『 握手 』
ドラゴンノベルス様から本日、
『刹那の風景5 68番目の元勇者と晩夏の宴』が、発売されました!
初版本は、ドラゴンノベルス様5周年記念ということで、
栞が同封されております。
Webと同様に、書籍も応援していただけると幸いです。
よろしくお願いいたします。
【 セツナ 】
僕が立ち上がると、アルトが不安そうに「師匠」と呼ぶ。
クロージャ達も不安そうにこちらを見ているのは、
この時間が終わるかもしれないと思っているからだろう。
「セリアさんのお願いを叶える準備をするんだよ。
少し時間がかかるからね」
「あー。俺も手伝う?」
「大丈夫。思う存分食べるといいよ。
でも、まだ、プリンが残っているから、
セイル達は食べ過ぎないようにね」
最後の言葉は、アルトにつられて食べ過ぎないようにと、
セイル達の顔を見ていった。
今まで僕が座っていたところを、
中心として、周りにテーブルが配置されているので、
新しくテーブルと椅子が配置できるところまで移動する。
ほどよいところに、
鞄から丸テーブルと7脚の椅子を取り出し配置する。
その、一つの椅子にセリアさんが陣取る。
そして、そこから少し間を開けて、
同じように丸テーブルと7脚の椅子を配置し、
その上に木箱をのせた。
皆が興味津々というように、こちらに顔を向けている。
そんな彼らに、「申し訳ありませんが」と前置きしたうえで、
僕とセリアさんからのお願いを話す。
「セリアさんが、ハルを発つ前に、
お別れをいいたいそうです」
僕の言葉に空気がザワリと揺れた。
「内緒の話もしたいようなので、
彼女が座っている席の周りは、
音を遮断する結界を張ることになります。
お手数をおかけしますが、名前を呼ばれたら、
彼女のそばにいってあげてください。
よろしくお願いします」
「よろしくネ」
僕とセリアさんがそういうと、
皆がそれぞれ複雑そうな表情を浮かべながら、
僕達の方を見て頷いた。
最初にセリアさんが呼んだのは、
ジゲルさん、ロガンさん、トッシュさん、シャンテルさん、
ナキルさん、ケニスさんだった。
セリアさんが、「慣れない場所で、
呼ばれるのを待つのは緊張するわヨネ」といっていたけど、
最初に呼ばれるのも、緊張するんじゃないだろうか……。
せめて2番目とかの方がよかったのでは? と思ったけれど、
セリアさんのための席だから、いわなかった。
セリアさん達が何を話しているのかは、わからない。
彼女から絶対に聞くなといわれている。
なので、僕は僕でセリアさんに頼まれている準備をしようと、
用意した席にいこうとした。
しかし、僕を呼ぶ声が聞こえ振り返る。
「……泣かずに話せる自信がない」
そういったのは、キャスレイさんで、
彼女に同意するように、「寂しい」っていってしまいそうと、
シュリナさんが続く。
皆が複雑そうな表情をしていたのは、
決して、セリアさんと話すのが嫌なのではなく、
彼女との今生の別れをあらためて、認識するのが、
嫌だったのだとわかっている。
それは、そうだろう。
誰だって……二度と会えなくなる別れなど、
喜べるはずがない。
「泣いてもいいんじゃないでしょうか」
「でも……」
セリアさんに未練が残るかもしれないと、
考えてくれているのだろう。
「寂しいと伝えてあげたらいいんじゃないでしょうか」
「……」
「お互いに、未練が残る別れ方をしなければいいんです」
「どういう意味?」
「離れるのは寂しい。
でも、また、このリシアで会えるのを楽しみにしている。
水辺にいって、このハルでの再会を願っている。
そういう想いをセリアさんに、
伝えてあげるといいのではないでしょうか」
セリアさんの寿命はもうとっくに尽きている。
それは、変えようのない事実だ。
だけど……この世界では、
望んだ場所に生まれることができるらしいから。
「どう言いつくろっても……。
別れは寂しいものです。悲しいものです。
