『 おくりもの 』
【 クロージャ 】
妙な生き物と視線を合わせながら、
言い聞かせるように叱っているアルトを、
俺達は黙って眺めていた。
あの生き物の名前がセセラギなのだろうか?
アルトが何かいえば、抱かれている生き物が、
「う゛ぅーん」といっている。
さっき微かに聞こえたものと同じだ。
なにか文句をいっているようにきこえ、
それはまるで、アルトと会話しているように思えた。
それからしばらくして、
少し疲れた表情を見せながら、
アルトが鞄から何かを取りだした。
「師匠のいうことを聞いて、
最初からつけておけばよかった……」
アルトがそう呟き、ため息をついてから、
謎の生き物に何かを着せる、
そして、その何かに紐を繋げていた。
その生き物はとくに暴れることなく、
大人しくされるがままになっている。
やっと一段落ついたのか、
アルトが俺達の方へと視線を向けて、
「待たせてごめん」と、
苦笑しながら謝ったのだった。
アルトの話を聞くために、
秘密基地内に戻り、いつものようにそれぞれが、
好きな場所へと座って、持ってきたお菓子を並べていく。
アルトは人数分のカップと水筒を取りだしていた。
「今日は何を持ってきたの?」
ミッシェルが、自分で焼いたといっていたクッキーを、
並べながら聞いた。
「檸檬の果実水の中に、
フェルドワイスの蜂蜜を入れたやつ」
フェルドワイスの蜂蜜は凄く高価な蜂蜜だ。
俺達が簡単に口にできるようなものではない。
まぁ、その蜂蜜だけで作られた飴を、
沢山もらったわけだけど……。
精霊様へのお礼に、
フェルドワイスの蜂蜜を採取してきたセツナさんは、
その余った蜂蜜を、スクリアロークスと同じように、
紅茶に蜂蜜を入れたものと、果実水に蜂蜜を入れたもの、
2種類を用意して、ハルの住人に贈ってくれた。
他国の人や冒険者達には格安で販売されたようで、
露店にはかなりの行列ができていたと、
姉貴達が話していた。
商人達が目の色を変えて、ギルドに蜂蜜を売ってくれと、
押し寄せたことも話題になっていた。
「あ、紅茶が飲めない人に用意されたもの?」
「そうそう」
「わー、私も飲んでみたかったの」
手をパチンと合わせて、嬉しそうにミッシェルが笑う。
「うん、ミッシェルが残念そうにしてたから、
作ってもらった」
「ありがとう!」
「どういたしまして」
準備が整い、普段なら食べながら話し始めるのだが、
みんなの視線が、アルトの隣にいる謎の生き物に注がれる。
アルトはみんなの眼差しが、隣に向いていることに気付き、
謎の生き物を抱き上げて俺達に紹介してくれた。
「名前はセセラギ、
師匠の使い魔ということになってる」
「どういう意味だ?」
「本当は話してはいけないことなんだ。
でも……俺はセセラギのことを、
クロージャ達に知って欲しいと思った。
だから、風の精霊に少しだけ本当のことを伝えてもいいか聞いた」
風の精霊様に許可を貰わなければ話せない内容だといわれ、
皆が緊張した表情を浮かべた。
「……いいといってくれたのか?」
俺の問いにアルトが頷く。
「全部は話せない。
そして、これから俺が話すことを、
誰にもいってはいけない。それでも、俺の話を聞く?」
「アルトは俺達に知っていて欲しいと思ったんだろう?」
「うん」
「俺達が絶対に話さないと信じているから、
風の精霊様に許可を貰ってくれたんだろう?」
「そうだよ」
「なら、答えは一つしかない。
その信頼に応えるのが親友なんだから」
俺に同意するように、全員が真剣な顔でアルトを見て頷いた。
「ありがとう」
そういって嬉しそうにアルトが笑って、
セセラギを膝の上にのせてから話し始めた。
「古代神樹が精霊に守られていたという話を、
覚えているよね?」
アルトの確認に全員が頷く。
「古代神樹は精霊達の強固な結界に守られて、
長い時を過ごしていたらしいんだ。
その理由は教えてもらえなかったけど、
そのときにこの子がいることに気付かないで、
一緒に閉じ込めちゃったようなんだ」
「この子だけ?」
「そう」
ミッシェルが眉根を下げながら、セセラギを見た。
ミッシェルが落ち込んだ様子を見せたからか、
デスが慰めるように彼女の頭を撫でている。
「それは寂しいね」
「可哀想……」
エミリアとジャネットが同時に口を開く。
「うん。だから、セセラギと同じ生き物は、
どこを探してもいない」
「……」
全員の視線がアルトからセセラギへと向けられた。
「ああ、だからセツナさんの使い魔ということにしたんだな。
セセラギを守るために」
「うん、そう。
昨日から、セセラギは俺の友達で家族になったんだ」
「どうして俺達に話そうと思ったんだ?
