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刹那の風景 第四章  作者: 緑青・薄浅黄
『 ダイヤモンドリリー : また会う日を楽しみに 』

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33/43

『 釣り大会』

【 セツナ 】


食べ過ぎで動けなくなった子供達に、

消化剤を渡し、今はこれ以上食べないようにと伝えた。

悲しい顔で頷かれるのは、正直心が痛いけど、

こればかりは仕方がない。


そもそも、アルトとエリオさんの、

食べる量がおかしいのだ。


子供達は薬を飲んでましになったようだが、

まだ、少し顔色が悪いため、

大きなクッションの上で横になっている。


彼らのそばには、

トッシュさんとシャンテルさんが、ついていてくれる。

動きたいのに動けない子供達が気の毒なので、

使い魔達に一緒にいてあげて欲しいとお願いしたら、

ナキルさんやケニスさん、

カルロさん達もそちらへと合流し、

使い魔達をかまい倒していた……。


カルロさんは時々、

アリアケとシノノメに突かれているが、

それも楽しそうにしている……。


僕はといえば、

アルトとエリオさんが、料理を食べるのを眺めながら、

ヤトさんとリオウさんと話していた。

オウカさん達は、一足早く食事を食べ終わり、

夕方にまたくるといって、帰っていった。


「セツナは、

 セリアさんからの依頼が終わったらどうするの?」


リオウさんの言葉に、

エリオさんの食べる手が一瞬止まるが、

すぐにまた、手を動かす。


「まだ、決めていませんが、

 どうしてですか?」


「あ、あのね」


リオウさんがヤトさんをチラリと見て、

そわそわしながら続きを口にした。


「私達の結婚式に、

 参加して欲しいなぁって……」


「日取りが決まったんですか?」


「いや、まだ決まっていない」


僕の問いに、ヤトさんが苦笑しながら、

リオウさんを見て、僕を見た。


「だが、セツナには、

 招待したいということを、伝えておいた方がいいと、

 思ったからな」


「セツナが音信不通になると、

 私達じゃ探しようがないから」


「……できるだけ、ギルドによるつもりですし、

 ハルには、トキアとギルスとヴァーシィルがいますから、

 多分……音信不通にはなりませんよ」


「そうだといいが」


「そうだといいけどね」


「……」


あまり信じていないような感じで、

声を揃えて返事をする二人に、

僕はそれ以上何もいわなかった。


そろそろ戻る時間だということで、

二人は「美味しかった」といって戻っていった。


ヤトさん達を見送ったあと、

視線を感じてそちらに向くと、

エリオさんが僕を見ていたが、

諦めたように首を横に振ってから、

エレノアさん達と話している、セリアさんを見て、

色々と飲み込んでいた……。


アルトとエリオさんが、何回目かのお代わりにいき、

一人でお酒を飲み、料理を食べていると、

バルタスさんが、料理とお酒を手にしてこちらにきた。


「おう、セツナよ。ちゃんと食ってるか?」


「はい。美味しい料理をありがとうございます」


「いや、素材がいいと料理も美味くなる。

 それも、ちょっとやそっとでは、

 手に入らないものばかりだしな」


バルタスさんがそういって笑い、

持ってきた料理を食べ始める。


「あ、バルタスさん」


お皿に山盛りに料理を盛ってアルトが戻ってきた。


「しっかり食ってるようだな、アルト」


「うん。これで、最後」


「最後?」


「今並べられている料理を、制覇した!」


「……」


「……」


楽しそうにそう語るアルトに、

僕とバルタスさんは無言になった。

普通に考えると、昼だけで制覇できる品数ではなかった。


「俺っちも、これで制覇っしょ!」


アルトに遅れて、エリオさんも山盛りのお皿を机の上に置いた。


「二人とも、釣った魚は食わんのか?」


「食べる」


「食べるっしょ?」


「いや、もういい」


不思議そうに首をかしげた二人に、

バルタスさんは手を軽く振って話を切った。


しばらく食べることに集中していたが、

アルトがバルタスさんを見て、口を開いた。


「バルタスさん」


「どうした」


「今残っている料理で、

 お弁当ってつくれる?」


「……つくれるが、

 食いたくなったら、好きなときに食わんか」


「俺じゃなくて、クロージャ達が可哀想だから」


アルトが耳をぺたりと寝かせてそういった。


「今回の料理は、

 師匠が狩らないと食べれないものが多いでしょう?」


「あー……。確かそうだな」


「お弁当にして、保存庫に入れておいたら、

 悪くならないし、家に持って帰って、

 お腹がすいたときに、食べたらいいと思ったんだ」


バルタスさんが僕を見る。

ダルクテウスやアルグギアーレは、

僕が狩ったものだからだろう。


「ミッシェル達の、食べたいのに食べることができない、

 という悲しそうな表情は、胸にくるものがあったので、

 僕としては、アルトの提案に賛成なのですが、

 酒肴の人達は大変じゃないですか?」


「いやぁ、わしもセツナと同じことを思った。

 わしらは、料理を作ることと、食べること、

 そして食わせることが、生きがいだからな、

 大変だと思ったことは、あまりない。

 それに、今回は残った料理を詰めるだけだからなあ」


楽しそうにそういって、豪快に笑うバルタスさんを、

アルトがじっと見つめている。


「どうした、アルト」


「なんでもない」


「そうか?」


「うん」


アルトが何を気にして、バルタスさんを見ていたのかは、

わからなかった。だけど、アルトが話そうとしないので、

バルタスさんは、それ以上なにも聞かなかった。



「釣り大会だ!

