良い時間が流れていた。


「…プエルタさん、何読んでるの?」


 私はふと、プエルタさんが手に持つ本が気になった。

呪術書?

表紙にはそう書いてある。


「これかい?

 これは書いての通り呪術書と言ってね、人を呪うための特級呪術が記されているんだ」

「……呪い?」

「呪いと言っても、魔法のようなものもあるよ。

 例に、引火させる術、風を起こす術とかがあるね。

 他に、呪いの部類のものは、悪夢を見せる術や、言葉を出せなくさせる術などがあるね。

 習得は、結構難しいけどね。

 でも、呪術は練習を積めば誰でもできるよ」

「……そうなん、ですね…」


 私には理解できない世界だった。

呪術なんて、どうせ使うこともないんだろうし。

でも、プエルタさんが凄い人だって知れたから、いっか。


「…ふぁぁ〜〜」


 私は、大きな欠伸をした。 


 なんだか、眠くなってきた。

まだ早い時間なんだろうけど、これまでの疲労が蓄積したのが災いしたせいだろう。


「寝るのかい?

 だったら、2階の寝室を利用すると良いよ」

「ありがとうございます」


 眠さに抗う必要性もないので、私は言われた通り、その寝室に向かい、すぐに寝付いた。








「我が国に、住まいのない下級民などいらん。 そいつらは我が国の足手まといだ。 今すぐに追放しろ」

「やめてっ、離してっ!」

「いつか呪ってやるー!!!!!!!!」

「お前は違うな」

「…ホントに可愛いなぁ……おじさんと一緒に来ない?」

「……おじさん、一緒にベッドで抱き合って寝たいよぉ…」

「……死にたい………」

 

っっっ!


 私は飛び起きた。

どうやら、夢を見ていたようだ。

それも、思い出したくない過去の、だ。

少しばかり、胸が痛む。


「どうしたの?

 うなされてたみたいだけど…」


 ドアを開ける音が聞こえる前に、小さめの廊下からプエルタさんの声が聞こえてきた。

やがて、プエルタさんが入室すると、何でもないよと言わんばかりに首を振ってアピールした。

すると、プエルタさんも安堵したのか、この場を立ち去っていった。


 その後、1階に降りると、朝ご飯を食べようとプエルタさんがパンとベーコンを準備してくれていた。

ありがたい話ではあるが、生憎のところ、私には食欲がなかった。


『やめてっ、離してっ!』

『いつか呪ってやるー!!!!!!!!』

『……死にたい………』


 うっ。

思い出すと、頭と心が痛くなった。

あんな過去なんて……過去なんて……。

私が辛そうに嘆いていると。


「やっぱり、朝から変だよ?」


 プエルタさんが心配そうにこちらを見てきた。


 いけないいけない。

プエルタさんに心配をかけてはいけない。

ここは誤魔化そう…。


「何でもな――」

「そんなわけないじゃん!」


 私がそれを否定しようとすると、プエルタさんはこれを否定してきた。

やはり、私を良く見てくれているだけある。


「ねぇ、何かあるなら言ってくれない?」

「………」


 ……やっぱり、隠せないか。


 そう悟ると、心を開き、プエルタさんに私はこれまでについて話した。

両親に捨てられたこと、追放されたこと、奴隷市場でのこと、これらがトラウマになっていること、全てをだ。

長い話だったが、プエルタさんは真剣に聞いてくれた。

それがどれだけ、救いだったか。

全てを話し終わると、プエルタさんが静かに口を開いた。


「……許せねぇな、そいつら」


 いつもにない口調で、そう言ってくれた。

いつもにない眼差しで、怒りを覚えてくれた。

プエルタさんは続けた。


「……復讐、しねぇか?」


 復讐?

