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0 伝説の転生先(プロローグ)

転生先というのは、コントロールできないからこそ、誰でも気になるところ。結果が吉と出るか凶と出るかは心がけしだい。


三途の川を渡って、ああ、成仏ではなく輪廻転生だなと悟った。異世界転生? なにそれ?


閻魔様曰く。


「人間以外に生まれ変わるなら何が良いか?」


人間への転生待ちの動物が沢山いるから、普通の人間は動物に戻されるらしい。でもコントロールは出来るらしい。そこで私は考えた。


犬はどうか? ドッグフードばかりでグルメに程遠いし、家庭内の順位付けとか、忠実なフリとか面倒だ。


猫? 子猫時代のサバイバルを生き残るのが大変だし、縄張りとか面倒だし、運良く飼い猫になれても、去勢とかされる。やだやだ。飼う人に悪ガキがいたら尻尾を引っ張られたりで安眠できない。食べ物だって、猫缶とかいう「クスリ」入りフォアグラばかりで、いろんな種類を食べるというグルメ感がない。昔のように道路脇の魚屋からちょろまかす、という冒険もできなくなった現代に猫の魅力は低い。


ウサギは論外だ。常に怯えて寂しくなったら死んでしまうなんて、そんな可哀想な人生は送りたくない


ペンギンは好奇心を発揮する余裕があるから悪くはないけど、あの地獄のような環境がねえ。卵を暖める役のオスは断食だって聞くし。


カラスはちょっとそそる。集団行動ということだけ除けば、何でも食えるし、自由は有るし、暖かい所を選んでねぐらを作れるし、なによりも仲間と遊ぶという感じは悪く無い。


でもイチオシは熊だ。天敵がおらず、人間並みの雑食で、分厚い毛皮は雨をもはじく。山の王者だ。メス熊がオスを毎年取り替えるのも良い。2年間の恋人未満の付き合いで、恋愛より自由のほうが性に会っているとつくづく感じた。


私の希望を聞いた閻魔様は

「外敵に怯えること無く、旨いもの食えて、遊ぶ自由があって、雨や雪でも困らなければ良いのだな」

とのたまわる。答えはもちろん「はい」だ。



「欲張りだな。貴様の格では熊は無理だが願いは聞き入れた」


意識が暗転した。


目の前には確かに各種のご馳走が散らばっている。風雪にも縁のない壁に覆われた場所で、自由時間はいくらでもあり、警戒すべきはたった一人の人間は、私が知っている頃よりずぼらになって、私に最適の環境を提供してくれる。


生まれた時は「騙された」「カラスにしとけば良かった」と思ったけど、これも悪くない。今では仮面を外した元文学少女の実態を知れて感謝してるほどだ。


私の魂は確かにゴキブリで十分なようだ。来生もゴキブリを希望しようかな。


そして俺は伝説になった。

第2回ラジオ大賞(2020年12月)に投稿した超短編「伝説の転生先」を微修正だけして、そのまま載せています。

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