2 召喚は何を巻き込むかのガチャでもある(召喚主視点)
これはあくまで召喚主の話であり、筆者の思想信条とは一切関係ありません。
召還主の話なんて、マニアックな設定を解説するものと相場が決まっていて、話自体は最後の段落を除いて全く進みませ。筋を追う方は次話へどうぞ(話が繋がるは保証の限りではありませんが)。
(7.28 言い回しのみの修正)
邪神の封印が解ける4年後に備えて(補足1)、異世界人を召喚する(補足2)。召喚するのは2人。使用するのはシンクロ魔法だ。これは、異世界と繋がった時に(補足3)、人間にとって危険な生物への攻撃(補足4)や有用な生物の捕獲の動き(補足5)を、異なる場所(補足6)でシンクロさせた2人を、この世界に飛ばす魔法だ。
シンクロ魔法での召喚が出来るのは7年に1度しかない(補足7)。失敗の可能性を考えたら7年前にも召喚しておくべきだったかも知れないが、異世界人にしか発動できない封印魔法は、この世界のものを長く飲食するほど効能が薄れて(補足8)、10年を過ぎると急速に効力がなくなるのだ。
「動きが似る」という要求からか、男女ペアで現れることは少なく(補足9)、たとい男女が現れたとしても、召喚された者どうしで結ばれる例は殆どない(補足10)。とはいえ、我々と異世界人の間では子供は極めて出来にくいし、出来たとしてもハイブリットの子供は全員不妊だ(補足11)。その結果、過去召喚者の子孫は皆無に近い。
シンクロ魔法には隠れたメリットがある。それは追いかけられる「邪悪」または「有用」な生命体もまた、召喚されるということだ。それらの大半はこの世界にいない生物達で(補足12)邪神を驚かせるのに役立つ。
一番役立ったのは猫だ。一回目は封印の解ける2年前の召喚で、三味線職人に捕まりそうになった(補足13)ふてぶてしい猫だった。それでも邪神は可愛いと思ったようで、散歩に出かけた猫を探しに邪神が我々の前に無防備に現れるという過去最大の隙を生んだ。その時はオスとオスのペアで繁殖は無理だったが(補足14)。
鼠や蚊も邪神を悩ますのに十分だったが問題の方が大きかった。(補足15)、邪神封印後に繁殖しすぎて、我々も困っている。あれは異世界人が連れてきた時に殺しておくべきだったとは思うが、あの素早い動きに我々が対応できたか、となると分からない。
なぜ鼠や蚊を思い出したかというと、今回巻き込まれた焦げ茶色の虫は、更に機動性が高かったからだ。思わず「子持ちでありませんように」と願ってしまった。
だが終わったことは仕方ない。今は召喚者を歓待することが優先だ。過去に何度も日本人を召喚しているから、日本語の通訳はいるし、文字での意思疎通は私ですら出来る(補足16)。日本人ばかりを召喚してきたメリットだ。それらを駆使して、彼らの機嫌をとる必要がある。これに失敗したら、7年待たないと次の召喚はできないのだから。
以下の補足は召喚主によるもので、筆者はその内容に関知しません。
(召喚主による補足1)
なぜ4年後と分かっているのか? 前回の封印時に封印期間を60年に設定したから。どんな勇者様が召喚されようとも、確実に100%の効力を持つように、毎回、同じ60年で封印することになっている。
封印とは手で押さえる行為で、両手の指を全部使うから基本年限は10年で、それの3倍効果のさらに倍効果が、一番簡単で魔力的にも効率が良い。なので封印は60年おき。ずっと昔に召喚した異世界人の「干支」が非常に役にたっているのはいうまでもない。
もっとも、前回お呼びした勇者様は「気にしないのがお約束」と仰っていたので、説明は不要だったかもしれない。
(召喚主による補足2)
封印魔法は異世界人でしか発動せず、逆に召喚の条件をみたすような異世界人なら誰でも発動する。
(召喚主による補足3)
異世界と現実世界のシンクロは色々なファンタジー設定があると前回の勇者様が仰られていたが、この世界の場合は、異世界地球からみて、複素数空間(実数と虚数(√-1)の組み合わせて出来る世界?)に存在していて、我々の住んでいる惑星だと、7年に1度だけ、この複素数空間での実平面と交差するらしい。太陽系黄道面に垂直に7年周期で回っているような小惑星を想像すれば良いだろう。太陽系の南北方向でなく、虚数空間を回るというわけだ。
ただし、実空間を通過する場所は、異世界地球から見て太陽の丁度反対側らしい。だから、常に地球から見えない。理論的には、実軸に現れるのは、無限小の体積のはずだから、太陽の裏でなくてもカメラなどには映らないだろうけど、無限小とはいえ、重力や磁力などが有限時間現れるので、なんらかの形で観測されてしまう。太陽の裏なら、そういう心配はいらない。もしかすると将来、重力波とか、太陽風の乱れとかで間接観測できるようになるかも知れないが、今のところは我が世界の存在は異世界の地球人には見つかっていない。
あと他の惑星の多くは実平面を避けるように虚数のXかYのどちらかが常に残るので異世界側には現れない。
え? そんな説明、誰も興味ないって? 失礼しました・
(召喚主による補足4)
