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5.
子どものとき、ジャングルジムから落ちて指を骨折した。
派手な落下ではなかったので「ひどい突き指」くらいに思われ、湿布を貼っただけで済まされてしまった。
三日間、私は身体の芯から湧き上がるような疼痛に悩まされた。いつも通りに学校へ通い、他の子と同じく授業を受け、放課後も友達と遊んだが、夜が来るたびに熱を出してうなされた。
四日目の朝、私は「指が痛いので死にたい」と訴えた。その後病院でレントゲンを撮ると骨が折れていた。
死にたいという言葉を使ったことを、とても怒られた覚えがある。何か他に言いようがあるだろう、指の怪我程度でそういうことを言ってはいけない、命を軽く考えるな。
しかし私は軽い気持ちで言ったわけではなかった。逃れられない激しい痛みと、何かまずいことが起きているという身体からの警告の恐ろしさに、私は本当に絶望した。これ以上生きていられないと思ったのだ。
必ず治る、などという言葉は、まったく私を慰めなかった。未来は明るいからという理由でどんな苦痛にも耐えられるのなら、今ここで指を叩き折って手本を見せてくれればいいのに。
今でも私は「ばね指」を起こしやすくて、体調が悪いと痛みで右手が開けなくなる。そうして回復するまでの何日間かを、ゆるく指を握ったまま過ごす。だから私は右利きだが、左手でも少しだけ字を書いたり、箸を使ったりできる。器用だからではなく、必要に迫られて覚えたことだった。