『 釣り大会』
【 セツナ 】
食べ過ぎで動けなくなった子供達に、
消化剤を渡し、今はこれ以上食べないようにと伝えた。
悲しい顔で頷かれるのは、正直心が痛いけど、
こればかりは仕方がない。
そもそも、アルトとエリオさんの、
食べる量がおかしいのだ。
子供達は薬を飲んでましになったようだが、
まだ、少し顔色が悪いため、
大きなクッションの上で横になっている。
彼らのそばには、
トッシュさんとシャンテルさんが、ついていてくれる。
動きたいのに動けない子供達が気の毒なので、
使い魔達に一緒にいてあげて欲しいとお願いしたら、
ナキルさんやケニスさん、
カルロさん達もそちらへと合流し、
使い魔達をかまい倒していた……。
カルロさんは時々、
アリアケとシノノメに突かれているが、
それも楽しそうにしている……。
僕はといえば、
アルトとエリオさんが、料理を食べるのを眺めながら、
ヤトさんとリオウさんと話していた。
オウカさん達は、一足早く食事を食べ終わり、
夕方にまたくるといって、帰っていった。
「セツナは、
セリアさんからの依頼が終わったらどうするの?」
リオウさんの言葉に、
エリオさんの食べる手が一瞬止まるが、
すぐにまた、手を動かす。
「まだ、決めていませんが、
どうしてですか?」
「あ、あのね」
リオウさんがヤトさんをチラリと見て、
そわそわしながら続きを口にした。
「私達の結婚式に、
参加して欲しいなぁって……」
「日取りが決まったんですか?」
「いや、まだ決まっていない」
僕の問いに、ヤトさんが苦笑しながら、
リオウさんを見て、僕を見た。
「だが、セツナには、
招待したいということを、伝えておいた方がいいと、
思ったからな」
「セツナが音信不通になると、
私達じゃ探しようがないから」
「……できるだけ、ギルドによるつもりですし、
ハルには、トキアとギルスとヴァーシィルがいますから、
多分……音信不通にはなりませんよ」
「そうだといいが」
「そうだといいけどね」
「……」
あまり信じていないような感じで、
声を揃えて返事をする二人に、
僕はそれ以上何もいわなかった。
そろそろ戻る時間だということで、
二人は「美味しかった」といって戻っていった。
ヤトさん達を見送ったあと、
視線を感じてそちらに向くと、
エリオさんが僕を見ていたが、
諦めたように首を横に振ってから、
エレノアさん達と話している、セリアさんを見て、
色々と飲み込んでいた……。
アルトとエリオさんが、何回目かのお代わりにいき、
一人でお酒を飲み、料理を食べていると、
バルタスさんが、料理とお酒を手にしてこちらにきた。
「おう、セツナよ。ちゃんと食ってるか?」
「はい。美味しい料理をありがとうございます」
「いや、素材がいいと料理も美味くなる。
それも、ちょっとやそっとでは、
手に入らないものばかりだしな」
バルタスさんがそういって笑い、
持ってきた料理を食べ始める。
「あ、バルタスさん」
お皿に山盛りに料理を盛ってアルトが戻ってきた。
「しっかり食ってるようだな、アルト」
「うん。これで、最後」
「最後?」
「今並べられている料理を、制覇した!」
「……」
「……」
楽しそうにそう語るアルトに、
僕とバルタスさんは無言になった。
普通に考えると、昼だけで制覇できる品数ではなかった。
「俺っちも、これで制覇っしょ!」
アルトに遅れて、エリオさんも山盛りのお皿を机の上に置いた。
「二人とも、釣った魚は食わんのか?」
「食べる」
「食べるっしょ?」
「いや、もういい」
不思議そうに首をかしげた二人に、
バルタスさんは手を軽く振って話を切った。
しばらく食べることに集中していたが、
アルトがバルタスさんを見て、口を開いた。
「バルタスさん」
「どうした」
「今残っている料理で、
お弁当ってつくれる?」
「……つくれるが、
食いたくなったら、好きなときに食わんか」
「俺じゃなくて、クロージャ達が可哀想だから」
アルトが耳をぺたりと寝かせてそういった。
「今回の料理は、
師匠が狩らないと食べれないものが多いでしょう?」
「あー……。確かそうだな」
「お弁当にして、保存庫に入れておいたら、
悪くならないし、家に持って帰って、
お腹がすいたときに、食べたらいいと思ったんだ」
バルタスさんが僕を見る。
ダルクテウスやアルグギアーレは、
僕が狩ったものだからだろう。
「ミッシェル達の、食べたいのに食べることができない、
という悲しそうな表情は、胸にくるものがあったので、
僕としては、アルトの提案に賛成なのですが、
酒肴の人達は大変じゃないですか?」
「いやぁ、わしもセツナと同じことを思った。
わしらは、料理を作ることと、食べること、
そして食わせることが、生きがいだからな、
大変だと思ったことは、あまりない。
それに、今回は残った料理を詰めるだけだからなあ」
楽しそうにそういって、豪快に笑うバルタスさんを、
アルトがじっと見つめている。
「どうした、アルト」
「なんでもない」
「そうか?」
「うん」
アルトが何を気にして、バルタスさんを見ていたのかは、
わからなかった。だけど、アルトが話そうとしないので、
バルタスさんは、それ以上なにも聞かなかった。
「釣り大会だ!