猫だって人によってはアレルギーを起こすらしいし、犬なんか恐怖を覚える子供も多いそうだから、これらも危険と判断されることがある。
(召喚主による補足5)
食用とか「皮を使う」とかも有用のうちだ。そして、色々な種類のシンクロのなかで、最も攻撃的なシンクロを優先して選ぶから、ペット的な「捕まえる」より、食用として「捕まえる」ほうが優先される。
(召喚主による補足6)
異世界の中から、日本という国に限定してある。なぜ日本人なのか気にしたら負け、とほとんどの方が思うだろうが、実は切実な理由がある。それは日本人の腸の中には「海藻を分解する細菌 (バクテロイデス・プレビウス)」がいるからだ。海藻を分解するメカニズムと、邪神の守りの抜くメカニズムが非常に類似しており、このメカニズムを持つ者のほうが封印魔法の効率が高まると信じられているからだ。その証拠はどこにもないが。
前回の勇者様の前で、ここまで話したら「そんなマニアックな設定なんて誰も興味ない」と切り捨てられた。
(召喚主による補足7)
発動のタイミングは一瞬だが、魔法自体は3時間効力を持ち続けるから、この一瞬タイミングの1時間50分前に発動可能にさせる。ちなみに、この「時」とか「分」とかは過去に召喚した異世界人に学んだものだ。便利なのと、約60年ごと(63年か57年)に呼ぶ異世界人がこの世界に馴染み易いようにと、時分秒を導入した。
そうそう、前回の勇者様から「そんな下らない説明より、こっちの7年が、私たちの地球の2年に当たる」という情報は真っ先に告げろ、と叱られた。
(召喚主による補足8)
異世界の黄泉の国というところだと、一度でも飲食したら黄泉比良坂を越える能力がなくなるそうだから、10年ぐらいなら大したことはない。
こちらで10年以上飲食を続けると、封印魔法を使えなくなるだけでなく、召喚者は腸の中の「海藻分解菌」を失うようだ。日本人で外国生活の長い人も似た状況らしい。なので、ワカメや海苔が召喚者にとって栄養源でなくなってしまう。海藻分解菌と封印魔法に関係があるのでは、と信じられている理由の一つだ。もちろん両者の因果関係は証明されていないが、我が国の愚民にそれで十分だ。召喚主である私は懐疑的だけど。
(召喚主による補足9)
兎を狩るのは男に多く、兎を手で捕まえようとするのは女が多いと言われるように、男女で同じ対象への行動が異なることが多い。故にシンクロしやすいのは同性となりやすい。異なる役目を補完するという意味には「息が合う」という言葉が使われる。さて、この男女に違いそのものは中立した事実だが、それ以上の意味はない。しかるに、我々人類の歴史は、これら行動の違いを拡大解釈して、社会的な有利不利や偏見・差別を生んで来た。我々の世界のジェンダー問題の課題の一つでもある。異世界地球では問題になっているのかな?
(召喚主による補足10)
男女のペアの場合、年齢差が大きいことも多かった。たとい子供ができても、60年ごとの召喚だから、子供が次の召喚者と結ばれる前に適齢期を過ぎるので、適齢期の女性が召喚され続け、その女性が勇者様の息子(過去の例では一番若くて50歳前後だった)と結ばれ続けないかぎり、異世界地球人の子孫は続かない。
(召喚主による補足11)
我々と異世界人では染色体数が違うからだろうと前々回の勇者様が説明してくれた(我々には魔法に関する染色体が加わる)。運良く授かったハイブリットの子供とて「遺伝子3倍体」とかいう原理で不妊になる。異世界地球では「俺つえぇ転生ハーレムもの」が流行っているそうだが、避妊の必要がほとんど無いから、そういう話が流行るのかも知れないと、召喚主である私は思っている
(召喚主による補足12)
シンクロ魔法は、この世界にいない生物への攻撃・捕捉行為を優先するように設定されている。
(召喚主による補足13)
日本で猫が繁殖するようになって、かつ三味線で頻繁に使われるようになったのは江戸という街が出来てからだそうだ。上物は、引っ搔き傷のない腹皮だが、厚すぎないことも重要で、交尾させないように育てたメス猫が良いという噂もあるが、そこまで音の違いがわかる人間がそれだけいるやら。なので、魚を盗むような猫で十分だろう。
(召喚主による補足14)
猫が巻き込まれたのは、その後2回あり、いずれも最短封印記録を更新したが、いずれも繁殖に成功していない。繁殖さえすれば、一番可愛い子猫を邪神の前に差し出すのに。
(召喚主による補足15)
召喚から邪神封印まで数年の時間が開くので、ライフタイムの短い生物の場合、子孫繁殖が絶対条件になる。そういう意味では、鼠の場合は妊娠済みが一匹いれば良いし、蚊に至っては、人間に近づくのは交尾済みのメスだけなので、確実に繁殖する。
(召喚主による補足16)
言葉というのは60年で相当に変わるとか召喚者が言っていたので、違和感を減らすべく通訳者には年配と若い人の両方を配している。若いほうは、もちろん召喚者の新しい喋り方(現代用語っていうのかな)を早く学ばせるためだ。決してハニートラップ・ダーリントラップのためではない。