それをごまかさず、伝えればいいと僕は思います」
「そうかな……」
「はい。ただ、彼女を引き止める言葉は、
いわないでください」
僕といれば、魔力が減ることはない。
だから、こうして人の目に映ることができ、
話すことができる。
でも、それだけだ。
食べることもできず、飲むこともできない。
誰かに愛されても、応えることもできず、
誰かを愛しても、触れることもできない。
僕は、そんな時間を過ごしてほしくない。
幽霊でいることを、よしとしてほしくはない。
「最終的に、セリアさんがこの世に未練を残しても、
僕は……必ず彼女を水辺に送ります」
セリアさんが、イフェルゼアと出会い、
この世に留まりたいと願っても、
僕はその願いだけは、叶えないと決めている。
「だから、セリアさんが生まれ変わってきたいと、
そう思えるような……別れの言葉を伝えてあげて下さい。
よろしくお願いします」
「うん。わかったよ」
「そうする」
キャスレイさんとシュリナさんが、
しっかりと返事し、その他のメンバー達も力強く頷いた。
ふと、ミッシェルが不安そうに、
自分の家族を見ていることに気が付く。
家族が呼ばれたのに、自分だけ呼ばれなかったことが、
気になっているのかもしれない。
「ミッシェル」
「はい」
僕の呼びかけに、びっくりしたようにこちらを見る。
「ミッシェルは、アルト達と一緒に呼ばれると思うから、
それまで待っていてくれる?」
「はい!」
安心したように笑って、
元気よく返事をする彼女に頷き、
僕は用意した場所へ移動し席に着く。
しばらくして、セリアさんから心話で、
『セツナ、お願い』と声が届いた。
僕は、包装された小箱が詰め込まれた木箱を取り出す。
その中から、ジゲルさん達の名前が記された小箱を、
向こうのテーブルの上に転送した。
それはセリアさんが、
僕に借金をしながら買い集めた贈り物だ。
その請求は、彼女の恋人であるイフェルゼアに、
支払ってもらうことになっている。
正直……。
利息も含めて、すごい金額になっているので、
返済にかなりの時間がかかると考えられる……。
必ず、全額返済するまで取り立ててほしいといわれているので、
きっちり支払ってもらおうと思っている。
セリアさんは、返済が終わる頃には、
前向きに生きようとしてくれるだろうと、
考えているみたいだが、僕なら踏み倒すと思う。
まぁ、そういったことも含めて、
踏み倒さないように、彼に借金を背負わせたのだろうけど。
僕は、竜であるイフェルゼアに対抗できる力があるから、
そう簡単に、彼を死なせることはないと思ってくれているのだろう。
それだけ、彼に生きてほしいということだ。
それならば、僕はセリアさんの期待に応えなければならない。
僕が狂気にのまれそうになる度に、彼女は僕を正気に戻してくれた。
彼女の恩に報いるためにも……。
ジゲルさん達が、セリアさんに何かをいいながら席を立つ。
そして、しんみりしたまま、僕が座っている場所へときた。
「どうぞ、おかけ下さい」
少し戸惑いながらも、用意した椅子に座ってくれる。
そして、それと同時ぐらいに、セリアさんが、
『クレイグ、ディック、ベリノ、サリム、タッソ』と、
酒肴の五番隊の名前を呼んでいた。
「あっしは、明日からセツナさんと旅するでやんすが、
ここに座っていても、いいでやんすか?」
「気にしないで下さい。
僕からはお礼と、今日の食事会に参加してくれた、
お土産を渡したかっただけなので」
そう告げると、アルトが早足でこちらにきて、
「俺も、皆にお礼をいいたい」といったので、
アルトの分の椅子もだして、話をしていく。
そうして話が一段落したところで、
僕はテーブルの上に置いた、
箱の中から薬をいれるための、
革財布のような入れ物を選んでもらう。
その中には、解熱剤、化膿止め、解毒薬、
頭痛薬、腹痛薬、二日酔いの薬を、
各3包ずついれてある。
「この薬は、僕が調薬したものです。
