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2-3

 地下鉄駅の化粧室でいつもより時間を掛けてポニーテールを結び直し、コートにしわがないか確かめ、いつもはほぼ使わないファンデーションと下地クリームを取り出す。薄く、薄く、少しだけ。肌荒れを起こしやすいから、化粧は好きではない。口紅も引いてみたが、なんとなく色合いが変な気がして、すぐに拭き取ってしまった。

 何してるんだろう、バカみたい。

 でも、少し楽しい。

 誰かに会うのって楽しいことだったのかもしれない。少なくとも相手に興味があるときなら。

 ここ二年以上も、誰ともふたりで会う約束をしたことがない、と打ち明けたら、ミトンは呆れるだろうか。

 空には予報通り、四時過ぎから例の銀色の雲が広がり出した。不要不急の外出を控えろとの通告がスマホに表示される。いまだにこれの仕組みがわからない。予報を出したり、通告を出したりしているのは誰なんだろうか。ニュースを調べれば良いのだが、スマホでニュースを読もうとするとよく分からない罵詈雑言のようなものも一緒に入ってくるので、嫌になってアプリを消してしまった。

 雲はピクリとも動かず、平然と頭上を覆っている。道を行く人々はそんなものに目もくれず、無表情に自分の用事のために移動していた。自粛しろとは言われているが、罰則もなく条件も曖昧なので、完全に無視している人も多い。

 あの銀色の物体からは目に見えない危険物が降り注いでいて、一定以上浴びすぎると何か良くないことが起きる、と言っている人たちもいる。しかしそういった人々は、この騒ぎが起きるずっと以前から似たようなことを言っていた連中だった。


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