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刹那の風景 第四章  作者: 緑青・薄浅黄
『 麦藁菊 : 永遠の記憶 』

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19/43

『 迷宮工師と子供達 : 後編 』

1/13に『前編』をUpしているので、そちらからご覧ください。

【 セツナ 】


「そろそろ始めようかなって」


そういって、風の精霊が立ち上がり子供達の前へと移動し目を閉じた。

風の精霊が魔法の詠唱に入り彼女の体が淡く光り出す。

精霊語で紡がれる魔法の詠唱のあと、

彼女はそっと目を開き虚空を見つめ……静かに蒼露様の名を呼んだ。


『蒼露様。そのお力を貸して欲しいかなって……』


その言葉と同時に、彼女の体を中心にして蒼く清浄な魔力が満ちていく。

それはまるで蒼露様がそばにいるかのような、

錯覚を覚えるぐらい強力な魔力だ。


僕は呆然と風の精霊を見つめていた。

ふとハイロスさんを見ると、

彼は床に膝をつき涙を落としながら祈っていた……。


彼のその涙の理由はわからないが、

彼が祈った瞬間、蒼露様の魔力が彼を撫でたような気がした。

そして彼女は僕も優しく包み込んでくれたように思う……。


しばらくして、この部屋の空気が元へと戻る。

知らず知らずにつめていた息を吐き出した。


「成功したかなって」


「蒼露様は大丈夫なんですか?」


僕の第一声に、風の精霊がふわりと笑って「大丈夫」と答えた。


次の段階は、使い魔を準備する。

使い魔がいなくなると周囲の人が心配するだろうから、

皆が寝ている場合だけ呼び戻そうと思い、

それぞれの使い魔に確認するように指示を出す。


駄目な場合は説明しにいくしかないかと考えていたけど、

運良く全ての使い魔から大丈夫と反応が返ってくる。


そこで、アルトのそばにいるギルスとヴァーシィル。

トゥーリとリヴァイルの実家にいるシルワとレウスを呼び寄せた。

トキアだけは僕自身の魔力のみで創ったため、

魔力の回復が他の使い魔達と比べると劣るみたいなので、

今回は呼び戻してはいない。


足りない分の使い魔は、

クッカに頼んで新しく創るつもりだったのだが、

風の精霊が自分が手伝うと張り切っていることから、

クッカを呼ばずに彼女にお願いすることにした。


とりあえず、今集まっている使い魔に魂を移していくことにする。

息づいた命をそっと手に取り名付けたあと、

風の精霊とハイロスさんの助言を聞きながら、

その命をシルワの上に持っていくと吸い込まれるように消えていった。

同じようにレウスにも魂を移す。


この2羽には幼い二人の子供を入れた。

恐怖と悲しみで一番傷ついている魂のようだ。

どうしてシルワとレウスに入れたかというと、

風の精霊がいうには、この2羽は愛と魔力に満ちているらしい……。


まぁ、わかるような気がする。

トゥーリもトゥーリの母親も、

この2羽をそれはそれは可愛がってくれているから……。


そしてトゥーリの父親も、

毎日レウスに魔力を与えてくれていた。ときどきリヴァイルも。

愛情深い人達のそばにいれば、魂の傷も心の傷も早く癒えるかもしれない。


「シルワとレウスが光っているんですが……」


「うーん……魂にあわせてちょっと変化しちゃうのかな?」


「……そういうことは早くいってくれないと!」


「私も知らなかったかなって」


「わたくしもです」


それなら仕方ないけれど、

大きく変化したらトゥーリ達にどうやって説明しよう……。

不安に思いながら2羽を見守っていたのだが、

光が収まってみると見た目はさほど変わっていなかった。


撫でてみると前よりも毛並みが柔らかくなったかもしれない。

