治水の聖剣5
池に向かって歩いていると子供が起きたみたいだ。
「シャルティーナ!大丈夫か?どこか痛いところはないか?」
「お、お父様、だ、大丈夫ですから離れてください、、、」
「そうかそうか、本当によかった」
殿下は女の子供の親みたいだ。とても優しい顔でその子供を見ている。
「それよりお父様!私夢を見たのです、暗くて凄く苦しい場所で泣いてる私の前に綺麗な剣が落ちてきてその剣からあったかくて優しい水がどんどん出てきて黒いモヤモヤを消して行ったんです!あれはきっと昔見た絵本の勇者の聖剣に違いありません!、、、そう、ちょうどあの様な綺麗な、、、剣?あれなんで夢の中の剣があそこに?」
女に抱かれたまま指差したのは広い池、、、もう湖かな?の中心の台座に刺さった剣、私だ。
人って目がいいのかな?と思いつつ意外と元気そうですよかったと安堵する。
で周りの人たちはと言うと、シャルティーナと小鳥の私を交互に見た後目を細めて台座の方を見ている、それを3度ほど繰り返して皆の目線に気付いたのかシャルティーナが鳥の私に目線がいく。
「緑の小鳥さん?」
『ん?緑の鳥は珍しい?』
シャルティーナの視線に気がついた私はそう聞いてみる。
「そうですね、家の鳥の本とかにもこんな綺麗な鳥いなかった様な気がして。ってあれ?」
そう言いつつ首を回して質問した者を探している様だ。
「今どなたが私に声をかけたのですか?」
「あぁ、それはこちらの『私だよ』」
殿下の言葉を遮って子供のお腹に移動した私が語りかける。
「??こ、小鳥さんが喋ってるぅ!?」
『そうだよまぁ喋ってるわけじゃないんだけど意思の疎通はできるしまぁいっか、それよりも元気になってよかったよ』
「お父様!す凄いです、小鳥さんが喋ってますよ!」
なんか話が進まない、、、人ってこんな感じなのだろうかさっきの騎士もだけど。
「これシャルティーナ、こちらの御方は聖剣?の精霊?様だ。毒に侵されたシャルティーナと我々を救ってくれなのだ。」
「そうだったのですね!それじゃああの夢の怖い場所から救ってくれたのは夢じゃなかったのですね!ありがとうございます!聖剣の精霊さま!」
『聖剣の精霊、、、まぁ後遺症とかなくてよかったよとりあえず着いたしこの辺で少し休んでおいて、水とかも綺麗だし人も飲めると思うよ。私は少しやりたいことできたから待っててすぐ戻ってくる』
私は他の人にも言う様に一度鳥を消して本体に意識を戻す。
ーーーガルディア王国王弟殿下ガルク視点
私は今生まれて40年これほど驚いたことはなかっただろう。
亡き妻の忘形見シャルティーナが毒に侵され、もうダメだと思ったが突然現れた精霊様の御業によってシャルティーナの命は救われた。
更にあろうことか我々人間を聖域に案内してくださると言う。
、、、我々は神にこの光景を目に留める赦しを乞うた方がいいのかと思った。
目の前にはそこにあるのか分からないほど澄んだ水に神秘的な魔力で満たされている湖、だんだんと深くなっていて透明とはいえ底は確認できず、見続けると魂が引っ張られそうだ。
不敬にもこの神聖な水に触れてみたいと思った。この湖の主の精霊様は飲めると思うよ、とも仰っていたので少しぐらいなら、、、
「殿下!いけません!」
「?!いや私は、、、」
唯一王国で私の味方をしてくれた者ラストの声によって我に返った、いや正気を失っていたわけでも無いのだが、、、
「いやなんだ飲めると仰っていたので試しにと思ったのだがまずかったか?」
私は白銀の騎士ラストにそう返した。
「殿下確かに飲めるとは思いますが、いくら神聖な魔力が害にはならないと伝えられてるとは言えこれほどの魔力が込められてる水を飲めば魔力灼けしてしまいます。飲むにしても薄めなければ」
私としたことが魔力灼けの事を失念していた。
なんだろうかこの異様なまでの安心感、それと達観しわかった強制的に警戒心が無くなる様は、、、これが聖域なのか?
