表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

雨と晴れの狭間で。 〜僕らの出逢いが世界を変えた〜

雨の街。

作者: さち

僕の住んでいる街はいつも雨だ。

一年中雨の日ばかりで、空はいつも鼠色(ねずみいろ)の雲で覆われている。

だから僕は一度も青空を見た事がない。


青空ってどんな物なのか?

この街ではそれは本の中にしかない。

だから僕は、街の図書館へ行っていつも青空の本を眺める。


青にも様々な色があるんだって。

薄い青に濃い青。紫がかった青に赤みがかった青。

どれも空の色。



「いつか本物を見てみたいなぁ…。」



この街も昔は晴れている日の方が多かったそうだ。

いつも眺める空の本にはこの街の歴史が書いてあった。



いつからか少しずつ雨の日が増えていって、晴れの日がどんどん少なくなって。

気づいたら雨の日ばかりになっていたそうだ。



僕は本を読むまで何か大きな出来事があって、ある日突然雨の日ばかりになったんだと思っていた。

でも、毎日少しずつ少しずつ太陽や青空が消えていった。


だからどうやって青空に戻すのか、誰にも戻し方が分からないらしい。

この分厚い雲を晴らす方法ってなんだろうか…?




巨大な扇風機でたくさん風を送る?




それとも、空に雲を消す薬を打ち上げてばら撒いてみる?




けれど、そもそもこの雲の正体が分からないから対処のしようがないみたいだ。

ずっと同じ雲がそこにある訳じゃない。

消えては増えてを繰り返して常に新しい雲がそこにある。


たくさんの大人達が調べているけれど、詳しい事は分からないらしい。




でも、僕は雨が好きだ。

だから別にいつも雨でも構わないと思っていた。



ポツポツ窓に当たる音。



傘にバチバチ当たって跳ねる水滴。



水溜りを泳ぐアメンボ。





…ま、洗濯物が乾かないのは困るけどね。










ある日。

差出人のない手紙がポストに届いた。



空色の封筒。



僕には手紙をくれるような誰かはいないから開けて読むか迷った。

でもこの手紙は、もしかしたら今の僕をやめるキッカケになるかもしれないと思ったんだ。



…ただの勘だけど。






勇気を出して開けてみた手紙には短い一文。



「"西"へ向かって。私に会いに来て。」



…なんだこれ?

私って誰だ?



…西?

西に何があるんだろうか?



手紙の右下には七色が綺麗に並んだアーチの絵が描かれていた。

これは…なんだろうか?






「これを探せって事…?」






僕は手紙と一晩中にらめっこをして考えた。

空が少し明るくなる頃、夜中に強くなっていた雨が優しく弱まった。



まだ降っている雨の中を歩く為、いつも履いてる長靴とお気に入りの雨ガッパを着て。



僕はそっと玄関のドアを開けた。





「…いってきます。」





背負ったリュックには少しの食料と2着分の着替え。

大好きな空の本を眺められなくなるから、前におこづかいを貯めて本屋さんで買った小さな空の図鑑を持った。




青空とあの綺麗なアーチを探す旅。

鼠色した僕の心はここに置いて行こう。




"私"と名乗った君に会う為、僕は西へ向かって歩き出した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 行の空け方とか、横書きの使い方がお上手でとても読みやすいと感じました。 [一言] ちょっとプペルっぽさを感じました。 でも、単純に雨が嫌いじゃないところがよかったです。 若干終わりが唐突…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