これなら、ごまかせる範囲だろうと思い胸を撫で下ろしつつ、

二人の記憶を封印した。


「次に進もうかなって」


風の精霊の言葉に、僕とハイロスさんが頷いた。

ヴァーシィルには、ハイロスさんと共にいた女の子が入ることになった。

ギルスには虫が好きだったという男の子の魂を入れる。

この子は、ヴァーシィルに入った女の子の弟のようだ。


先ほどと同じように、ギルスとヴァーシィルが淡く光ると、

僕の両手に乗るほどの大きさになっていた。

その魂に似合った大きさに調整されているのだろうか。


だとすると、シルワ達がさほど変化しなかったのは、

元々その体が小さかったからかもしれない。


最後に、僕よりも年上の二人の魂を移す作業に移った。

折角創るのだから、どういう使い魔がいいか、希望を聞くことにする。


「……強そうな使い魔を希望しているかな?」


「強そう……」


強そうな生き物……。

頭の中で候補を絞り、そこから一つに絞った。

風の精霊に手伝ってもらい使い魔を創る。


風の精霊がそわそわとしている姿を視界に入れながら、

僕は最後の魔力を魔法陣へと込めた。


その瞬間、魔法陣が眩しいほど光を放つ。

そして、そこから生まれてきたのは……優美な赤い鳥。

黒、白、赤、青、黄の五色からなる羽を持ち、

高さはアルトよりも大きめの1.2メルだ。


様々な色に輝く翼は、ため息が出るほど美しい。

一対の鳳凰は羽色などは同じようだが、尾羽が違う。

一羽の尾羽には綺麗な淡黄蘗(うすきはだ)色と黒紅色の羽が一本ずつ混ざっている。

そしてもう一羽の尾羽には瑠璃紺(るりこん)色と黒紅色の羽が一本ずつ生えていた。

優雅に部屋を舞っている鳳凰に、風の精霊もハイロスさんも目を奪われているようだった。


「それで、セツナ……これは何かな?」


「セツナさん、これは何という生き物なのでしょうか」


しばらくして我に返ったのか、二人が僕に問いかける。


「この生き物は、鳳凰という架空の鳥です。

 全ての鳥の祖とされています」


最後まで龍と鳳凰で悩み、悩んだ末に鳳凰にした。

見た目はとても強そうだと思う。


それに、風の精霊がクッカとフィーに張り合っていたこともあって、

想像していたとおり、戦力過剰ともいえる使い魔になっている……。

満面の笑みで「私ならこう創るかなって! ずっと考えていたかな!」と、

楽しそうにいわれれば、水を差すことなど僕にはできなかった。


そして、それ以上に、妥協したものを彼らに与えたくないとも思ったのだ。

ギルスもヴァーシィルもシルワもレウスも、

クッカとフィーと一緒に全力で創ったのだから。


「綺麗だけど、

 セツナの創る使い魔はよくわからないものが多いかなって」


風の精霊の言葉に、僕は曖昧に笑ってごまかした。


「二人が気に入らないようなら作り直しますが?」


話題を変えるように風の精霊にそう告げると、

彼女は首を横に振って「気に入ったみたいかな」と、

二人の気持ちを教えてくれた。


気に入ってくれたのならよかった。

僕は名前をつけたあと、鳳凰の中に二人の命をそっと運ぶ。

使い魔の上に落とす瞬間『ありがとう』と、

二人の声が聞こえたような気がした。


内心驚きながら光る二羽を見ていたのだが、風の精霊の声で我に返った。


「あれ……? なんかずんぐりむっくりになったかなって……」


「……」


「……」


光が収まって先にいたのは……優美な鳳凰ではなく。

色味は同じなのに、どこかぼてっとした丸い鳥が二羽そこにいた。


大きさはやはり小さくなっており、

足から頭までの高さが0.15メルぐらい。

嘴から尾羽までの横の長さが0.3メルぐらいになっている……。


「もしかして、雛になったのかな?」


確かに羽がふわふわだ。

これ……飛べるのだろうか……?


