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刹那の風景 第四章  作者: 緑青・薄浅黄
『 ダイヤモンドリリー : また会う日を楽しみに 』

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『 僕とセリアさんの内緒話 』

※ 更新ができずに申し訳ありませんでした。理由は活動報告にて書かせてもらいました。ゆっくりとした更新となりますが、これからも応援していただければ幸いです。よろしくお願いいたします。


※ 長らく更新が滞っていましたので、ちょっとしたメモ。


  オウカ…… 花井の子孫(オウルの兄)

  リオウ…… オウカの娘

  エリアル…… オウカの妻


  オウル…… 花井の子孫(オウカの弟)

  マリア…… オウルの妻

  サクラ(シエル)…… オウルの娘(現在リペイド在住)


海が綺麗に見える丘…… 刹那の破片 第二章 : ベニラン『 甘い記憶 』

トワル劇団…… 大会の余興にレグリアから招いた劇団だったが、そのほとんどが、密偵と奴隷商人で構成されていた。


【 セツナ 】


 眠りについたアルトの頭を軽くなでて、セリアさんがフラフラと飛びながらこちらへと戻ってこようとしていた。それを見て、まだ、セリアさんにメッセージを書けていない数人が焦りだす。


 酒肴の男性陣はもう全員が書き終わり、飲み過ぎて寝落ちている人達もいる。だけど、酒肴の女性達はセリアさんとの交流が深く伝えたいことも多いのだろう。全員書き終わるまでには、まだもう少し時間がかかりそうだった。


 ソワソワしている彼女達を見て、しばらく、セリアさんを連れ出すこと決める。

 

 これが最後の贈り物(手紙)になるのだから、焦らず、ゆっくり推敲して、納得がいくものを書いて欲しいと思ったからだ。それに、僕もセリアさんだけに伝えたいことがあった。ここでは話せない内容なので、二人きりになれるなら丁度いい。


「みんな、寝ちゃったワ」


 セリアさんがそういいながら、僕の前に来て笑う。


「朝からずっと、騒いでいましたからね。体力が尽きるのも仕方がないと思います」


「そうだけど、もう少し起きていられると思っていたワ」


「まぁ……。大人でも寝落ちている人達がいるので、頑張ったほうだと思いますよ」


 僕の言葉にセリアさんが軽く周りを見渡し、毛布を掛けられている人達を見て苦笑した。


「さて、少し散歩にいこうと思っているんですが一緒にどうですか?」


「散歩? どうして?」


「旅にでるとしばらく戻れませんから、町並みを記憶に残しておこうかなと」


 首をかしげるセリアさんに、続けて話す。


「次、リシアを訪れたときに、どれだけ発展したかがわかるでしょう?」


「確かに、そうネ。まぁ……その反対もあり得るケド」


 セリアさんがチラリとオウカさん達の方を見て、ニヤリと笑った。


「それは、あり得ない」


 視線を向けられたオウカさんが、苦笑を浮かべながらもはっきりと否定した。


「二人とも、リシアの発展を楽しみに帰ってくるといい。きっと、新しい発見があるだろうから」


 彼の言葉に、オウルさんやリオウさんが深く頷き、マリアさんとエリアルさんは、優しい微笑みを浮かべ僕達を見ていた。


 アルトのそばにいる使い魔達に子ども達を見守ってくれるように頼み、アギトさん達にも声をかけると快く送り出してくれた。


 時折、転移魔法を使い適当に町の中を歩く。寝静まった住宅街。楽しそうな笑い声があふれる酒場。朝の賑わいとは真逆の市場。様々な場所をセリアさんと一緒に記憶に残していく。


 僕はアルトやセリアさんとは違い、家にいることが多かったため、さほど、そういった場所に馴染みがあるわけではないけれど。


 僕自身が思い出深いというか、強い印象が残っている場所は、医療院や闘技場や古代神樹。そして、アルトとフィーと一緒に訪れた海が綺麗に見える丘……。


 花井さんと彼の伴侶であるリシアさんの記憶を見た場所であり、サクラさんと話した場所でもある。転移魔法を使わずに、ゆっくりと、アルトとフィーとともにきた丘を登り切る。


 当然のことだが、深夜の丘の上には誰もいなかった。海は、夜の闇を映す色を纏い、アルト達と見た煌めいた美しさではなく不気味さが勝っているように思う。丘の上に設置されている柵に軽くもたれかかり、セリアさんと並んで真っ暗な海に顔を向けていた。