この入れ物に入れている限り、悪くなることはありません」
そんな高価なものはもらえないと、トッシュさん達がいうが、
僕は首を横に振った。
「僕は……。このハルに帰ってきたときに、
今日集まってくれた人達が、健康でいてくれることを望みます。
ようは、僕の自己満足なので貰ってやって下さい」
クッカが作って、僕が調合した薬ならば、
医療院で売られているものよりも、効果が高い。
単調な風邪でも……簡単に命を落としてしまう世界だ。
アルトが大切に想う、友人達が笑っていられるように、
僕達に心を傾けてくれる人達が、
病気で辛い思いをしないことを願って、薬を渡すことにした。
「副作用のある薬ではありませんが、
医療院へいけるときは、
医療院へいって、診察してもらってから、
服用される方がいいと思います。
僕から貰った薬があると、クオードさん達に話せば、
診察料だけですむと思いますので」
「大丈夫なんでやんすか?」
「薬自体は、冒険者ギルドや医療院で売られているものと同じです。
違うのは、上位精霊の契約者である僕が魔法を使い、
調薬していることと、その薬草をクッカが育てていることです」
「……」
「なので、医療院で作られる薬よりも効果が高いので、
なくなるまでは、こちらを飲んでもらえると早く治ります」
「今日だけで、色々貰いすぎでやんすね……」
「そう思われるかもしれませんが、実はそうでもないんですよ。
アルグギアーレの肉は、アルトが食べたいといったから、
狩ってきました」
アルトがそうだというように頷く。
魚だけでいいといわれたら、僕は狩りにいかなかったはずだ。
「魚は皆さんが釣ったものと、大会のときのものですし、
賞品は……精霊様の贈り物のとして、採ってきた残りです。
この家のものも、庭のものも、ジャックの置き土産ですしね」
労働力も……僕は釣りができるようにしたぐらいだ。
その他の準備は、黒と黒のチームで用意してくれた。
一番大変だったのは、朝から晩まで料理を作ってくれた、
酒肴だと思う。
「プリンも……手伝ってもらいましたし」
そういいながら、トッシュさんとケニスさんを見ると、
彼らは同じような表情で笑った。
「なので、今回のために、皆さんに用意した贈り物は、
この薬入れと薬だけなんです」
そもそも、この食事会は、
アルト達とセリアさんのために計画したものだ。
その計画に、快く頷いてもらえなければ、
彼らのために集まってくれなければ、
こんなに、楽しい時間にはならなかった。
「だから、僕からの感謝の気持ちということで、
受け取っていただけると嬉しいです」
僕の言葉に、皆が頷いて受け取ってくれる。
トッシュさん達やロガンさんが、そのあと、
アルトに二人を許してくれてありがとうと告げ。
アルトはもう全然気にしてないから、
忘れてほしいといって笑った。
話も終わり、彼らが席を立ったのだが……、
トッシュさんが、どこか切実な眼差しで僕を見た。
「セツナさん、私と握手をしてもらえないだろうか」
「はい」
右手を差し出すと、彼は両手で僕の手を握る。
そして、「どうか。どうか……、
無事にハルに戻ってきていただきたい」と告げた。
僕は内心で戸惑いながらも、「必ず戻ります」と
笑って約束する。
そして、シャンテルさん達にも同じことをいわれ、
握手を交わした。
どうしてと考え、ハルの人達がリシアの守護者を、
本当に大切に想ってくれているのだということを、
思い出す。
(かなでは……ハルに帰ってこれなかった……)
かなではハルの人達にとって、希望の星だった。
『希望の星を、失う恐怖は私にもわかるかな』といった、
風の精霊の言葉が脳裏をよぎる。
『セツナは、彼等の新しい希望ということかな』
そういわれたことも……。
まだ、花井さんやかなでのように、
この国を愛せるかはわからない。
だから、守護者としてどうしていけばいいのか模索している。
いつか、答えがみつかるかもしれないし、
