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始まりの合図
月さえも見えない真っ暗な夜空。
暗いだけでなく雲も風もなくて、どこまでも静かで黒い布を貼り付けたような空にスウ、と一筋の光が流れた。
流れ星だ。
「……あ」
そう呟く声がした。
絢爛豪華な部屋の中で。
森に囲まれた城の中で。
美しい花の咲き乱れる庭園で。
簡素で小さなキッチンで。
誰もいない鍛錬場で。
「「……始まった」」
遠く離れたそれぞれの場所で、少年少女たちが同じ言葉を口にしながら、流れ星を、そして流れ星が消えた真っ暗な夜空をじっと見つめていた。