別に話さなくても困らなかっただろう?」
セイルが首をかしげてアルトを見る。
「セセラギは生きていて、
デスやララーベリルと同じように、
人の話すことを理解できるんだ」
アルトがそういうと、
セセラギが話しかけるように、
「うにゃうにゃ」とアルトに何かをいっていた。
「アルトはセセラギが話している言葉がわかるのか?」
「わからない。わからないけど、嬉しいとか、
楽しいとか、不満に思っているとか、
怒っているとか簡単な感情はわかる。
ミッシェルもデスが何を伝えたいのか、
なんとなくわかるでしょう?」
「うん。わかるよ」
「そっか、そういえば俺もなんとなく、
ララーベリルの気持ちがわかる」
「それと同じ。
師匠が『これまでの使い魔は、基本僕の命令で動いていたけれど、
この子は違う、自分で考え自分で行動すると思うから、
危ないことをしそうになったら、止めてあげてね』といっていたんだ」
「……」
「もし、俺が何もいわずにいたら、
セイル達はセセラギを使い魔だと思っていたはずだ。
だから、セセラギが危険なことをしていても、
師匠の使い魔だから何か理由があるんだと考えて、
止めようと思わないでしょう?」
「いわれてみればそうかもしれない」
セイルが納得したように頷く。
「セセラギは使い魔じゃない。
好きなものがあって、嫌いなものもある。
楽しいと喜ぶ。痛みも感じるらしい。
自分の感情を持っているから、文句をいうし、
不満そうに鳴いたりもする」
まだ「うにゃうにゃ」といっているセセラギの頭を、
アルトがそっと撫でた。
「普通の動物と同じ、命ある生き物なんだ。
だから、俺が話さなかったことで、
セセラギが怪我をしたり、命を落としたりするのが怖いと思った」
「アルト……」
「使い魔じゃないと知っていたら、
セセラギが危険なことをしようとしていたら、
セイル達は止めようとしてくれるでしょう?」
「当たり前だろう」
「だから、俺は風の精霊に話していいか聞いたんだ」
アルトの説明に、みんなが「なるほど」と首を縦に振っていた。
「わかった。俺もセセラギを気にかけておくな。
危ないことしたら、必ず止める」
セイルの言葉を皮切りに、
全員がアルトに似たようなことを伝えていた。
勿論、俺もその一人だ。
「うん! ありがとう」
「キュアァ」
自分の話が終わったことを理解しているのか、
セセラギが体を伸ばして、甘えるように、
自分の頭をアルトの顔にくっつけていた。
「可愛い!」
その姿を見て、ミッシェルが目をキラキラさせて、
セセラギを見ている。
「セセラギ、ここにいる全員、俺の友達だ。
将来俺達の家族になるメンバーだよ」
そういってセセラギに俺達を紹介してくれた。
セセラギはやっぱり「うにゃうにゃ」と、
何かを話していたけれど、
何を話しているのかはわからない。
ただ、セセラギはアルトから離れ、
一人一人の膝の上に乗ってきて、
頭を俺達の頬にくっつけてくれた。
その仕草に、その可愛さに、
ミッシェルとエミリアとジャネットは、
魅了されてしまったのだろう……。
セセラギを中心に3人で盛り上がり、
セセラギを離そうとしなかった……。
ミッシェルの頭の上にいるデスが、面白くなさそうに、
ミッシェルの頭をポフポフと、叩いているのが面白い。
もしかすると、セセラギに嫉妬しているのかもしれない。
アルトは苦笑を浮かべながら、
「こうなると思った」といって、
お菓子を食べ始め、俺達もお菓子に手を伸ばしながら、
アルトと話し始める。
女の子達の笑う声につられて時々視線を向け、
話を振られたら言葉を返し、
また、自分達の話に戻る。
そんな感じで、それぞれが楽しい時間を過ごしていた。