 優勝するぞ!」


「おー」


アルトの元気な声に、

体調が戻った子供達が、釣り竿を握って、

楽しそうに応えている。


釣り大会には、ほぼ全員が参加することになった。

優勝賞品もあるので、気合いが入っているようだ。


大会の内容は、チーム戦と個人戦で争うことになった。

両方とも、1位から3位までが賞品を手にすることができる。

チーム戦は5人で1チーム。チーム分けは……。


クリスさんチームは、

アギトさん、サフィールさん、クリスさん、エリオさん、ビート。


アルトチームは、

アルト、クロージャ、セイル、ワイアット、ロイール。


ミッシェルチームは、

ナキルさん、ケニスさん、ミッシェル、エミリア、ジャネット。


ジゲルさんチームは、

ジゲルさん、ロガンさん、トッシュさん、シャンテルさん、僕。


そして、剣と盾のチームと、

酒肴の1番隊から5番隊のチームとで競われる。


勝敗の決め方は二つ。

個人戦は、誰よりも沢山釣った人と

一番大きな魚を釣った人になって、


チーム戦は、釣った魚の数になった。

制限時間は、50分。


チーム戦でもあり、個人戦でもあるので、

釣る場所は各人の自由となっている。

チームで固まる必要はない。


魔物が釣れることもあるため、

子供達のそばには、セセラギ以外の使い魔をそばに置いた。

魚を釣り始めれば、セセラギは絶対に、

じっとしていないことが予想できるため、

サーラさんと一緒に、待てと命じて待機させている……。


時折、思い出したように、

キュウキュウと鳴いているが、

サーラさんがマグロを与えると、すぐに静かになっていた。


各々の釣り竿には、正直、何が釣れるかわからないので、

糸が切れたりしないように、僕が魔法をかけてある。

落ちないようにもしているので、釣り上げたときにさえ気を付ければ、

さほど、危険はないだろう。


大会に参加しない、フィーが、

「釣り大会開始なのなの~」と、

ちょっと、気が抜ける合図をしたことで、

釣り大会の火蓋が切られた。


子供達が一斉に走り出し、

続いて、酒肴の人達も走り出す。


釣る場所はかなり広く作ってあるが、

それぞれが釣りやすいと思う場所を、

あらかじめ決めていたのだろう、

一目散に走っていく。


僕も良さそうなところを探して、

釣りを開始した。海釣りは初めてなので、

カイルの記憶を頼りに、色々と準備はしていたが、

餌をつけて、投げ入れると、すぐに魚が食いつく。


これは……あれだ。

入れ食い状態というやつではないだろうか……。

それは僕だけではなく、周りもそうなので、

あちらこちらで、嬉しそうな声が上がっている。


初めて、釣りをするといった人達も、

餌をつけて入れると釣れるので、楽しんでいるみたいだ。

まぁ、釣れないよりは釣れる方がいいとは思うんだけど、

この調子で釣れるとしたら、かなりの魚が釣れることになる。


