初めてのダンジョン攻略
続きます
「ここが入り口か...」
目の前には縦5メートル横10メートルほどの巨大な横穴がある。道が下って行っているのでそのまま地下の1層に繋がっているのだろう。
「さっきこの街に着いたばっかりだし、休んでもいいんだけど」
1層だけ、1層だけね?
遂にダンジョンに入れるとなったら体が疼いてたまらないのだ。
「ちょっと戦ったらすぐ帰るから!」
もはや誰へ向けたものか分からない言葉を残し、俺はダンジョンに入って行った。
「ダンジョンの中って意外と明るいんだな。」
ダンジョンに入って驚いたことは壁が少し光っていたことだった。
全ての壁が光っているのでダンジョンの中とは思えないほど明るいのだ。
そしてもう1つ
「しかも道がかなり広い、戦うことを想定してか?」
そう、ダンジョンの通路がかなり広いのだ。
縦は3メートル、横は5メートルほどとパーティーで戦うとしてもスペースにゆとりを持って戦えそうだ。
「ソロなら挟まれたとしても逃げられそうだし助かるな。」
そんなことを言いながら歩いていると曲がり角からヤツが姿を現す。
「お!スライムか!」
目の前でぽよぽよ跳ねている25センチほどの丸いヤツ
こいつこそザ・弱い魔物、スライムだ
魔物の中でも珍しい人に害をなそうとして襲って来ても、たいしてなにかできるわけでもないかわいそうなヤツである。
別に放っておいてもいいのだが俺が初めて出会った魔物。
戦わずしてどうする。
いくらスライムが相手といえど最初の戦いとは緊張するものである。
「よし行くぞスライム!おらぁ!」
意を決してスライムを蹴飛ばしてみる...が
「倒せてねえなありゃ」
壁にぶつかったスライムは依然としてぽよぽよしていた。
「ならこの籠手で...!」
アッパーのようにしてスライムを殴り飛ばしてみるも、やはり依然としてぽよぽよしているスライム。
「やっぱり核を壊すしかないか。」
スライムには核がありそれを壊して倒すというのが主流となっている。もうここは素直に正攻法で倒すのがいいだろう。
スライムは透けているので中にある核が見えるようになっている。
ここに攻撃を入れて倒すのだが
「籠手でやれるか?」
そう、俺の武器籠手なのである。
全力で殴ってあのぽよぽよボディの中にある核に届くか怪しいところ。
「やってみるしかねえか」
スライムが俺に向けてジャンピング体当たりしてきたタイミングでしっかり核に向けて拳を突き出す。
「これでどうだ!?」
手応えはあった、結果はどうだ?
そこには依然と(以下略)
「倒せてねえじゃねえか!?」
しかも心なしかドヤッているように見えるのは気のせいか。
ここまでやって駄目なら仕方がない。
魔法を使わずに倒すのは諦めよう。
「これだけは使いたくなかったんだけどなあ...」
倒す方法はあるにはあるのだ。
やりたくなかっただけで。
俺は籠手の相手を殴る面、つまり指の第3関節の部分に鉄のとげを生み出す。
長さは15センチにした。
「これほんとに魔力持ってくんだよな」
このとげを生み出すのに使った魔力は2割強、使いたくないのも分かるだろう。
しかも相手はドヤッているぽよぽよ。
こんなに悲しいことはない。
「覚悟しろよスライム。」
ピンチに気づかず未だにドヤり続けているスライムにそう宣言すると、
「おりゃ」
プスッと一撃。
それだけで攻撃は核に届き、
パキッ
あっさりと核を破壊した。
キョトンとした雰囲気のスライムはそのまま粒子となって消えていき、スライムのいた場所には魔石が残っていた。
あまりにも弱い。それも周知の事実である。
しかし
「せめて逃げるくらいしろよ...」
そう思ってしまった俺は仕方ないと思う。
その後も何匹かのスライムに遭遇したがどのスライムも一撃で倒すことができた。
倒すといってもとげを刺しただけだったが。
しかし戦いの中で得られたものもあった。
それが物に対しての金属の動きだ。
1度金属の伸縮だけでスライムの核を破壊しようとしたのだがかなり魔力を込めないと核を貫けなかった。
「貫くものによっても使う魔力が違うんだろうな」
もしダンジョンの床のようなかたいものを貫く場面になったら、
「鉄ではダメだな」
もっと魔力を増やさなければ
今の俺にはできることが少な過ぎる。
「買い取りをお願いします」
「はい、スライムの魔石ですね」
ダンジョンを出るとすぐに俺はギルドで換金を行っていた。
「スライムの魔石か7つですので合計で銅貨7枚での買い取りとなります」
「ありがとうございます」
スライムはみんな倒しているから価値としては最低値だろう。
「今日はゆっくり休んで明日からまた潜るか」
そう、ダンジョンはここからが本番。
2層からは死者が出る。
2層の魔物は...ゴブリンだ
銅貨とかを日本円換算するとどうなるかを次話辺りで出したい