一瞬何を言っているかわからなかったが、なんとなくを掴み、話の続きを聞いてみた。


「……今から、僕の呪術を教える。

 そして、こんな可愛い子を奴隷にまで仕立て上げた国王に復讐するんだ。

 どうだ?」


 ……確かに、私を奴隷にしたのは国王だ。

彼さえいなければ私は平穏に過ごせていたし、苦しい思いはしなくて済んだはず。

そう思えば、恨みしかない。

……憎い、憎い、憎い…。


「やりましょう」


 私に迷うという選択肢などなかった。

やらない理由がないからだ。

私の人生を狂わせた彼を、叩きのめそう、そんな覚悟である。

…殺しても、いいかもしれない。

そして私は……。









「あのー、どこへ行くんですか?」

「まぁ、ついて来て」


 呪術を教わる、と聞いていたのだが、プエルタさんの向かった先は地下室。

……そう、この家の地下室だ。

まさかこんな作りになっているとは微塵も想像できなかった。

この先には何があるのだろうか。


 長い長い階段を降りきり、やっとの思いで地下の一室に案内されるがままに入ると、そこには金庫のようなものが並んでいた。

それも、5、6個なんてものの多さじゃない。

少なく見積もって30個以上あると推測できる。

ここは貯蔵庫か何かだろうか。


「………」


 すると、プエルタさんは無言でとある金庫のようなものを1つ開け、中の書類のようなものを取り出した。

すると、それをこちらに向けてきた。

真ん中付近には魔法陣が描かれている。


「これは、呪術の習得書と言ってな。

 この紙に書いてある魔法陣に触れると、特級呪術を習得できる。

 さぁ、やってみろ」


 なるほど、ここに触れれば特級呪術を習得できるんだ………っていやいやいや。


「え、でも、呪術って練習しないと覚えられないんじゃ…」


 以前のこんな発言を思い出す。


「―――

 ―――――呪術は練習を積めば誰でもできるよ」


 練習を積まなくてもいいの?

ふとした疑問が浮かぶ。

これにはプエルタさんはどう返すのだろう。


「………細かいことはいい。

 練習しなくても習得できるものはできるんだ。

 ほら、触って」

「…は、はい……」


 乱雑だなぁと思いつつ、言われるがままに私は魔法陣に触れた。

すると、神々しいまでの光が辺りを覆い、私は魔力が体内にまで渡るのを感じた。

すると、


「……ん、なんだか眠く…………」


その場で私は倒れてしまった。


「……。

 多大な魔力の影響か、眠くなったんだな……。

 ………。」


 プエルタは、私の首元に手を当て、ありったけの魔力を込め、言った。


「第3呪術、ワーストスリープ」












「我が国に、住まいのない下級民などいらん。 そいつらは我が国の足手まといだ。 今すぐに追放しろ」

「やめてっ、離してっ!」

「いつか呪ってやるー!!!!!!!!」

「お前は違うな」

「…ホントに可愛いなぁ……おじさんと一緒に来ない?」

「……おじさん、一緒にベッドで抱き合って寝たいよぉ…」

「……死にたい………」


 っっっ!