 しばらくして、海から視線を外し彼女を見る。僕の視線に気付いたセリアさんがこちらへと向くと同時に、僕は柵から体を離し彼女に深く頭を下げた。


「申し訳ありません」


「セツナ?」


 いきなりの謝罪に驚いたような声をだす。


「どうして謝ってるの?」


 セリアさんの恋人のイフェルゼアはトリアにいる。だから僕達の次の目的地はトリアになります。


「トリアにいくには、ここリシアから船に乗っていくのが一番早いんです」


 海にも魔物がでることから、船の点検や魔物の情報の確認、あと補給などでまめに寄港するらしいが、陸路を行くよりは航路を使う方が基本早く着くといわれている。


 まぁ、中型や大型の魔物が出たり、天候が回復しなかったりで出港できないときは、航路を諦めて陸路を行く場合もあるようだけどその辺りは運に左右されるのだと思う。


「知っているワ」


「だけど、僕はあえて遠回りになるサガーナを経由しての旅を決めました」


「……」


「本来ならば、セリアさんと相談して決めるべきことを、僕の独断で決めてしまいました」


「……セツナ」


「色々……」


「セツナ!」


 僕の話を遮るように、セリアさんが少し声を張り上げた。


「頭を上げて! 私は貴方がどれほど、私を慮ってくれているかを知っているワ!」


「……」


「いままで、私に何もいわなかったのは、最善を探してくれていたからでしょう?」


 セリアさんがしゃがみ込んで僕の顔を見ようとするので、頭を上げる。


「セツナがその最善を探すことになったのは、私とイフェルゼアのことを考えてくれたからでしょう?」


 セリアさんが、そういって悲しそうに笑った。


「アギト達に全部話してしまえれば、セツナが悩む必要もなかったのよ……」


「セリアさん」


 それ以上言葉にしないように、名前を呼んだが彼女は俯いたまま続けた。


「だけど私は、今のイフェルゼアを誰にも見せたくないノ……。気さくで明るい人だった。屈託なく笑う人だった。神の僕らしい一面もあったけれど、それでも、優しい人だった」


「……」


「関係のない人まで巻き込んで、皆殺しにする人では決してなかった……。命を狙われても、やり返しはするけれど、殺すだけ無駄だといって命を奪うことはしなかった……」


 1000年前のトリアの住民達の話ではない。彼女が気にしているのは、最近の出来事だ。月光や邂逅のメンバーだった人達のことだ。月光や邂逅にとって大切な人達だったことだ。


「彼らはもう生きてないワ……。多分、イフェルゼアが……」


「そうだとしても、アギトさん達の元メンバー達は、自業自得な面もあったと思います。アギトさんもサフィールさんも、危険だから行くなと警告していたのですから」


 そもそも、イフェルゼアはセリアさんの亡骸から離れることはない。こちらから仕掛けることがない限り攻撃してくることはないんだ。


 冷たい考えかもしれないけれど、アギトさん達が止めるのを聞かず報酬につられ、チームを抜けてまでギルドからの依頼でもないものを受けた。その結果は、依頼を遂行することができず命を落とすことになった。


 報酬と命、その天秤の傾きを決めるのは、自分自身でしかない。彼らは自身の命の使い方を自身で選んだんだ……。依頼を受け討伐に行き、返り討ちに遭うことなど、珍しいことではないのだ。


 アギトさん達もその点は重々承知していた。元メンバーの死を悼んではいるが、冒険者としての死を受け入れているようにみえた。


(内心では簡単には割り切れない気持ちを、抱いているかもしれないけれど……)


 アギトさん達がトリアに行く目的は、元メンバー達の死の真相を突きとめるためだと話していた。

無理はしないともいっていた。なので、敵討ちなどの私情で動いているわけではないと思う。


「わかっているワ。サーラ達は真相がわかったとしても、私やイフェルゼアを責めないと思う」


「……」


「それ以前に、神の僕の怒りをかったのならば、それはその人が悪いのだと、考えるのが普通だもノ」


 セリアさんの言葉にフィーから聞いた、人間と竜族との関係を思い出す。


「それも、自らが竜の縄張りに足を踏み入れた……。竜の縄張りに入らなければ、死ぬことはなかったと知れば普通の人間ならば、セツナのいうとおり自業自得といわれるワ……」


 何度も『普通』という言葉が入っているのは、竜族をどう思っているのかと聞かれたときに、僕が『一攫千金のお宝、もしくは社会的地位向上のための踏み台』と、話したことがあるからだろうか……。