優勝するぞ!」
「おー」
アルトの元気な声に、
体調が戻った子供達が、釣り竿を握って、
楽しそうに応えている。
釣り大会には、ほぼ全員が参加することになった。
優勝賞品もあるので、気合いが入っているようだ。
大会の内容は、チーム戦と個人戦で争うことになった。
両方とも、1位から3位までが賞品を手にすることができる。
チーム戦は5人で1チーム。チーム分けは……。
クリスさんチームは、
アギトさん、サフィールさん、クリスさん、エリオさん、ビート。
アルトチームは、
アルト、クロージャ、セイル、ワイアット、ロイール。
ミッシェルチームは、
ナキルさん、ケニスさん、ミッシェル、エミリア、ジャネット。
ジゲルさんチームは、
ジゲルさん、ロガンさん、トッシュさん、シャンテルさん、僕。
そして、剣と盾のチームと、
酒肴の1番隊から5番隊のチームとで競われる。
勝敗の決め方は二つ。
個人戦は、誰よりも沢山釣った人と
一番大きな魚を釣った人になって、
チーム戦は、釣った魚の数になった。
制限時間は、50分。
チーム戦でもあり、個人戦でもあるので、
釣る場所は各人の自由となっている。
チームで固まる必要はない。
魔物が釣れることもあるため、
子供達のそばには、セセラギ以外の使い魔をそばに置いた。
魚を釣り始めれば、セセラギは絶対に、
じっとしていないことが予想できるため、
サーラさんと一緒に、待てと命じて待機させている……。
時折、思い出したように、
キュウキュウと鳴いているが、
サーラさんがマグロを与えると、すぐに静かになっていた。
各々の釣り竿には、正直、何が釣れるかわからないので、
糸が切れたりしないように、僕が魔法をかけてある。
落ちないようにもしているので、釣り上げたときにさえ気を付ければ、
さほど、危険はないだろう。
大会に参加しない、フィーが、
「釣り大会開始なのなの~」と、
ちょっと、気が抜ける合図をしたことで、
釣り大会の火蓋が切られた。
子供達が一斉に走り出し、
続いて、酒肴の人達も走り出す。
釣る場所はかなり広く作ってあるが、
それぞれが釣りやすいと思う場所を、
あらかじめ決めていたのだろう、
一目散に走っていく。
僕も良さそうなところを探して、
釣りを開始した。海釣りは初めてなので、
カイルの記憶を頼りに、色々と準備はしていたが、
餌をつけて、投げ入れると、すぐに魚が食いつく。
これは……あれだ。
入れ食い状態というやつではないだろうか……。
それは僕だけではなく、周りもそうなので、
あちらこちらで、嬉しそうな声が上がっている。
初めて、釣りをするといった人達も、
餌をつけて入れると釣れるので、楽しんでいるみたいだ。
まぁ、釣れないよりは釣れる方がいいとは思うんだけど、
この調子で釣れるとしたら、かなりの魚が釣れることになる。