 …………。

また、悪い過去を見たみたいだ。




カタンコトン




「……起きたか。

 今は馬車の上で夜だが、もうすぐ王都へ着くぞ。

 少しの準備をしておけ」


 どうやら、ここは馬車の上らしい。

王都へ着くため、私を乗せてくれたのか。

ありがたい、ありがたい。


 移りゆく景色を眺めていると、そこには見慣れた景色があった。

王の城。

あそこを見ると、心が……。


 ……うっ。

痛くなる。


 しかし、呪うって決めたんだ、そう覚悟する。


 プエルタさんに色々と聞いてみた。

どうやら、夜に襲撃するのが一番効果があるそうなので、夜に王都へ着くように調整したらしい。

それに、基本的には私一人で行ってもらうそう。

……習得したてだし、なんならどう使うのかも分からないのに、大丈夫なのかな……。









―――――


 これは今の王、ザーラが即位する時の話だ。

当時、この国の王選に、当選確実とも言われた候補者がいた。

彼の名はプエルタ。

公約に奴隷解放を掲げており、共感する者からの支持が高く、票数が8割方は彼に集まってくるのではないかと予想する者もいた。

しかし、現実はそうでなく。

一番人気のなかったザーラが当選した。


「なぜ?」


 そう疑問を抱く者が多数いたが、理由は明確であった。

そう、票を金で買ったのだ。


 ザーラ氏一家は生粋の大富豪であるため、金など腐る程ある。

なので、票など買おうと思えばいくらでも買えたのだ。


 これに、当然プエルタは猛反発。

しかし、ザーラは、それは選挙結果への批判であり国に反するとして、違反を言い渡し、最終的には国外へ追放してしまったのだ。


 そこから、プエルタはザーラを酷く憎んだ。

喉が張り裂けるほど叫んだ日もあった。

そして考えた、あいつに一番効く復讐方法を。

そして、導き出された答えが呪術だ。

最初は本を読んで勉強しながら、様々なバイトをしてやりくりした。

そう言えば、子供を捨てると言った両親から、


「馬車に子供を乗せるから、出ていけないように押さえつけてくれ。

 そして目的地まで送り込むことができたら大金をやる」


と言われ、やったこともあった。

無論、あの時は罪悪感でいっぱいだった。


 そうこうしていると、第2呪術まで習得できた。

この頃には、すっかり呪術に夢中だった。

呪術のこととなったら性格や口調も変わる、そんな感じにまでだ。


 そして、ある時に転機が訪れた。

とある噂を聞いたのだ。 

内容は、この街のとある空き家に呪術の習得書が眠っていると。

半信半疑だったが、呪術に夢中な俺は人一倍の興味を出したので、後日から空き家散策を始めた。

軽く犯罪だが、気にしない。


 何軒目も、何軒目も回り、やはり本当にあるのかと思いつつも、ついにその日は来た。

おそらく12軒目。

中をいつも通り散策していると、何やら地下室への入り口のようなものを見つけた。

早速、入ってみると、中には長く続く階段が。

頑張って降りきると、そこは宝物庫であることが見受けられた。

期待して、金庫の中を見てみると、なんと呪術の習得書が入っていた。

噂が本当だったんだとさぞ嬉しがり、俺はありったけの習得書を消費した。

呪術、魔術、どんなものでもだ。


 そして後日、俺はこの家を買い取り、習得書の権利も俺に渡った。

これにより、復讐がより近しくなったかに思えた。

しかし、事態が起こったのだ。


 あれは俺が呪術を試している時の話だ。

渓谷に行き、ひ弱なライガー達を実験台に、様々な術を使っていた。

やがて、ライガー達が俺の近隣にいなくなると、俺も帰ろうかと支度していた。

すると、奴が来た。


「グアァァン」


 クリスタルライガー。

体の表面に特有の光沢を持つ金属をまとう、ライガーの1種。

あの鋭いキバから冒険者の魔力を吸い取り、自らの養分とする要注意モンスター。

そんな奴が俺の目の前に現れてくれた。


 これは好機である。

俺を侮らない方が良い。

なんせ全てとも言えるほどの術を習得した猛者だ。

自分で言うのもアレだが、最強クラスに強いはずだ。

最強の獣と最強の俺。

戦う他なかった。


「グアァァン!!!」


 戦闘開始。

最初はお手並み拝見としてイグニッションを打ち込む。

しかし、流石はあのクリスタルライガー。

こんなものなど屁にもしない。


だが、俺はこんなものではない。


「第5呪術、カース・ワールド!!」


 戦闘をこれ以上続けるのも面倒なので、ここらで終わらせよう。

そう思い、特級呪術を繰り出した。