「これからどうする?」
大方お菓子を食べ終わり、ロイールが俺達に聞いた。
「俺はみんなで露店を見て回りたいと思ってた」
ロイールにそう返事をすると、アルトも頷いてくれる。
「なら、昼食は露店で食べるか?」
「俺達はそのつもりでいる。ロイールとアルトは?」
「クロージャ達に合わせようと思っていたから、
どちらでも大丈夫」
「俺もアルトと同じだな」
ロイールとアルトの返事を聞いたあと、
女の子達の方へ顔を向ける。
「ミッシェルはどうする?」
「私もみんなに合わせるよ」
もっとかまえと文句をいっているデスをなだめながら、
ミッシェルが答える。
「なら、露店を見て回りながら好きな物を食べるか」
「何を食おうかな、
セツナさん達のおかげで小遣いが減らなかったから、
好きな物が食える」
ワイアットがそういって笑う。
催し中ずっとセツナさん達が俺達の食事も用意してくれていた。
アルトが目についた食べ物を、
次から次へと遠慮することなく、
購入していくのには驚いたけど、しばらくすると慣れていた。
絶対に食べきれないと思ったのに、
アルトとエリオさんと酒肴の人達で、
あまりそうな料理を全部平らげていた……。
正直、今でもあれは夢だったかもしれないと思っている。
「昼食はそれでいいとして、
絶対に買っておきたい物とか、
見ておきたい物とかは?」
俺の問いに、ロイールとミッシェル以外が首を横に振る。
「ロイールとミッシェルは、
何か買いたい物があるの?」
アルトの問いに、
ミッシェルが先にどうぞというように、ロイールを見た。
「俺は日記帳が欲しい」
「日記帳? 日記は書かないっていっていたのに?」
「そう思っていたんだけどな。
忘れたくないことが沢山あって、
覚えていられる自信がないから、
兄貴に相談したら、日記をつけろといわれたんだ」
「そうなんだ」
「あと、暁の風に入ったら、
セツナさんに活動報告を見せることになるだろ?
日記をつけて、文章を書く練習をしろって」
そういえば……。
ロガンさんがそんなことを話していたなと思い出した。
ワイアットもセイルも思い出したのか二人とも、
「俺も日記帳を買おう」と肩を落としながら呟いていた。
「ミッシェルは?」
アルトがカップを机の上に置きながら、
ミッシェルに顔を向ける。
「私はアルトに渡す贈り物を、買いたいと思って」
「え?」
「……元気でハルにまた帰ってこれるように、
それから、どこにいっても、
私達のことを思い出してくれるような物を、
アルトに渡したいなって」
真面目な顔でミッシェルがアルトと視線を合わせた。
「……」
アルトは心の底から驚いたというように目を見張って、
ミッシェルを見つめている。
そんなアルトに彼女は息を飲んで、少しだけ寂しそうに笑った。
「私の花時計とか、ジャネットの櫛とか、セイルの時計とかと同じ。
大切な人の無事を祈って贈り物を渡すことは、
特別なことじゃないんだよ」
ああ、そうか。そうだったのか……。
アルトが驚いた理由がミッシェルの説明でわかる。
彼女が寂しそうに笑った理由も……。
アルトはそういった贈り物を、
あまり貰ったことがなかったのかもしれない。
ずっと、セツナさんと旅していたから。
「それ、俺達も考えてた。
みんなと別れてから選ぶ予定だった」
「俺達も同じだな、アルトに内緒にして、
旅立つ前に渡そうと思ってたのにさ」
ロイールとセイルが苦笑しながら、
計画していたことを話した。
「アルトの驚く顔を見る予定だったのに」
「うんうん」
エミリアとジャネットが笑いながら、
ミッシェルに文句をいっている。
「あ、ごめんね。
私は、アルトが欲しい物を贈りたかったから」
