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建物の前まで行くとシェリーが玄関を開けて案内してくれる
中は昔と変わらなく華美な装飾は少なく黒を基調とした落ち着いた感じだ。
広いエントランスを抜け爺さんの自室に向かう様だ
「今はこっちにいるのか」
「はい。多分ルカ様がいらっしゃると思っているのかと」
家の裏は山につながっていてそこにはすごい広い空間が広がっていて爺さんは本来の馬鹿でかいドラゴンの姿であるのが落ち着く様でいつもそこにこもっているのだが。
...
レックスのことから数日経ってルカと仲良くなった爺さんを驚かせるため。
ルカの存在を隠し会いに行き、前述の山の中に案内され通された先でルカが目にしたのは数日前に泣かされた赤いドラゴンよりもデカくて凶暴そうな黒龍が体を丸めて寝ていたのだ、正確には俺だけだと思って興味を示さなかっただけだが。
それを見たルカは泣きはしなかったものの驚きで顔を歪めて
あろうことかこちらに気付きルカが居たのかと驚いた爺さんが口を開けルカを見ている。
それを見たルカは更に顔を歪める。
爺さんは何を考えたのか、ルカの顔を見た瞬間人化ではなく体を小さくする選択をした、そのサイズなんと手のひらサイズ。
そんな小さくなった爺さんがパタパタとこちらに飛んでくる。
小さいからか顔も可愛く感じる、ルカの手のひらにのりルカの顔を見ると物凄い笑顔で「カワイイ、、、」と言い。
2人のやりとりに可笑しくてつい声が漏れてしまった。
ルカは?顔でコチラ見て
爺さんは「原因はお主だろ!」と思っていそうな可愛らしい顔で見てきて。
シェリーさんは滅多に表情を変えない口元に手を当てて、ほんの少しだけ肩を揺らしている様な気がする。
それを見て更に笑いそうになる俺、、、あれは大変だった特に俺の腹筋が。それからだろうか俺が来ると殆ど人化しているらしい
そんな昔話を思い出していると自室についた様だ。
「主、シンラ様がお着きになりました。」
シェリーはそう言ってのドアをノックし扉をけた。
入ったらルカがいないことを知ったのか明らかに残念そうな顔をした。
そんな爺さんは爺さんというには全然年を取った姿はしていない
黒髪黒眼になかなかモテそうな、チョイ悪オヤジ風のイケてる顔にゆったりとした上下の普段着を着ている。相変わらず手はその風貌に似つかわしくなくきれいだ、墓穴を掘りそうなので突っ込まないが。
「シン爺さん久しぶり、元気にしてた?」
「なんだお主だけか。」
「俺だけで悪いか、それより今日は本来の姿じゃないんだな!」
さっき思いだしてネタになりそうだと思ったことを言葉に含める
「なにたまたまじゃ」
明らかにルカを意識しる顔をしながらぶっきらぼうに言い放った
「まぁそれはさておきルカが冒険に出るって、旅に出でさ」
俺はここに来る理由の顛末をシン爺さんに伝えた。
「お主が、ルカに嫌われるなら上々だが、安全のため色々持たせたんだろ?、なら静観しとけ。苦い顔を見るのは嫌だからな」
「リリーと同じか、じゃあ物凄く心配だが二人の意見を聞くとしよう、ちなみにシェリーさんはどう思う?」
とても不服だが一応シェリーさんに聞いてみる。
「私も主に賛成です。シンラ様は少し子保護すぎるのでは?そんなんではルカ様に愛想つかされるのでは?」
ぐさっ そのような擬音が聞こえた気がした。
「シェ、シェリーさんがそういうなら,,,」
「なんだお主、そんなことを聞くためだけに来たのか?島から出てきた思ったらそんなことか」