ずっとみつからないかもしれない。
だけど、今、彼らに約束できることが一つある。
「大丈夫。僕はアルトと一緒にハルに戻ってきます」
「はい。守護者様のご帰還をお待ちしております」
トッシュさん達は、ほっとしたように笑ってから、
楽しそうにミッシェルの方へと戻った。
セリアさんから合図が届いたら、小箱を転送し、
僕とアルトも、お礼と贈り物を渡していく。
酒肴の五番隊は、アルトによく試作品を食べさせてくれていた。
一番僕達に料理を作ってくれていたのも、五番隊だ。
そんな彼らが、アルトに「俺達はずっとハルにいるから、
俺達の料理が食べたくなったら、すぐに帰ってこいよ」といい、
僕には「お前はもっとしっかり食え」といった。
これでも、黒達と同盟を組んでから食べる量は増えている。
正直これ以上増やすのは無理だ……。
だけど、無理だというと話が終わらなさそうだったので、
頷いておくことにした。
やはり最後は、僕とアルトと握手をして終わる。
僕達の声も向こうには聞こえていないはずなので、
トッシュさん達とのやり取りを見ていたのだろう。
次に僕達の前に座ったのは、四番隊だった。
カルロさん、ダウロさん、オルフェさん、
キャスレイさん、シュリナさんだ。
アルトに「大丈夫?」と聞かれているのは、
キャスレイさんとシュリナさんで、
目を真っ赤にして、いまだに涙が止まらないようだった。
この二人は、
よくセリアさんとおしゃれ談義をしていた。
ダウロさん達も寂しさを隠そうとはせず、
僕とアルトに「何かあったら、絶対に相談しろよ」と、
いってくれた。
カルロさんが、
トキアを北大陸に連れていってもいいかと聞いてくるが、
ダメだとはっきり断った。
オルフェさんが、鞄に入れようとしたら、
阻止するから大丈夫といっていたけど、
あまり安心できない……。
トキアには気を付けるようにいっておこうと思う。
「何度もいうが、サガーナの酒は人間には強い。
だから、水で薄めて呑め」
僕の前に座るなりそういったのは、クローディオさんだった。
酒肴の三番隊、クローディオさん、イーザルさん、コルトさん、
メディルさん、シルキナさん、彼らの隊は獣人で構成されている。
彼らからの言葉は、僕には酒を飲み過ぎるなという忠告。
アルトには、時々、ハンクさんやロシュナさんに、
顔を見せてやってくれといった。
アルトは嫌そうに頷いていたけれど、
時間ができたら、一度サガーナにいこうと決めた。
あとは、エイクさん達の話をしてから贈り物を渡した。
彼らは、僕達と入れ違いでリシアにくることになっているようだ。
酒肴は、一番隊のブライアスさんとクレマンさんと、
五番隊以外のメンバーは、北の大陸にいくことになっている。
なので、エイクさん達のことは、ブライアスさん達と、
剣と盾にお願いしていくことになるかもしれないと話していた。
黒のチームは面倒見のいい人が多いから、大丈夫だろう。
安心して、リシアで生活してほしいと願った。
そして、握手をしたあと、彼ら全員が僕に頭を下げてくれた。
「アルトを、よろしく頼む」と、
それから「ラギさんの武術を教えてくれてありがとう」と……。
ラギさんの技術が、サガーナの獣人達に引き継がれていくのなら、
それは本当に喜ばしいことだ……。
セリアさんからの贈り物である小箱を、
大切にそうに抱えて、目の下を赤くしたルーシアさんが口を開く。
「さっきは、迷惑をかけてごめんなさい」
「迷惑と思うことは何もありませんでした。
だから、気にしないで下さい」
「ありがとう」
まだ何か話したそうにしていたが、
時間が足りないと思ったのだろう、
彼女はそこで一旦口を閉じた。
ルーシアさんが所属しているのは、二番隊だ。
メンバーは、セルユさん、フリードさん、ルッツさん、
ルーシアさん、アニーニさんの5人だ。
彼らは僕の薬が定期的に欲しいと告げた。
特に、食べ過ぎの薬と二日酔いの薬を中心に……。