「これ、消費できるのかな……?」
思わず、ぼそっと呟いた僕に、
隣で釣っていたニールさんが、
「食べきれない分は、酒肴で買い取る」といって、
ニヤリと笑った。
どうやら、酒肴のチームでは、
食べきれない分は、酒肴の店で提供しようと決めているようだ。
「それなら、どれだけ釣り上げても、
大丈夫そうですね」
「確かにそうだが……
釣った魚が、入れ物に入らなくなる方が先じゃないか?」
「……」
釣り大会が開始して、まだ20分ぐらいしか経っていない。
かなり大きい入れ物を用意したのだけど、間に合いそうにない。
僕は、ギルスを呼びその背に、折りたたみ式の入れ物を乗せて、
必要な人に配って欲しいとお願いした。
僕のお願いにギルスが、
魚が入れ物から、
溢れそうになっている人のところへいき、
背中から入れ物を取ってもらっていた。
「うわー、なんか変なのが釣れたぞ!」
そんな叫び声が聞こえて、そちらのほうを見ると、
ワイアットが竿を持ち上げて、
釣れたものをどうしたらいいのかと、
右往左往しているのが見えた。
シノノメがそばにいこうと、
とてとてと走っているが、それよりも早く
エレノアさんがワイアットに近づいて、
「……地面に置け」と指示し、
魚の魔物を、安全に処理していた。
釣り針から、魔物を外して、
エレノアさんがワイアットの入れ物へ、
入れてあげている。
ワイアットは、恐る恐る入れ物をのぞいていたが、
死んでいるのを確認すると、ほっとしたように息を吐いて、
エレノアさんに「ありがとうございます!」とお礼をいってから、
また釣り始めた。
それから、ぼちぼちと魔物が釣れるが、
怪我することなく、処理されている。
アルトが釣った魔物に、
アリアケが火の魔法を使ってしまい、黒焦げにし、
アルトがプンスカと怒っていた以外は、
平穏な時間が流れていたように思う。
そして時間になり、フィーがセセラギを抱きながら、
「終わりなのなの~」と告げたことで、
釣り大会が終わった……。
周りを見渡すと、心なしかぐったりとしている人達が多い。
あまりにも釣れすぎて、釣っているこちらの方の体力が、
削られたようだ……。
子供達も「あー……疲れた」といって座り込んでいた。
それでも、終了の合図があるまで釣り続けたのだから、
すごいと思う。
黒達が、座り込んでいる人達に声をかけながら、
僕の方へ集まってきた。
「セツナよー。数を数えるだけで大変そうだ」
バルタスさんが苦笑しながら、頭をかいている。
「正直、ここまで釣れるとは思わなかったわけ……」
眉間にしわを寄せ、
腕が痛いといいながら、サフィールさんがため息をついた。
「……問題は、この大量の魚をどうするかだな」
エレノアさんの言葉に、僕はニールさんから聞いたことを伝えた。
「それでいいのか?