「これ、消費できるのかな……?」


思わず、ぼそっと呟いた僕に、

隣で釣っていたニールさんが、

「食べきれない分は、酒肴で買い取る」といって、

ニヤリと笑った。


どうやら、酒肴のチームでは、

食べきれない分は、酒肴の店で提供しようと決めているようだ。


「それなら、どれだけ釣り上げても、

 大丈夫そうですね」


「確かにそうだが……

 釣った魚が、入れ物に入らなくなる方が先じゃないか?」


「……」


釣り大会が開始して、まだ20分ぐらいしか経っていない。

かなり大きい入れ物を用意したのだけど、間に合いそうにない。

僕は、ギルスを呼びその背に、折りたたみ式の入れ物を乗せて、

必要な人に配って欲しいとお願いした。


僕のお願いにギルスが、

魚が入れ物から、

溢れそうになっている人のところへいき、

背中から入れ物を取ってもらっていた。


「うわー、なんか変なのが釣れたぞ!」


そんな叫び声が聞こえて、そちらのほうを見ると、

ワイアットが竿を持ち上げて、

釣れたものをどうしたらいいのかと、

右往左往しているのが見えた。


シノノメがそばにいこうと、

とてとてと走っているが、それよりも早く

エレノアさんがワイアットに近づいて、

「……地面に置け」と指示し、

魚の魔物を、安全に処理していた。


釣り針から、魔物を外して、

エレノアさんがワイアットの入れ物へ、

入れてあげている。


ワイアットは、恐る恐る入れ物をのぞいていたが、

死んでいるのを確認すると、ほっとしたように息を吐いて、

エレノアさんに「ありがとうございます!」とお礼をいってから、

また釣り始めた。


それから、ぼちぼちと魔物が釣れるが、

怪我することなく、処理されている。


アルトが釣った魔物に、

アリアケが火の魔法を使ってしまい、黒焦げにし、

アルトがプンスカと怒っていた以外は、

平穏な時間が流れていたように思う。


そして時間になり、フィーがセセラギを抱きながら、

「終わりなのなの~」と告げたことで、

釣り大会が終わった……。


周りを見渡すと、心なしかぐったりとしている人達が多い。

あまりにも釣れすぎて、釣っているこちらの方の体力が、

削られたようだ……。

子供達も「あー……疲れた」といって座り込んでいた。

それでも、終了の合図があるまで釣り続けたのだから、

すごいと思う。


黒達が、座り込んでいる人達に声をかけながら、

僕の方へ集まってきた。


「セツナよー。数を数えるだけで大変そうだ」


バルタスさんが苦笑しながら、頭をかいている。


「正直、ここまで釣れるとは思わなかったわけ……」


眉間にしわを寄せ、

腕が痛いといいながら、サフィールさんがため息をついた。


「……問題は、この大量の魚をどうするかだな」


エレノアさんの言葉に、僕はニールさんから聞いたことを伝えた。


「それでいいのか?