「そうだな精霊様が戻ってくるまで大人しくしているか他の騎士達にも休んでくれと伝えてくれ」
「承知いたしました。」
私も少し腰を下ろそう。
ここに来るまで大変であった、国では兄に嵌められ、逃げた先では息子に重荷を押し付けてしまい、追っ手を撒いたと思ったらオルトナジャーラに遭遇するわ、しまいに最愛の娘を失うところであった。
だが私はまだ神には見捨てられてなかった様だ。
今から何日か前、雨が降る夜にオルトナジャーラに襲われた、はっきり言って私達はここまでだ。と思ったものだ。ここジェ・ラーム大森林の浅い場所ではまず遭遇しない魔物だからだ。
いくら王国最強と謳われているラストでも死音の双蛇と恐れられているオルトナジャーラは流石に荷が重いと思っていた。
そう思った通り、ラストは苦戦していた、白銀の兜は特殊な魔法が付与されてると聞いていたが、脱ぎ捨てられてるそれは半分が溶けている状態だった。
息子のアイクが新たな王になった兄ラムスダート・バース・ガルディアに追っ手と称して領地を出た後に合流した小隊規模の護衛も数人が既に倒れている。
ある者は鎧ごと溶かされ、ある者は兜を取り喉を押さえて倒れている、おそらく風の鎧の適正が無く解毒ポーションを飲みながら戦っていたのだろう。
毒性が高く気休めにしかならなかった様だ。
そんな時更に絶望的なことが起きた。
魔物と戦っていない私、先代から仕えている執事セト、シャルティーナ、侍女のメリーの4人はメリーに持たせていた障壁を張る魔道具の中にいた。
だがその障壁に酸まみれになった騎士が飛んできて障壁にぶつかった。
そこまではよかったのだが騎士がぶつかった所から障壁が溶けていきそこから毒煙が入ってきてしまった。
咄嗟にセトが風の盾を張ったが危機的状況に慣れていないシャルティーナがほんの少し毒煙を吸ってしまった様だ。
毒煙が入ってきたと同時にシャルティーナの元に動いたメリーが着いた時には既に地面に倒れていた。
それをみた時私は頭が真っ白になっており動くことができなかった、、、今思ったら本当に愚かだったと思っているだからこそ即座に対処してくれたセトには感謝してもしきれない。
彼は風の盾を発動したまますぐにシャルティーナのそばに行き渡してあるマジック袋からサンクレア家秘蔵のダンジョン産上級ポーションを2つ出して1瓶を体にかけもう1瓶を口に注いだ。
「ガルク様!まだ大丈夫です!」
それが私を正気に戻す言葉だった。
それと同時にこの絶望的な現状が好転する事が起きた。
足場を濡らし騎士達の機動力を奪っていた雨は雨雲ごと消え去り、星空の輝きに負けないほどの光量で空を照らす緑の光。
暖かくて優しい風に揺らされた時にはオルトナジャーラは姿を消していた。
ラストは「力及ばず申し訳ありません。」と、謝っていたがこればっかりは仕方ないと思っていた。
全滅してないだけ運が良かった、それよりも今は毒に侵されたシャルティーナだ。
ダンジョン産の上級ポーションで治せないと言うこと噂は本当なのだろう。
ポーションは残り3本、聖教国まで命を繋げることはできないだろう、だからこそ私は雨過天晴、この状況に導いてくれたであろう緑の光の元に向かう事を決断した。
数日間は精神がおかしくなりそうだった、だがやはりこの決断は間違っていなかったと今は強く思う。