流石に、これに耐えられるわけなどない。

なんせ、この代物は、これさえあれば世界を征服できるとまで言われた呪術である。 

だから尚更、耐えられるわけが―――。


 そう、思っていた矢先だった。


「グアァァン!!!!」


 蔓延る砂煙の中から、被弾したはずのクリスタルライガーが勢い良く、俺目掛けて襲ってきた。


「ウワァァ!!」


 そしたら、俺の腕にクリスタルライガーが噛みついてきた。

とても痛く、魔力がだんだん失われていくのが身体を通じて感じ取れた。

そして、抵抗できるわけもなく……。

俺は意識を失った。


 そして、後日。

一命は取り留めたものの、医者から言われたのは、特級呪術などの消費魔力の多いものは一生使えない、というものだった。

……もちろん、悲しかった、悔しかった。

俺の一時の調子乗りで、復讐が叶わなくなるという、最悪な結果になってしまったからだ。

やるせなくて、泣きたくて、どうしようか考えて、悩んだ。

そして、俺はとあることを思いついた。


「……代役に、復讐を頼もう」


 銀髪の少年は、そう決意した。

しかし、何の恨みもない者に、私的な復讐をしてもらうのは癪に障る。

なので、良い方法はと模索しなければ、と思っていたところにだ。

憎しいあいつが国外追放の令を出した。 

これはチャンスだと思ったよ。

何せ、俺以外にあいつへ恨みを持つ人が生まれたのだから。


 早速、俺はその者らが売られているであろう奴隷市場に向かった。

小さい子は元々の魔力が高いから、なるべく幼いほうが良い。

そんな条件で探した。

そしたら、見覚えのある少女が目に写った。


(……!

 あの少女は…!)


 大きくなったなぁと感心しつつ、俺は彼女に狙いを決めた。

…あと、相手は少女だから、扱いは丁寧に、だ。

一人称は“僕”にして、なるべく優しい言葉を使って、服も汚れているし風呂屋にこの後連れてったりして。 そうやって信頼させてから、習得書に触れさせて、明日にでも復讐させよう。

早く、早くあいつを叩きのめしたい。


 そう考えながら、僕は終始怯える彼女に近づいていった。


「こんにちは―――」









―――――


「……いいか。

 ここは城の裏口だ。

 入ってもおそらく誰もいない。

 だから、入ったらすぐに左側の王の寝室へ行け。

 そこから、攻撃開始だ」


 私は今、城の中を歩いている。

プエルタさんはこんなことを言い残し、私一人を降ろしてその場から去っていった。

真意は、分からないが。


 しかし、この城の中は怖い。

暗くて、今にでも幽霊が出てきそうだ。

その容姿を想像できはしないが、なんとなく怖そうだ。

例えば、あそこにいる仮面の幽霊みたいなのが出てきたら怖い…………………………

…………ってあれ。


「何者だ、貴様!」


 入ってもおそらく誰もいないと、この城に入る前から言ったのは誰だっけか。

……しかし、見つかったものは仕方ない。

ここは1つ、腕を見せるとするか。


 私は目を輝かせる。

これは比喩ではなく、あくまで魔力を高めるための行為の一環だ。

集中して、しっかりと溜め込む。

そして、


「第1呪術、イグニッション!」


この仮面に、一発放り込んだ。

この人は悶絶し、その場で目を押さえる。

きっと、両目が失明したのだろう。

ごめんなさいごめんなさい。


 私は少しの罪悪感を抱きながらも、ここを通過していった。

王の寝室の道中でまた仮面と会うこともあったが、それは簡単に始末して終わりだ。

そして、歩き進め、待ちに待った王の寝室を目の前にした。


『我が国に、住まいのない下級民などいらん。

 そいつらは我が国の足手まといだ。

 今すぐに追放しろ』


 さっきまで少しおふざけムードみたいなものはあったが、今はそれはない。

むしろ悲しいムードだ。

この発言を心の中で掘り返すと、心が度々痛む。

許しちゃいけない。

言ったんだ、

「いつか呪う」

と。




ガチャ    



 私がドアを開けると、王は寝ていなく、ベッドに座り込んでいた。


「……誰だ?」


 当然、王は私を知らない。

しかし、私はその王を憎んでいる。


「……先日、この国から追放された奴隷です。

 貴方を、呪いに来ました」


 そう言い、私はイグニッションを構え、手に炎をまとわせた。

それを見ると、王は少し焦った様子を見せた。

しかし、平然を装い、話しかけてきた。


「……へぇ、それは呪術か。

 素晴らしいな。

 しかも、見るに君は結構凄い呪術師みたいだし、良かったらこの国で働かないか?