「でもね、そう思っていても、本心では恨み言の一つもいいたくなるに違いないのヨ。それが、本人達の自業自得だとしても大切な人が亡くなったのだカラ」


「そうですね」


「だけど……。竜族だと知り、さらに、彼らが私とイフェルゼアの関係を知ってしまえば、きっと、その恨み言さえも封じてしまうワ……」


「……」


「一矢報いたいと話していた、エリオとビートでさえ……きっと」


 彼らは、アギトさんやサフィールさんとは違って、敵を討てるのなら打ちたいと話していた。


「私の恋人だと知って、心の中にある憎しみや恨みを飲み下そうとするのよ……私のために」


 確かに、ビートもエリオさんも、親しくなったセリアさんのために負の感情を抑えることを選ぶかもしれないと僕も思う。


「ねぇ、セツナ。私は、ここで知り合った皆が好きだワ。だから、彼らにイフェルゼアを恨まないでっていえない。だけど、私はイフェルゼアを愛していて、できれば、皆にもイフェルゼアを好きになって欲しい」


 セリアさんの瞳から、涙が次々にあふれて地面に落ちていく。


「でも、それは叶わない話だワ。虫のいい話だワ。ならば、それならば、私はイフェルゼアと出逢って欲しくないと思ってしまった」


「……」


「私は、自分勝手な人間だわ……」


 そう呟いたきり、セリアさんが口を閉じる。繰り返される波の音だけが耳に届き、

周りの静けさが強調される。


「セリアさん」


 彼女が黙ったまま、虚ろな目で僕を見る。


「僕は最初から、アギトさん達に教えるつもりはありませんでした」


「……どうして?」


「セリアさんが、イフェルゼアのことを誰にも話したがらなかったということもありますが、真実を知っても、誰も幸せにはなれないのならば最初から知らなければいいと、僕はそう考えてしまうので」


「……そう」


 元メンバーの死の真相を知りたいアギトさん達と、イフェルゼアのことを隠したいセリアさん。アギトさん達の真相を突き詰めたい気持ちも、セリアさんの色々と隠したい気持ちも、どちらの感情も、僕にとって身近なものだった。


 どちらの感情も理解できる。僕がアギトさん側になったのなら、必ず真相を突きとめるだろうし、

セリアさん側になったのなら本気で隠すだろう。


 どちらにも、肩入れしたいと思ってしまう。話すことで、未来がいい方向へ向かうのならば、

僕は話すことを選ぶだろう。だけど、それが変えようのない過去のことなら、知らない方が幸せなこともあるだろうと考えてしまう。


(リヴァイルには、弟君の真実を伝えたけれど)


 本当のところなど、本人に聞いてみなければわからない。しかし、今回、それを聞くことなどできはしない。ならば、僕は依頼主の気持ちに、セリアさんの気持ちに寄り添うことに決めてる。


「僕も自分勝手な人間だということなのでしょう。まぁ、僕が身勝手なのはいまさらの話ですが。セリアさんとお揃いですね。なので、この話はここだけの話にして、水辺に持っていって下さい。僕もそうします」


 僕は水辺にはいけないけれど。僕の言葉に、セリアさんが唇を震わせ、また、涙を落とし「馬鹿ね……」と呟いた。


「私が水辺へ旅立ったあと、真相が知れたときセツナが恨まれるかもしれないワ。どうして、私の罪まで被ろうとするノ」


「知っていて隠すことを選んだのだから、当然でしょう」


 賛同している時点で、僕も同罪なのだから。セリアさんはじっと僕の顔を見つめるだけで、それ以上言葉を重ねることはなかった。言葉を尽くしても、僕の気持ちが変わることはないと知っているからだろう。出逢ってから今日まで、ずっと一緒にいたのだ。お互いの性格を把握するには十分な時間だった。



 セリアさんが、気持ちを入れ替えるように、一度目を閉じる。そして、また、僕と視線を合わせ、困ったように笑う。


「話がそれてしまったけれど、私がセツナに何も聞かなかったのは、私が望んだ形でもあったからヨ」


「不安に思いませんでしたか?」


「セツナなら、どういう経路をたどったとしても、トリアに連れていってくれるって信じているカラ」


「……」


「月光と邂逅の調べが、船でトリアに行くと話していたワ。私達も船でトリア方面に向かうと、彼らと一緒に向かうことになる。だから、セツナは船で行くことを諦めたのでしょう?」