 かなりの量になると思うが?」


アギトさんが、バルタスさんに視線を向けると、

彼はとてもいい笑顔で頷いていた。



魚の数を各々で数えていく作業が始まった。

数え終わったら、紙に釣った魚の数を記し、

サーラさんに渡す。


サーラさんが、その紙を見て1位から3位を、

紙に書き出してくれることになっていた。


次に、その中から一番大きな魚を選び、

クリスさん達の所へと持っていくと、

魚の全長を測るフィッシングメジャーで、

測定し記録してくれる。


これで、あとは結果を待つだけなのだが、

釣り大会の結果は、夕食時に発表することになっている。

釣り上げた魚の数の勝者は、まだわからないが、

魚の大きさの方はもう、結果がでている。


ダントツでクリスさんが、大物を釣り上げていたからだ。

クリスさんは釣りの大会をするといったときから、

アルトよりも、念入りに、

そして真剣に準備をしていたようなので、

必然といえば必然なのかもしれない……。


皆の測定が終わり次第、

魚をさばいて食べることになっていたのだが、

予定が少し変わった。


アルトが魚拓を取り始めたことで、

今日の記念にと、測定が終わった人から、

魚拓を取っていくことになったからだ。


魚拓を取り終わり、魚の顔が怖いであるとか、

尾鰭の形が面白いだとか、和気藹々と語り、

魚図鑑を広げながら、自分が釣った魚の種類を調べ、

今日の日付と一緒に、魚拓を取った紙に記入していっている。


僕もアルト達と一緒に、魚拓を取った紙に、

魚の種類と日付を記していった。

アルト達は、釣り大会の感想なども書き込んでいる。


アルトが僕に完成したものを見せてくれたので、

楽しく読んでから、紙が劣化しないように保存の魔法をかけた。


魚拓から顔を上げて、アルトに返すと、

クロージャ達が照れながら「俺のも見て欲しい」と手渡してくれる。

身振り手振りで、釣り上げたときの感想を聞きながら、

全員の魚拓を見せてもらい、そして僕は紙に魔法をかけた。


僕と子供達のやり取りを見て、

大人達も二言三言、今日の感想を書いているようだ。


そして、各々が魚拓を見せ合っているのを見て、

アギトさんがサフィールさんに何かを話し、

その話を聞いたサフィールさんが、頷いた。


アギトさんが、家の方へと歩いていき、

サフィールさんは、酒肴にいる、土使いを呼びつけた。

そして、細かく指定しながら、

土の魔法を使わせると、つるりとした白い土の壁が完成していた。

アギトさんは手に何かを持って、戻ってきている。


「魚拓をここに展示していくわけ」


そういって、サフィールさんとアギトさんが、

自分の魚拓を押しピンのようなもので、固定した。

あれこれと指示していたのは、

紙が土で汚れないようにするためだったようだ。

アギトさんは、

魚拓を止めるものを取りにいっていたのだろう。


白い土の壁に貼られた魚拓の数々……。

展示された魚拓の前で、自慢したり、

感想に感想をいっていたりと、

楽しそうな声で溢れかえっている。


僕も魚拓にそえられている感想を読んでいると、

サーラさんがそっと僕のそばにきた。


「セツナ君は感想を書かなかったの?」


「そうですね……僕も何か書こうかな?」


「あとで見返したときに、いい想い出になるわよ」


サーラさんにそういわれて、魚拓の紙を土壁から外し、

感想を一言付け足し、元の場所へと張り直した。


「セツナ君らしい、感想ね」そういってサーラさんが笑った。

彼女が笑っているのを見て気になったのか、

エレノアさんもそばにきて、僕の魚拓を見た。

そして、サーラさんとと同じように、

「……セツナらしい」と笑っていたのだった。



釣り大会が一段落し、次にどの魚を食べるかの選定に入っている。

アルトの表情は真剣そのもので、魚図鑑と魔物図鑑で、

釣った魚を照らし合わせながら、吟味していた。

今のアルトに声をかけるものは誰もいない……。


セイル達やロイール達も、酒肴の人達に意見をもらいながら、

食べる魚を選んでいる。

彼らの希望は「できるだけ小さくて、美味しい魚」らしい。

切実なその願いに、ダウロさんとカルロさんが、

「一番美味い魚を選べ、食べることができない分は、

みんなが食べるから」といって、子供達のあたまをなでていた。


ちなみにアルトは大きさなど関係なく、

一番美味しくて珍しい魚を選ぶと話している……。


それぞれが、楽しそうに食べる魚を選んでいるなか、

僕は、使い魔達が魚を選ぶのを待っていた……。

僕が釣り上げた魚を、アリアケ達が興味深そうに、

見つめていたので、食べるか聞いてみたら、

ギルスやヴァーシィルもそばにきて選び始めたからだ。


今までより積極的な面は、

子供達の魂の影響だろうか……。


セセラギは釣り大会が終わるまで、

待てをすることができていたので、

ご褒美として、小魚を先に渡している。


まぁ、それでも、シノノメ達と一緒に、

入れ物をのぞいているので、