「俺も、アルトが欲しい物を選べばいいと思うけどな」
謝るミッシェルにワイアットがそう告げると、
ロイールも頷きながら「気にしてないと」笑う。
「みんな考えることは、同じだったということだな、
アルトの贈り物を探しながら、日記帳も探すでいいよな?」
俺が話をまとめると「そうしよう」とみんなが同意した。
「……アルト?」
アルトにもそれでいいかと尋ねるために、
隣に座っているアルトをみて驚く。
それは俺だけではなくみんなも同じだった。
涙を落としていたから。
アルトが瞬きもせず……静かに涙を落としていた。
いつもと同じように、唯々喜んでくれると思っていた。
「ありがとう」や「嬉しい」といった言葉が、
紡がれると思ってた。
なのに……アルトは表情をそぎ落としたような顔で、
泣いていたんだ。そして、俯き俺達の知らない言葉で、
小さく何かを呟いていた。
『…… …… …… …… …… …… 』
何を呟いたのか知りたくて、声をかけようとするが、
その前にアルトが顔を上げて俺達、
一人一人の顔を記憶に焼き付けるように見つめていったあと、
アルトは柔らかく笑って口を開いた。
「ミッシェル達の気持ちは嬉しいけど、
それなら俺は……全員で同じ物を持ちたい」
機嫌良く尻尾を揺らし、
ふんわりとした耳を動かす様子をみて、俺達の緊張が解けた。
「お揃いの持ち物、いいんじゃないか?」
ワイアットが頭をかきながらそういうと、
ロイールが「戦闘の邪魔にならない物がいいな」と告げた。
その言葉から、エミリアが「邪魔にならない物」と呟き、
ジャネットが「首にかけられる物は?」と提案する。
「アルトはチームのドッグタグを持っているだろう?」
俺の確認ともいえる質問にアルトが頷いて、
首にかけてある鎖を引っ張り見せてくれる。
「じゃあ、鎖に通せる何かを探してみる?
それなら、私達も緊急用の魔導具の首飾りに、
つけることができるし」
ミッシェルがセセラギとデスを同時に撫でながら、
俺達を見た。緊急用の魔導具は、
あの一件以来、外にでるときは必ず身につけることにしていた。
どこにいても自分の居場所がばれるというのは、
正直抵抗があったけれど、リオウさんが、
「魔導具に刻まれている魔法が発動しない限り、
居場所を特定することはない」と教えてくれた。
「子供の行動を四六時中監視する暇な人間などいない」と、
呆れたように話していたんだ……。
最初はでかけるときだけつけていたけれど、
段々と面倒くさくなってきて、
最近は外すのを忘れることも多い。
「第一候補はそれにして、
それよりもいいものがあったら、
考えるということにするか」
俺の言葉に皆が頷いて、これからの予定が決まった。
「昼食までまだ時間があるけど、どうする?」
「ここにいても暇だし、露店を見にいこうぜ」
そういって、セイルが食べたものを片付け始めたので、
片付けが終わり次第露店を見て回ることになった。
「そういえば、ギルスとヴァーシィルはどうしたの?」
生き物が好きなミッシェルがアルトに問いかける。
「ギルス達は精霊に頼まれて、
古代神樹の護りにつくことになった」
「え?」
片付けていたみんなの手が止まり、アルトを凝視する。
「2匹はハルに残ることになったんだ」
「寂しくないの?」
「ちょっと寂しいけど、
ギルスとヴァーシィルは師匠の使い魔だから、
いつでも呼び寄せることができるって。
それに、新しい友達も増えたから大丈夫」
「セセラギ可愛いしね」
セセラギとデスが楽しそうに遊んでいるのを見て、
ミッシェルが目を細めた。
「セセラギもなんだけど、
あと、アリアケとシノノメっていう鳥の使い魔が増えたんだ」
「えー? どうして?