かなりの量になると思うが?」
アギトさんが、バルタスさんに視線を向けると、
彼はとてもいい笑顔で頷いていた。
魚の数を各々で数えていく作業が始まった。
数え終わったら、紙に釣った魚の数を記し、
サーラさんに渡す。
サーラさんが、その紙を見て1位から3位を、
紙に書き出してくれることになっていた。
次に、その中から一番大きな魚を選び、
クリスさん達の所へと持っていくと、
魚の全長を測るフィッシングメジャーで、
測定し記録してくれる。
これで、あとは結果を待つだけなのだが、
釣り大会の結果は、夕食時に発表することになっている。
釣り上げた魚の数の勝者は、まだわからないが、
魚の大きさの方はもう、結果がでている。
ダントツでクリスさんが、大物を釣り上げていたからだ。
クリスさんは釣りの大会をするといったときから、
アルトよりも、念入りに、
そして真剣に準備をしていたようなので、
必然といえば必然なのかもしれない……。
皆の測定が終わり次第、
魚をさばいて食べることになっていたのだが、
予定が少し変わった。
アルトが魚拓を取り始めたことで、
今日の記念にと、測定が終わった人から、
魚拓を取っていくことになったからだ。
魚拓を取り終わり、魚の顔が怖いであるとか、
尾鰭の形が面白いだとか、和気藹々と語り、
魚図鑑を広げながら、自分が釣った魚の種類を調べ、
今日の日付と一緒に、魚拓を取った紙に記入していっている。
僕もアルト達と一緒に、魚拓を取った紙に、
魚の種類と日付を記していった。
アルト達は、釣り大会の感想なども書き込んでいる。
アルトが僕に完成したものを見せてくれたので、
楽しく読んでから、紙が劣化しないように保存の魔法をかけた。
魚拓から顔を上げて、アルトに返すと、
クロージャ達が照れながら「俺のも見て欲しい」と手渡してくれる。
身振り手振りで、釣り上げたときの感想を聞きながら、
全員の魚拓を見せてもらい、そして僕は紙に魔法をかけた。
僕と子供達のやり取りを見て、
大人達も二言三言、今日の感想を書いているようだ。
そして、各々が魚拓を見せ合っているのを見て、
アギトさんがサフィールさんに何かを話し、
その話を聞いたサフィールさんが、頷いた。
アギトさんが、家の方へと歩いていき、
サフィールさんは、酒肴にいる、土使いを呼びつけた。
そして、細かく指定しながら、
土の魔法を使わせると、つるりとした白い土の壁が完成していた。
アギトさんは手に何かを持って、戻ってきている。
「魚拓をここに展示していくわけ」
そういって、サフィールさんとアギトさんが、
自分の魚拓を押しピンのようなもので、固定した。
あれこれと指示していたのは、
紙が土で汚れないようにするためだったようだ。
アギトさんは、
魚拓を止めるものを取りにいっていたのだろう。
白い土の壁に貼られた魚拓の数々……。
展示された魚拓の前で、自慢したり、
感想に感想をいっていたりと、
楽しそうな声で溢れかえっている。
僕も魚拓にそえられている感想を読んでいると、
サーラさんがそっと僕のそばにきた。
「セツナ君は感想を書かなかったの?」
「そうですね……僕も何か書こうかな?」
「あとで見返したときに、いい想い出になるわよ」
サーラさんにそういわれて、魚拓の紙を土壁から外し、
感想を一言付け足し、元の場所へと張り直した。
「セツナ君らしい、感想ね」そういってサーラさんが笑った。
彼女が笑っているのを見て気になったのか、
エレノアさんもそばにきて、僕の魚拓を見た。
そして、サーラさんとと同じように、
「……セツナらしい」と笑っていたのだった。
釣り大会が一段落し、次にどの魚を食べるかの選定に入っている。
アルトの表情は真剣そのもので、魚図鑑と魔物図鑑で、
釣った魚を照らし合わせながら、吟味していた。
今のアルトに声をかけるものは誰もいない……。
セイル達やロイール達も、酒肴の人達に意見をもらいながら、
食べる魚を選んでいる。
彼らの希望は「できるだけ小さくて、美味しい魚」らしい。
切実なその願いに、ダウロさんとカルロさんが、
「一番美味い魚を選べ、食べることができない分は、
みんなが食べるから」といって、子供達のあたまをなでていた。
ちなみにアルトは大きさなど関係なく、
一番美味しくて珍しい魚を選ぶと話している……。
それぞれが、楽しそうに食べる魚を選んでいるなか、
僕は、使い魔達が魚を選ぶのを待っていた……。
僕が釣り上げた魚を、アリアケ達が興味深そうに、
見つめていたので、食べるか聞いてみたら、
