師匠との別れ
続きます
アカシを発つ朝、俺とシヴはガンさんの雑貨屋に立ち寄っていた。
「お!やっと来たか!待ちくたびれたぞ!」
待ちくたびれたって...まだ朝の8時とかだぞ...?
「アズマに餞別として渡したいもんが...?渡すっつったら変だな、教える?」
「餞別?」
「え?ガンさん俺には?」
「シヴには使えないもんだからな、お前にゃ後でポーションでもやるよ。」
「マジ!?ありがとうガンさん!」
ポーションでええんかこいつ。絶対下級のだと思うぞ。
「それでガンさん、餞別って何だ?」
「アズマには俺の『技』を1つ教えてやる。俺の土魔法とお前の金属魔法は似てるからな。普通魔法は同じか似ていたとしてもその人の想像力次第で全く違う性質を持つんだが俺がお前の戦い方にかなりアドバイスしてるとこもあって戦い方すら似ている。使えるときが来るかもしれない。」
「『技』...?」
「ほら、手を出してみろ。あ、あと籠手はしとけ。」
「え、あ、おう。」
状況があまり理解できないまま籠手を出して両手を前に出す。
「『撒菱』」
「は?」
ガンさんがそう唱えると何もない空中で生み出されたとげとげしたものがガンさんの手のひらに落ち、そのまま俺の手に乗せてきた。
え?は?空中で?
「え?え?」
「驚いただろ?こいつは撒菱といってな!撒くだけで対人、対魔物どちらにも使えて、しかもこの小ささだから魔力の消費量もめちゃくちゃ少ないっていう代物なんだよ!」
ごめんガンさん、めっちゃ早口で色々と教えてくれてるけど驚いてるのそっちじゃない。
え?俺カララ村で目の前に金属の板生み出そうとして失敗したよね?
「え?ガンさんどうやって今土を空中から出したの?」
「は?詠唱すりゃいいだろ。」
「ん?詠唱?」
「は?」
ん?
「人間が想像するだけじゃ到底できないようなことを言葉の魔力を乗せることでできるようにする。詠唱をして魔法が発動するまでを一連の動作とすることで、詠唱をすれば途中で邪魔が入っても魔法を中断せずに発動しきることができる。戦いの途中にいちいち頭で考えながら魔法なんて使えるわけがねえだろ。最悪、詠唱するだけして元の魔法が発動する前にちょっとテコ入れとかもできるんだ。それが詠唱ってもんだろ?」
「へー...あ、うん。そうだな。」
全く知らんかった...金属魔法だからまだ想像しやすくて助かったけど特化型魔法とかなら終わってたぞこれ...。
「は?おいアズマ詠唱を知らないとか言うんじゃねえだろうな。」
「知らん...。」
だってシヴはなんにも...おいなに目逸らしてんだよ。こっち見ろよ元魔術師志望。
「おいおいしっかりしてくれよ...」
「ガンさん、詠唱ってどうすればいいんだ?」
「人によって違うぞ、シヴなんかは生み出すのにあんまり工夫とかいらないし生み出した後も自分の感覚で操作してるだろうから詠唱がいらないはずだ。水流と金属、土じゃ空中に生み出す労力も違うらしいしな。ここら辺は使ってみんと分からんが。ただ詠唱で大切はおおよそでいいから詠唱で起こる現象を想像できることだな。言葉と現象の結びつきが弱いと結局想像力で補うことになって詠唱の意味がなくなっちまう。」
「わかった...頑張ってみるわ...」(なるほど...)
おいシヴ?ぽそっとなるほどって言ったの聞こえてるからな?
「なんで旅立つ直前にこんな話をしてんだか...まあ怪我をするなとは言わん。ただ死にはせんようにな。」
「ああ、ありがとう。じゃあ俺たちはもう行くよ。」
「ありがとうな!ガンさん!」
「ああ、また時間があればいつでも帰ってこいよ!」
結局最後の最後までガンさんのお世話になった俺たちはそのあとギルドによってマラガス周辺の情報を少し教えてもらいアカシを出た。
「マラガスの近くにはヨナ魔境の他に2つくらい魔境があるんだな!」
「魔境の魔物は魔石の他に素材を落とすこともあるという。魔境がいくつもあるならいろんな素材が出回っているかもしれない。ここで防具を新調するのもいいかもな。」
「そうだな!防具を新調してダンジョンに潜る、そこで冒険者ランクをDに上げてそこから魔境って感じか?」
「ああ、順番的にはそうなると思う。でもランクがDになってもある程度鍛えないと魔境には潜らんぞ?」
「そうだなー、当分ダンジョンで経験を積むことになんのかー」
「先に行った月光も同じことをしてると思うぞ?」
「リュウとは結局会ってないから向こうでは会いたいな!」
「ああ、武器と魔法がアレだから俺も気になってる。」
「だよな...ってそうそう!ガンさんに移動中も盾を出すように言われてたわ!」
そう言ってシヴは盾を出現させる。が急に足取りが重くなる。
「とりあえず盾を出しても軽くは動けるようになるのが目標だな。」
「重い...水流で移動したい...」
「ダメ。」
これで序章アカシ編はおしまい
弟とノリノリで技名考えてたら技名をそもそも言わないことに気づき急遽こんな設定に...