ギルスとヴァーシィルが、旅にでることができないから?」
「風の精霊が師匠と一緒に、
使い魔を創ってみたかったんだって」
「……風の精霊様って自由だよね……」
ミッシェルが風の精霊様と一緒に、
行動したときのことを思い出したのか、楽しそうに笑う。
「俺もそう思う」
「優しい精霊様だよね。すっごく物知りだったし」
確かに、どこへいくのにもアルトについてきて、
俺達の知らないことを沢山教えてくれた。
わからないというと、優しくわかるように説明してくれた。
「私、風の精霊様大好き。またいつか会えるといいな」
ミッシェルが少し寂しそうな表情を浮かべて、
そう告げた瞬間……。
俺達の周りを優しい風がふわりと通り過ぎた気がした。
「……」
アルトはミッシェルの最後の言葉には返事をしなかった。
「古代神樹のそばにいったら、
ギルスとヴァーシィルに会えるの?」
蜘蛛も蛇も苦手なエミリアがアルトに尋ねる。
ミッシェルは2匹を気に入っていたから、
いつでも会えるとわかれば元気が出ると思ったのだろう。
現に、彼女は期待を込めた目をアルトに向けていた。
「……基本会えない」
「基本ってどういうことだ?」
しょんぼりとしてしまったミッシェルを横目に見て、
俺は気になった言葉を繰り返す。
「2匹は姿を隠して見えないようにするって、
師匠がいってたから」
「そうなんだ。でも、会う方法もあるんでしょう?」
ジャネットがその方法を教えて欲しいというように、声をだした。
「……本当に師匠の助けが必要なとき」
「え?」
「自分達ではどうしようもない、危機が訪れたとき」
笑みを浮かべることなく真剣に語るアルトに、俺達は息を止めた。
「魔物との戦闘中や、命に関わる依頼を受けていた場合は、
連絡ができない場合もある。
内容によっては力になれないこともある。
それでも、できる限り最善を尽くすと師匠が話していた」
誰一人、口をはさむことはない。
アルトが本当に大切なことを、
俺達に伝えているのだとわかっているから。
「クロージャ、セイル、ワイアット、ロイール、
ミッシェル、エミリア、ジャネット、忘れないで欲しい。
ギルス達は師匠の使い魔だから、師匠と繋がっている。
クロージャ達に何かあって、ギルス達に助けを求めたとき、
その声は必ず師匠に届く」
「……」
「だから、すぐに連絡がなくても、
最後の最後まで絶対に諦めないで、師匠を信じて待っていて」
アルトが俺達に伝えようとしてくれていることを、
忘れないように記憶に刻んでいく。
「それから……」
ずっとよどみなく語っていた言葉が途切れ、
思案するように俯き何かを悩んでいた。
俺達は急かすことなく、アルトが決断するのを待つ。
話すことに決めたのか、アルトがゆっくりと言葉を紡いだ。
「だけどね、覚えていて欲しいんだ。
師匠は神様じゃない。
死んだ人を蘇らせるようなことはできない。
神の理に反することはできない。
師匠は人よりも沢山のことができるけど……。
神様と同じ力は持っていない。
神様が決めた寿命を変えることはできない。
師匠は人間だから……」
話し終わり、顔を上げたアルトの表情は、
とても悲しそうで、辛そうだった。
どうして、そんな表情を浮かべるのか、
聞きたい気持ちをぐっと堪えた。
アルトが今ここで話さないということは、
話したくないことだとわかったから。
「……ギルスとヴァーシィルに、
気軽に話しにいくことはしない」
「このことも、俺達の秘密にした方がいいんだろう?」
俺の言葉に続けるように、
ワイアットがアルトに確認を取る。
「うん」
「魔物との戦闘中に、
話しかけられたら危険だよな……」
「確かに、意味のない話で気が散ると危ないよな」
ロイールがため息をつきながら思ったことを口にして、
セイルが同意するように頷く。
「デスに話しかけても大丈夫?」
「それは大丈夫」
ミッシェルの眉根を下げながらの質問に、アルトが笑う。
「じゃあ、ララーベリルも大丈夫だよね」
「ララーベリルも大丈夫?」
ジャネットとエミリアの質問にも、
アルトは「大丈夫」と同じく笑いながら頷いていたのだった。
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よろしくお願いいたします。