 アギトさん達が船を使わなくても、僕は陸路で向かうことを選んでいたと思う。船の予約を取ったことが知られると、途中まででも共に行こうといわれかねないから。


「実際、同じ方面なら一緒に行かないかっていわれたものネ」


「そうですね」


 その誘いは、アギトさんやサフィールさんだけではなく、酒肴のバルタスさんにも同じことをいわれた。道中重なる部分があるなら、一緒に行こうと……。途中まででも、共に進もうといわれた。


 いつものような、僕達と一緒にいると楽しいからという誘いではなく、水辺へ向かう旅路を気遣ってくれての誘いだった。


「黒達が私達を気遣ってくれる気持ちは、すごく嬉しかったワ。酒肴のカルロ達やルーシア達も、そして、エリオも少しでも長く一緒にいたいといってくれた」


 誰しも、別れは先延ばしにしたいと思うだろうし、仲間と認めたなら自分達も手助けをしたい、

見送りたいと思うだろう。それが永遠の別れならば尚更だ。


「最後まで一緒に旅ができたら、楽しかっただろうな」


 俯きがちにセリアさんが寂しそうに笑うが、すぐに顔を上げて僕を見る。


「彼らが私達と一緒に行動できないように、あたかもトキトナが通過地点であるように振る舞って、ジゲルと同時期に旅立つことにしたのでしょう? そうすることで、私達の本当の目的地を隠してくれた」


「よくわかりましたね。あのときは、ジゲルさんの手伝いもできるし、目的地を隠蔽するのにも丁度いいと思ったんです」


 トリアに向かうのに、サガーナへ向かう利点はなにもない。酒肴も剣と盾もサガーナ方面に行く予定はなかった。ジゲルさんが、一緒にトキトナいこうと誘ってくれたのは、予想外だったけど。


「ただ、トキトナからどの経路を通ってトリアに行くのかが気になったワ。私がいえたことではないけれど、アルトがいるなら、ガーディルを経由するのはやめたほうがいいと思うノヨ」


「トキトナで要件を済ませたあと、トリアへは転移魔法で向かいます」


 セリアさんが目を見開いて僕を見る。


「僕もアルトを連れてガーディル国内を歩きたくはないですし、ガーディルを経由しないとなる、時間がかかりすぎてしまいます」


「サガーナからトリアって、かなりの距離があるわヨ?」


「クッカにも手伝ってもらうことになりますが、問題なく転移できると思います」


 イフェルゼアの居場所は、かなでが知っていた。だから、僕だけでも問題なく転移できる。

でも、それを、セリアさんに伝えることはできない。。


「そう……。私が思っているよりも早く、トリアに着きそうネ」


「そうですね。トキトナに長居するつもりはありませんから、セリアさんが想像するよりもはやく、イフェルゼアと逢うことになると思います」


「アギト達よりも早く、トリアに行けそうネ」


 月光と邂逅のトリアへの旅は緊急性はないことから、サーラさんに負担がかからないように、ゆっくり進めると聞いている。


「そうですね。それに、アギトさん達はトリアに向かう道すがら、他の依頼も受けていたようですから、僕達のほうが早く着くと思います」


 詳しい話は聞かなかったけれど、レグリアから招いたトワル劇団の護送と、外交担当者の護衛を頼まれていたはずだ。レグリアの外交担当者は、アギトさんとサフィールさんに守られたリシアの外交担当者と交渉することになるのだろうか……。


 海から吹く風が僕とセリアさんの間を通り抜けていく。彼女が暗い海を見て、静かな声を落とした。


「私にもセツナの考えがわかることもあるのヨ。全てがというわけじゃないけどネ」


「そうですか」


 僕の顔を見て、セリアさんが目を細める。


「ずっと、そばにいて、セツナとアルトを見ていたのヨ。理解が深まるのは自然のことヨネ。だから、謝らないで欲しいワ」


 そういって、セリアさんが僕から視線を外し海の方へと顔を向けた。


「でも、それも、あと少し……」


 寂しそうにそう呟くセリアさんに、僕はあえて何もいわない……。その寂しさを拭うすべを僕は持たないからだ……。



※ この話から、書籍と同じような書き方にさせてもらってます。

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僕達の小説を読んでいただき、また応援いただきありがとうございます。
2025年3月5日にドラゴンノベルス様より
『刹那の風景6 : 暁 』が刊行されました。
活動報告
詳しくは上記の活動報告を見ていただけると嬉しいです。



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『緑青・薄浅黄 X』
よろしくお願いいたします。
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