僕が食べ過ぎず、
飲み過ぎなければ薬は必要ないということを伝えると、
苦虫を噛み潰したような顔をする。
まぁ、薬については、
バルタスさんにも頼まれているから大丈夫だと伝えると、
安堵したように息をついた。
「北の大陸にも、美味しい魔物と酒があるからさ」
セルユさんの言葉に、「確かに」と僕が頷いている横で、
フリードさんとルッツさんとアニーニさんが、
アルトにリペイドのお勧めの屋台を聞いてメモしていた。
情勢を見てリペイドまで、足を伸ばすかどうかを決めるようだ。
一応サクラさんに、酒肴がリペイドにいくかもしれないということを、
伝えようと心の中にメモしておいた。
握手をしたあと、ルーシアさんとアニーニさんが、
僕とアルトを見て、「体調が悪いと思ったら、
すぐに戻ってくるのよ」と、先日と同じことをいった。
僕もアルトも「そうします」と答えたが、
それでも、不安そうにしていたのは、
セルユさんの話と関係があるのかもしれない……。
「セツナよー」
バルタスさんが苦笑しながら僕を呼ぶ。
僕とアルトの前には、歴戦の冒険者が座っていた。
酒肴の一番隊、バルタスさん、ニールさん、ブライアスさん、
クレマンさん、ラフルさんだ。
バルタスさんとニールさんとブライアスさんとは、
よく話していたけれど、クレマンさんとラフルさんは、
ここにいないことが多かった。
この二人はウィルキスの間、
ギルドから頼まれた、学院の講師の依頼を受けていた。
なので、いつも忙しそうにしていた。
途中、病気の流行があって、
薬の材料を採取しにいったり、してくれていたから、
さらに彼らの時間が圧迫されたのだと思う。
だけど、一番の理由は、授業に使う魔物を、
自分達で狩りにいっていたからというのが大きいらしい。
普通は学院で用意してくれた物を使うようだが、
こだわりが強い彼らは、それでは満足できなかったようで、
料理を教えるうえで、使用する材料を全部自分達で用意してたと、
酒の席で、ニールさんがため息をつきながら話していた。
僕は自室にいることが多かったので、
飲み会などで話をするぐらいだったのだが、
アルトは、授業で作った料理を貰っていたようで、
今も尻尾を振って、どの料理が美味しかったと話していた。
「お前さん、これから旅する費用は大丈夫なのか?」
バルタスさんが、セリアさんから受け取った小箱を一度見てから、
心配そうに僕を見る。
幽霊がお金を使うことはできないので、
彼女にとりつかれている、
僕の懐事情を心配してくれたのだろう。
「大丈夫です。
ギルドに色々買い取ってもらいましたから」
「確かに……心配することはなさそうだがなぁ」
そういって、まだ机の上に置かれている、
フェルドワイスの結晶の方に顔を向けて苦笑した。
あとで、オウカさんにフェルドワイスの巣蜜と、
フェルドワイスの結晶も買い取ってもらう予定だ。
バルタスさんの「まぁ、なんだ……」から始まり、
そこにニールさん達が加わり話が綴られていく。
そのほとんどが、体に気を付けろということだった……。
僕とアルトもこれまでのお礼をいって、贈り物を渡す。
彼らとも握手をしたあと、ブライアスさんが、
スッと半分に折られたメモを僕に渡した。
首をかしげて中を開くと、
そこにはびっしりと魔物の名前が記されている。
「……これは、この魔物を見つけたら、
連絡しろということですか?」
僕の問いかけに、
ブライアスさんとクレマンさんとラフルさんが、
とてもいい笑顔で、親指を立てて「そうだ」と告げた。
「お前らよ、こそこそ何を書いているかと思ったら……」
「そういうところ、全然変わりませんね……」
バルタスさんとニールさんが、呆れたように3人を見ているが、
ブライアスさん達は気にすることなく笑う。
最後の最後で、こんなお茶目な面もあったのかと知る。
どこか、ラギさんを彷彿とさせるやり取りに、
思わず笑みがこぼれたのだった……。





