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―朝起きると、僕は女子になっていた。僕は今まで平凡に15年間生きてきた。こんな事ってあるのか。
自分の部屋の扉を開け、リビングへと向かう。今日は休日だ。母も兄も父も居た。
皆が口を揃えて言った。
『誰?』
「僕だよ。僕。」
一斉に困惑した表情で首をかしげる。
この両親は事を大きくしがちだ。血相を変えて上の階に住んでいる僕の幼馴染である、【新条楓】を呼びに行った。
彼女と三人で僕の事を不思議そうな目で見ると、彼女は嘲笑うように僕に笑みを向けながら、一言発した。
「君って本当に面白いよね。」
「何がだ。僕は真剣に困っている。」
幸い彼女は口先では厳しい事を言うが、実際は優しい。どうやら手助けしてくれるらしい。
そのまま彼女を含め、家族会議が始まった。
初めに沈黙を破ったのは兄だ。
「なあ、楓ちゃん。こいつに”女の子”を教えてやってくれないか。」
僕は内心【新条楓】の事は心底どうでも良かった。だから、彼女の事をまじまじと見た事は無かった。確かに良く見ると、華奢な体、丁寧に整えられた長い髪。きちんと外見におけるケアをしていると一目でわかる表層だった。
「ああ、それは良いわね。楓ちゃん、どう?」
と、母が続く。父は沈黙を貫きながら二度頷く。
新条楓はニヤニヤしながらこちらを覗き込み、
「【仮定】くんが良ければ、それで良いよ。」
「僕は拒否する。君に僕の体を預ける事は不利益としか感じない。」
「んー?本当に良いの?私ならもっと可愛く出来るな~。」
長音符を続けながら、段々と顔を近付けてくる。何やら断れない雰囲気だ。
「条件を付ける。今日僕が病院に行き、原因を判明させた後、決断を下す。」
「んも~君はお堅いな~。素直に”いいよ”って言えばいいのに。」