「いゃ ルカ心配じゃん?でも嫌われたくないから数少ない友人にだなぁ,,,とりあえず酒持ってきたから飲もうぜ。シェリーさんも一緒に」
俺は途中で恥ずかしくなり持ってきた酒の話に逸らす。
「ちゃんと上等な物持ってきたのであろうな?」
「俺は酒に詳しくないけど、国王に頼んだから下手なものはないと思うぞ?」
「ならいいがお主に国王の知り合いなんておったんじゃな」
「リリーの紹介で知り合ったんだよ、んじゃシェリーさん、グラス3つお願い!」
「かしこまりました。では私もお言葉に甘えてご一緒させていただきます。」
アルベルトさんと知り合った経緯を話しシェリーさんにグラスを頼んだ。
すぐにグラスと軽食を持ってきたシェリーさんが素早くテーブルに用意した。
「それじゃあ。自慢の娘に!」
「可愛い孫に」
「ルカ様に」
各々が好いているルカの門出に祝ってくれる。
爺さんは自分で言うのもなんだが数少ない友人と酒を交わせるのを楽しみにしてるのか本音が漏れてる、と思うようにして俺らは盃を交わした。
昔のルカのことを語り飲みの場も盛り上がってきたところでドアからノックがした。
「竜神様。夜も更けておりますがお食事などはどの様にいたしましょう」
ドア越しから少女の声が聞こえた。
「もうそんな時間か、アウラ入ってよいぞ」
そう言われて入ってきたのはシェリーほどではないが水色の装飾品の付いた綺麗なメイド服にを着た竜人の女の子だ。
水色のボブカットに保護欲がわくような優しい顔の14歳ぐらいの少女で一瞬俺見てすぐ爺さんに向き直った。
「失礼いたします。,,,竜神さま、お食事の準備ができましたがいかがいたしましょう?」
「なんだ爺さん、ルカが恋しくて若いメイドを雇ったのか?」
少し酔ったのか事情を知っているのにからかってみる、少女の睨んでも愛らしい目は酔っているせいか気にならない。
「はぁ、お主も知っておろう今代の巫女のアウラじゃよ、こっちはわしの孫の保護者のシンラじゃ」
爺さんも大分楽しんでいるようだ恥ずかしげもなく孫呼ばわりしている。
シェリーさんはそれを肴に黙々と酒を飲んでいる。
「初めましてシンラ様、よろしくお願いいたします。」
「よろしくアウラ」
少し目の力が強いアウラを見て、明日また反省か?と思いながら挨拶した。
「では、この辺でお開きにして夕食を頂きますか?シンラ様の分もありますので」
俺の顔を見てシェリーが助け舟を出してくれたのでその船に乗り込む。
「そ、そうだな、俺の分もあるならいただこうかな」
俺は横にあった水を一杯飲み食堂に向かった。
食事はお酒を飲んでいるのを考慮してか多すぎずサッパリしたもので凄く美味しかった。
食事も終わり俺の今後の話になった。
「シンラ様はこの後どうするのですか?」
「邪魔じゃなければしばらくお邪魔しようかなって」
一人で暇だしと、そんなことを考えていた俺は爺さんじゃなくシェリーさんに確認を取った。
そんなシェリーさんは爺さんに目くばせをする。
「わしは構わん、お主さみしいのであろう。しばらく泊っていけ」
「別に寂しいわけじゃない、暇だからだ」
爺さんはさっき、いじったお返しかニヤニヤしながら許可を出した。
「ではお部屋の準備をいたします」
シェリーさんがそういってアウラに目をやりアウラが食事から出て行った。
そんなやり取りも久しぶりだと楽しく思い食後の話に花を咲かせたあと部屋に案内され。
アウラに「ありがとう」とお礼を言いベットに倒れこんだ。
ベットの中で久しぶりに来た疲労感の中でルカは今どうしてるのだろうと考える、
しばらくして本来寝るはずのない依り代から寝息が聞こえ昔からの友人たちとの酒盛りは終了した。