 呪術師って貴重でね、君なら―――」


 いかにもな手のひら返し。

許すわけにはいけない。


 私は語気を強めた。


「……今から私が貴方に2つ問うので、その答えを聞かせてください。

 いいですね?」


 王はコクリと頷き、聞き入った。


「1つ、住まいのない者を国外追放させたのはなぜですか?」

「………」

「2つ、奴隷問題に向き合う気はありますか?」

「………」

「……答えは?」

「………」


 何1つとして、答えない。

流石にこの態度には腹が立って仕方ない。

これが本当に国王の態度なのか。

怒りでは表しきれない何かが、私を支配していた。

そして、私はどこにも隠しきれないその感情を、手のひらに込めた。


「答えないならもう良いです。

 本当に呪いますよ?」


 すると、王はやっと口を開いた。


「……ふっ、嬢ちゃんにそんな事ができるのか?

 もういい歳なんだから、俺を傷つけた時点で重罪ってことは分かるよな。

 じゃあ、できないんじゃないか?」


 ……いや、できる。

 

「…大丈夫です。

 なんせ、私には世界を征服できるほどの力がありますからね」


 そう言うと、王はクスッと笑い、馬鹿げた者を嘲笑う目でこちらを向いた。


「へぇ、嬢ちゃんにそんな力が。

 それは凄いすご―――」

「カース・ワールドをご存知で?」


 私は、相手の言葉を遮る形でそう投げかけた。

すると、王は冷や汗にまみれ、焦ってこう言った。


「……カース・ワールドって、あの世界を征服できるとまで言われた、あのやつか?

 嬢ちゃん、そんなの使えるのか?」


 私は頷く。

しかし、私が頷くだけでは半信半疑だったようなので、手のひらに魔力を込め、カース・ワールドを繰り出す直前くらいまでを見せてあげた。

すると、王は更に焦り。  


「……分かったよ、嬢ちゃん。

 お金はいくらでも挙げるから、こっちへこないか?

 その呪術さえあれば、君は世界を統率できるよ?

 そして、好きなだけやりたいことができるよ?

 あと―――」

「見苦しいですよ?

 それに、私は貴方側に付く気は微塵もありません。

 ここにて断らせていただきます。

 では―――」


 怖がる王を他所に、私はありったけの魔力を込め、それを全て解き放った。

これまでの想い、憎しみ、全てを乗せて。


「第5呪術、カース・ワールド!!」


 そして、王は被弾際に、こう呟いた。


「惜しい人材を捨てちまったよなぁ!

 クソ野郎がぁぁ!」


 ……ざまぁ見ろです。









―――――


 カース・ワールドは、効果絶大であった。

その証拠に、王どころか、城ごとが半壊した事が挙げられる。

そして、そこには壊れきった城に唖然とする私がいたが、すぐにプエルタさんと合流でき、近隣の宿場へと移った。


 そして後日。

前の王の死亡ありて、次の王を探すと国が発表した。

しかし、選挙などは行わず、国民推薦という形で選ばれることに。

すると、前回の王選にて絶大な支持があったプエルタさんが選ばれた。

選ばれた時は、大変嬉しそうにしていた。


 またまた後日。

正式に即位したプエルタさんは、公衆の面前でスピーチを行うことになり、私もそれを見に行った。

何を言うのか、考えていると、彼の口からは私の求めていた言葉が発せられた。


「皆さん、奴隷制度などあってはいけません。

 皆さん、国外追放などあってはいけません。

 この思考を持ち、これから共に、この国を良くしていきましょう」


 聞いていた人からは盛大な拍手が喝采された。

やはり、銀髪をたなびかせ、力強い言葉を発す彼はカッコいい。


 プエルタさんは、スピーチを終えると、階段を降り、次の舞台へと向かった。

そして、私に向かって笑顔を向けてきてくれた。

それは、どこか懐かしい感じがした。

ご読了ありがとうございました。

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