ギルスやヴァーシィルもそばにきて選び始めたからだ。
今までより積極的な面は、
子供達の魂の影響だろうか……。
セセラギは釣り大会が終わるまで、
待てをすることができていたので、
ご褒美として、小魚を先に渡している。
まぁ、それでも、シノノメ達と一緒に、
入れ物をのぞいているので、
まだ食べるつもりでいるのだろう。
食べる魚を選び終わったら人から、
刺身にするのか、焼くのかを選択して、
酒肴のメンバーへと渡していく。
すると、彼らはその場でさばき、
注文通りに料理して手渡してくれるのだ。
僕は刺身で、セセラギ以外の使い魔達の分は焼いてもらう。
アルトもジャネット達も、無事に食べる魚が決まったようで、
嬉しそうにしながら、魚を焼いてもらっていた。
使い魔達に囲まれながら、魚を食べていると、
アルト達がお皿を片手にこちらへとくる。
僕が食べている刺身を見て、
アルトが「師匠、一口欲しい!」というので、
「みんなもどうぞ」といって、お皿を差し出すと、
それぞれが一切れずつ取って食べていた。
「なんか口の中で溶けた! 美味しい!」
アルトに同意するように、ミッシェルが頷いた。
「お刺身より、焼き魚の方が好きだけど、
このお魚はお刺身でも美味しいね」
「うん、美味しい」
エミリアがジャネットと顔を見合わせて、笑いあっている。
そんな子供達の様子に、魚の味が気になったのか、
フリードさんがチラリとこちらを見て、
魚が並べられている机の方へと歩いていった。
僕の魚もそこそこ大きい魚だったので、
半分は食べたい人が食べることができるように、
机の上に置いてきたので、取りにいったのだろう。
クリスさんの魚も刺身にされていたので、
僕も少しもらってきている。
「フリード、俺っちにも!」
「フリード、僕の分もお願い」
エリオさんとセルユさんに、
声をかけられ、一瞬嫌そうな視線を二人向けてから、
フリードさんが、渋々と頷いてた。
アルト達が刺身を気に入ったようなので。
刺身が盛ってあるお皿を、全員が食べやすい位置に置く。
すると、アルト達も「師匠も食べて!」といって、
自分達のお皿をその横に並べてくれた。
並べられた魚を、みんなで少しずつ味見しながら、
どれが美味しいかで盛り上がり、
自分が釣った魚が一番だという結論に落ち着いた。
お皿の上の料理が綺麗になくなり、
お腹が少し満たされたからか、
エミリア達が眠そうに目をこすりだす。
しかし、それは、彼女達だけではなく、
セイル達も欠伸を堪えているようだった。
朝早くから動いていたし、
釣り大会もかなり体力勝負だったため、
疲れたのだろう。眠くなるのは自然なことだ。
「みんな、少し昼寝するといいよ」
鞄から毛布を取りだして、渡そうとするが、
誰も受け取ろうとしない。
明らかに眠そうにしているのに、
昼寝をするのが嫌なようだ。
それならそれでいいと思い、
毛布を鞄にしまおうとしたとき、
小さな声が耳に届いた。
「寝てしまったら、時間が短くなるもの」
唇をきゅっと噛みしめてから、
ミッシェルが俯いてそう呟く。
何の時間が短くなるのかなんて、聞かなくてもわかる。
ロイールやクロージャ達の表情から、
その想いは彼女だけのものではないことがわかった。
「……」
そんな友達達の様子を、
アルトは静かな眼差しで見つめていた……。
「今日は、一晩中語り明かすんだよね?」
そう語りかけると、
ワイアット達が俯きながらも小さく頷く。
「このままだと、夜がきたら、
すぐに眠くなって、寝てしまうよ」
僕の言葉に、ハッとしたように皆が顔をあげた。
「長く起きて、話していられるように、
体力を回復する魔法をかけてあげるから、
今は少し、休息を取るといいよ……」
僕は、セイル達が頷くのを見てから、
一人一人頭をなでて魔法をかけていく。
魔法をかけられた子供から、ゆっくりと横になって、
あらがうことなく眠りに落ちていった。
子供達に毛布を掛けてから、アルトに話しかける。
「アルトはどうする?」
「……」
アルトはじっと、クロージャ達を見つめていたが、
僕と目をあわせる前に、
何度か瞬きをして目に浮かんだ涙を散らしていた。
僕はアルトの頭をそっとなでて、魔法をかける。
「アルトもお休み。
起きたら、また、みんなと遊べるから」
「……」
アルトは、黙ったまま頷いた。
横になって眠りについたアルトを慰めるように、
使い魔達がアルトにくっついて一緒に眠る。
そんなアルトや子供達の頭をセリアさんが、
子供達の憂いを慰めるように、
順番に優しくなでていくのだった……。





