7.映像③お父様
白い部屋に日参している。
今日はアイスを持ってきた。
冷たくてびっくりしてるようだ。
猫のグレールは首に包み紙でつくったピンク色の首飾りを付けているようだ。
メイビスが作ったのかな?器用だ。
次に来るときはリボンも持って来よう。
蓋にアイスをのせてあげると前足で器用にペロペロ食べだす。
本当に見た目はかわいいなぁ。
◇
私がやらかした数日後の映像。
私と入れ替わった見た目は小さなメイビス。
今日はクリーム色のワンピースだ。
ドレスをずっと着てるわけじゃないんだね。
父の書斎に呼びつけられてビクビクしていたようだ。
「メイビスです。失礼します」
「うむ。入れ」
音を立てないようにドアを閉める。
王子の婚約候補者になったこと。
レモネード家のためになんとしても選ばれるようにとのことだった。
私は即答する。
「嫌です」
「何を言ってるのだ?貴族なら政略結婚は当たり前だ」
「あの女に会う時間がそんなに欲しいの?
やめておいたほうがいいわ。
お父様がいない時間は他の殿方と二人っきりで部屋に籠って暴れてるみたい」
「なに?殿方?」
「一人じゃないわ。何人も一部屋に入って暴れてるみたい。
だってギシギシ音がうるさすぎて私の部屋まで聞こえるんだもの。
お父様が帰ってこないほうがあの女機嫌がいいの」
「そ、それはほんとうだろうな。嘘ならただじゃ済まないぞ」
すぐ家令に確認しに行くお父様。
うふふ。引っかかったわ。
すぐに戻って来て、顔を真っ赤にして私をどなりつけた。
「きさま嘘をついたな」
私はしれっと「当人に聞いちゃダメなんじゃない?家具を壊してるかもだしね」
お父様真っ青だ。忙しいな。
「と、とにかく明日は王城にあがって殿下に挨拶に行くぞ」
「私を売りさばく気は変わらないのね」
ため息をついたら部屋から追い出された。
よし!明日の準備だ。
◇
白い部屋に戻って来た。
メイビスは卒倒してるかと思ったら無言だった。
少しは慣れてきたのだろうか。
がさつでごめんね。
メイビスは猫のグレールをひっくり返してモフモフして気を落ち着かせている。
猫の扱いも手馴れてきてるようだ。
優里はリンゴパイにアイスをのせて食べながら彼女が話せるまで待つ。
「少しずつ思い出してきたわ。確か当日は具合が悪いのに無理やり起こされたの。
気分は最悪で王城に連れていかれたのよ」
「ほほお。具合が悪かったと」にやりと笑う私。
グレールに準備を頼まなければ。
「明日の映像のためにグレールに頼みたいことがあるの」
「びくっ!」
「今びくっていったわね?」
「い、いってません」
「それでね、頼み事なんだけどゴニョゴニョ・・・できるかしら?」耳元で話す。
「ま、まあできるけど」
メイビスは聞こえてないので首をかしげてる。
「さてと、メイビスはこのボールにパン屑と水を入れて練って欲しいの」
「新しいお菓子かしら?」
「ふふふ。明日のお楽しみよ」
さて問題は貴族の礼儀がまったくわからない私だ。
メイビスになるなら一応挨拶くらいは覚えないといけない。
靴は毛皮でできた子供用だから痛くないし、ウエストを絞るコルセットもない。
カテーシーという挨拶と自己紹介を少し教えてもらう。
まあ、明日は王城にいかないのがベストね。
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