まだ食べるつもりでいるのだろう。


食べる魚を選び終わったら人から、

刺身にするのか、焼くのかを選択して、

酒肴のメンバーへと渡していく。


すると、彼らはその場でさばき、

注文通りに料理して手渡してくれるのだ。


僕は刺身で、セセラギ以外の使い魔達の分は焼いてもらう。

アルトもジャネット達も、無事に食べる魚が決まったようで、

嬉しそうにしながら、魚を焼いてもらっていた。


使い魔達に囲まれながら、魚を食べていると、

アルト達がお皿を片手にこちらへとくる。


僕が食べている刺身を見て、

アルトが「師匠、一口欲しい!」というので、

「みんなもどうぞ」といって、お皿を差し出すと、

それぞれが一切れずつ取って食べていた。


「なんか口の中で溶けた! 美味しい!」


アルトに同意するように、ミッシェルが頷いた。


「お刺身より、焼き魚の方が好きだけど、

 このお魚はお刺身でも美味しいね」


「うん、美味しい」


エミリアがジャネットと顔を見合わせて、笑いあっている。


そんな子供達の様子に、魚の味が気になったのか、

フリードさんがチラリとこちらを見て、

魚が並べられている机の方へと歩いていった。


僕の魚もそこそこ大きい魚だったので、

半分は食べたい人が食べることができるように、

机の上に置いてきたので、取りにいったのだろう。

クリスさんの魚も刺身にされていたので、

僕も少しもらってきている。


「フリード、俺っちにも!」


「フリード、僕の分もお願い」


エリオさんとセルユさんに、

声をかけられ、一瞬嫌そうな視線を二人向けてから、

フリードさんが、渋々と頷いてた。


アルト達が刺身を気に入ったようなので。

刺身が盛ってあるお皿を、全員が食べやすい位置に置く。

すると、アルト達も「師匠も食べて!」といって、

自分達のお皿をその横に並べてくれた。


並べられた魚を、みんなで少しずつ味見しながら、

どれが美味しいかで盛り上がり、

自分が釣った魚が一番だという結論に落ち着いた。


お皿の上の料理が綺麗になくなり、

お腹が少し満たされたからか、

エミリア達が眠そうに目をこすりだす。


しかし、それは、彼女達だけではなく、

セイル達も欠伸を堪えているようだった。


朝早くから動いていたし、

釣り大会もかなり体力勝負だったため、

疲れたのだろう。眠くなるのは自然なことだ。


「みんな、少し昼寝するといいよ」


鞄から毛布を取りだして、渡そうとするが、

誰も受け取ろうとしない。

明らかに眠そうにしているのに、

昼寝をするのが嫌なようだ。


それならそれでいいと思い、

毛布を鞄にしまおうとしたとき、

小さな声が耳に届いた。


「寝てしまったら、時間が短くなるもの」


唇をきゅっと噛みしめてから、

ミッシェルが俯いてそう呟く。


何の時間が短くなるのかなんて、聞かなくてもわかる。

ロイールやクロージャ達の表情から、

その想いは彼女だけのものではないことがわかった。


「……」


そんな友達達の様子を、

アルトは静かな眼差しで見つめていた……。


「今日は、一晩中語り明かすんだよね?」


そう語りかけると、

ワイアット達が俯きながらも小さく頷く。


「このままだと、夜がきたら、

 すぐに眠くなって、寝てしまうよ」


僕の言葉に、ハッとしたように皆が顔をあげた。


「長く起きて、話していられるように、

 体力を回復する魔法をかけてあげるから、

 今は少し、休息を取るといいよ……」


僕は、セイル達が頷くのを見てから、

一人一人頭をなでて魔法をかけていく。

魔法をかけられた子供から、ゆっくりと横になって、

あらがうことなく眠りに落ちていった。


子供達に毛布を掛けてから、アルトに話しかける。


「アルトはどうする?」


「……」


アルトはじっと、クロージャ達を見つめていたが、

僕と目をあわせる前に、

何度か瞬きをして目に浮かんだ涙を散らしていた。


僕はアルトの頭をそっとなでて、魔法をかける。


「アルトもお休み。

 起きたら、また、みんなと遊べるから」


「……」


アルトは、黙ったまま頷いた。

横になって眠りについたアルトを慰めるように、

使い魔達がアルトにくっついて一緒に眠る。


そんなアルトや子供達の頭をセリアさんが、

子供達の憂いを慰めるように、

順番に優しくなでていくのだった……。



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挿絵(By みてみん)




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2025年3月5日にドラゴンノベルス様より
『刹那の風景6 : 暁 』が刊行されました。
活動報告
詳しくは上記の活動報告を見ていただけると嬉しいです。



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