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幽霊公女のやり直し  作者: 猫の靴下
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3.仲良くなろう

生きる気力のないメイビス。

「やり直しても何も変わらない」

良い案が出ないので優里は猫のグレールに提案する。


「あの~、とりあえず何か食べませんか?」


こういうときは、休憩して他の事をするといい。

優里は部屋に戻ってチョコやクッキーを持ってきた。

お菓子を見て怒る人はいない。

優里の持論である。


「甘いもの食べると脳が活性化するんです」

「僕も食べてみようかな?」

「どうぞどうぞ。メイビスさんも聞こえてる?

 異世界のお菓子を試してみませんか?」


透明になって見えないだけで気配は感じられる。

思い切って誘ってみたが反応がない。

まあしょうがないかとグレーのかわいい猫と一緒にもぐもぐ食べ始める。


「なんだいこれ?ふわふわしてるね?」

「これはマフィンといってカップケーキみたいなものです」

「おやこれはチョコがはいってるね。日本もずいぶん進歩したんだね」

「日本をご存じなんですか?」

「うん。僕は神になる前に日本国で生きていたこともあってね」


お菓子を食べつつ日本の話で盛り上がっていたら、メイビスさんが姿を現す。

話すことはないが、興味津々に聞いている。

どうやら異世界の日本話が気になるようだ。


気が付いたらずいぶん時間がたっていた。

時間の概念がないとはいえ優里の体力は無限ではなかったので、とりあえず家に戻された。

明日は話に出た和菓子を買っていかなくちゃ。あとポテチも。





翌日も優里がいろいろ買って来たお茶菓子と日本茶や紅茶を楽しむ。

最近は毎日仕事行って帰るだけだったので、こうやっていろいろ話ができるってほんと楽しい。

猫のグレールもノリノリで話してくる。

メイビスはこういう経験がないせいか無言だったが、うつむくことはなかった。


異世界者同士なのでお作法もなし。

腹の探り合いも嫌みの応酬もない。

好き勝手に話しまくる。


「メイビスさんの異世界話も聞きたい」と優里が言い出す。

「え?こちらの話?」メイビスは何を話したらいいのかとまどう。

「たくさんありすぎて話しずらいわよね?私はそちらの国の名前もよく知らないのよ」

「そうですね・・・我がクレリア国は、宝飾品の加工で有名です。

 綿花や羊毛もさかんで織物も他国に輸出してます」

 

王太子教育で習ったとおりに自国を紹介していくメイビス。


「わぁ。ドレスも作り放題ですね!素敵だなぁ」

ドレスや宝石など女子トークで盛り上がる。

優里はそういうものとは無縁の庶民であるが、興味はある。


グレールは丸くなって眠っている。猫だから仕方ないよね。

こうして雑談だけで数日が過ぎていった。





毎晩宴会が開かれて優里もせっせとお茶菓子を運ぶ。

今日は休日なので優里が作ったパンケーキを持参する。

優里は元々何かを作るのが大好きで、休日はいろいろ作り出す。


「これ熱いうちが美味しいの。蜂蜜や生クリームつけて召し上がれ」

「うわ~なにこれふわふわ。バターとも合う」

「ケーキじゃないのね。熱々で美味しいわ」


二人の様子を見てタコパやBBQもやりたいなーとニマニマしながら思う優里。


「そういえばメイビスの生まれた時の映像見てみない?」とグレールが言い出す。

「メイビスの?見たい!」

「わたくしの映像?・・・そんなものどうやって?」

「ふふふ~高位の時間神に許可をもらって持ってきたのさ~」


時間の神様がいらっしゃるのか。

神ってほんとヤオロズの神というけどいろいろいらっしゃるんだな。

そう思っているうちに白壁がプロジェクター代わりとなって映像が映し出される。





広くて豪華な部屋が映し出された。

写真でしか見たことがないヨーロッパの宮殿のように華やかだ。

大きなシャンデリア、壁の装飾も蔦が絡まった模様で美しい。

ベロアカーテンの光沢のあるドレープが黄色い光を柔らかくうつす。


天蓋付きの大きなベッドを大人数で囲んでいた。

少し顔色が悪い、ベッドに寝ているメイビス似の女性が赤ん坊に話かける。


「なんてかわいらしい私の子」

「おめでとうございます奥様」

「かわいらしい女の子です」


どうやらその赤子はメイビスのようだ。



メイビスは立ち上がって映像にかけより「お母様」と手をのばす。

見ることのなかった母の笑顔。

笑うことのなかったメイビスの口元があがり、ほんのり頬が染まる。


メイビスの母は産後の肥立ちが悪く、療養院に入ったまま亡くなってしまう。

魔法がある世界でも出産は命がけだったらしい。


クレリア国に聖女はいない。

療養院は治療師も大勢いたが、力及ばずであった。


隣のアピオス国なら聖女は数人いるが、父であるレモネード伯爵は派遣を依頼することはなかった。

彼には恋人アザレアがいたにもかかわらず、政略結婚をしかたなく受け入れた経緯があった。

子が生まれたらもうこの結婚に用はない。

父はメイビスが生まれてすぐに恋人の元へ行ってしまったのだ。





小さなメイビスの髪の色は銀色に近い。

蜂蜜色に変わったのは『聖女』の力を使いまくったせいだそうだ。


両親が家にいなくても屋敷の者はみな大切にメイビスを育てた。

メイビスを憐れんで皆が甘やかしたが、

父は母が療養院にいくとすぐに恋人のアザレアを家に連れ込んだ。

メイビスの住み込み家庭教師という名目だ。



映像が進んでいくとメイビスはあきらめたように椅子に座る。

もう見たくないと目をそらせた。


猫の神様代行グレールが慎重に話し出す。


「この辺りから修正が必要だねぇ」

「修正?どうせなら母親が亡くならないようにはできないんですか?」

「人の生死までは変えることができないんだよ」

「じゃあ意味ないじゃないですか」

「この時期にメイビスは母親を助けたくて祈るようになる」


優里は納得する。その日々の祈りが弟を回復する事につながるんだ。


「そもそも『回復』は光・水・植物・大地・風全て使えないとだめなんだ」

「生活魔法みたいね」

「そう、そのとおり。メイビスは生活魔法すべて使える。足りないのは膨大な魔力」

「もしかしてその膨大な魔力は祈りで増えるということですか?」

「勘がいいね!そのとおりなんだ。なら君はこのときどうする?」


母の『回復』を祈ってしまうと膨大な魔力と引き換えに『聖女』になってしまう。

なら『回復』以外で誰かを助けるには?

そもそもその力がないと弟を治療できない。


どうする?



「・・・薬」無言でいたメイビスはぽつりという。

猫はにやりと笑う。


異世界には『ポーション』という体を活性化させて治す薬があるそうだ。

そういえばゲームにもあった気がする。


「僕は時間を動かす力はないが、この映像の中にユーリ君を送ってみようか」

「は?」

「透明な幽霊となって子供のメイビスに今の事伝えてほしい。

 時間制限があるから手短にね。

 ゲームだと思ってやってみてくれないかな?」


映像だし、実際は変わらないのよね?

ゲームなら試してみようか。


私は了承すると、とたんに体がすーっと透明になっていった。

(幽霊っぽいわね)


そう思いながら映像に触れると中に入ってしまった。





いつのまにか敬称もなくなり、仲良くなってきたようです。


もし、少しでも面白かったと思っていただけたのなら、

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