きょとんと目をまん丸にしていた鳳雛と凰雛が、

僕達を見上げるために頭を上げたところで、

ぽてん、と二羽同時に尻餅をついたような感じになっている……。


「ちょっと可愛いかなって……」


風の精霊は目元を緩めて、

ハイロスさんはどこか不憫そうに二羽を見ていた。


「きっと……成長したら、あの姿に戻ると思います」


あまりにもハイロスさんが不憫そうに二羽を撫でているのを見て、

そう告げると彼は「そうだといいのですが」と深くため息をついたのだった。


僕もそうなればいいなと思いながら、記憶を封印する合図を、

風の精霊に送った。


記憶を封印することを子供達に説明し終わったあと、

風の精霊は少し困ったように僕に話しかけてきた。


「ん……記憶を封じられるのを嫌がっているかなって」


今まですんなりと事が運んでいたのだが、ここで一度手が止まる。


「封じなくても大丈夫ですか?」


問題がないのなら、二人の意思を尊重したい。

ちなみに僕より年上だといっても、

彼ら一族の成人年齢は達していないらしい。

なので、ハイロスさんは子供というくくりに二人も入れていたようだ。


「大丈夫だけど、

 魂が器になじむまでは子供返りするかもしれないかな」


「本人達がそれでいいというのなら、彼らの望み通りで」


2羽の頭を撫でながら、僕は魔法の発動を止めることにした。


「あれ? あと一つ残っているかなって?」


僕とハイロスさんの意識が使い魔達に向かっていたのを、

風の精霊が呼び戻した。


「そんなはずは…………」


ハイロスさんの否定の言葉が途中で途切れた。

確かに机の上にあと一つ残っている。

風の精霊がそっとその命に手を近づけると、苦笑を浮かべた。


「この子は人ではないかな」


「人ではない?」


「うん。あの時代に生きていた動物かなって。

 巻き込まれて死んでしまったのかな?」


風の精霊の推察で、

ハイロスさんが困ったような笑みを浮かべていた。


「知力が高く人の言葉を理解することができる動物かなって。

 魂が器に定着しているけれど魔力量が少なすぎて、

 自分で姿を創ることはできないかな……」


「僕が姿を創ったら生きることができますか?」


「多分……。

 気に入ったら仮宿の使い魔を自分の体にすることも可能かな」


「その場合、この動物の意思と僕の意思、

 どちらが強いですか?」


使い魔は僕の命令を必ず遂行する、僕の分身だ。


「セツナの意思のほうが強くなるかなって。

 それでも、殺してしまうのは可哀そうかな」


確かにそうかもしれない。

せっかくここまで生きていたのだから……。

できる限り干渉しないように気を付ければ大丈夫だろうと考え、

この動物の特徴を教えてもらい風の精霊ともう一つ使い魔を創った。


「……」


「……」


創り上げた使い魔を見て、

風の精霊とハイロスさんが言葉を失っていた。


「これは何かな?」


「これは何という生き物でしょうか……?」


二人が同時に声に出す。

質問が先ほどと同じだが、その表情が違った。

この二人の表情は、ピグミーウサギを見た時の、

クッカとフィーの表情にそっくりだったのだ。


「コツメカワウソという生き物です」


「知らないかなって」


「わたくしも存じません」


この世界にはいない元の世界の生き物ですからと、

心の中で返答しておく。


「泳ぐのが好きで、陸で生活することもできる生き物です」


「まぁ……この子の特徴からは、

 ぴったりかなっておもうかな……?」


首をかしげながらも風の精霊はそう告げ、

ハイロスさんは疲れたようにため息をついていた……。


川に生息して魚を捕って食べる生き物と聞いて、

鏡花が好きだったコツメカワウソを思い出したのだから仕方ない。

同じように名前をつけて、コツメカワウソの中にその命を入れた。


するとコツメカワウソの体が淡く光り、

しばらくして「キュアァァァ」と一声なくと、

甘えるように僕に頭を擦り付けてきた。


「この子の意思がなんとなくわかるのは、

 僕の使い魔だからですか?」


ちなみに、コツメカワウソは眠いらしい……。


「多分そうかなって。完全に同化しちゃってる。

 使い魔はセツナの分身だから同化して、

 そうなったのかもしれないかな?」


「なるほど。

 まぁ、僕の使い魔はなぜか自由に行動するので、

 あまり……変わりはないような気がしますが」


「そのほうがおかしいかなって……。

 ちなみに、あの子供達は同化まではしていないけど、

 その子と同じように意思を感じ取ることはできるかな」


「わかりました」


意思疎通ができないのは不便なので、それでいいと思う。

すべてが無事に終わってほっと息をつく。

子供達を助けることができてよかった。

ハイロスさんとカイルの気がかりを解決することができてよかった。

そして、精霊がそばにいてくれてよかった。

そう心から思った。


だから、感謝の気持ちを伝えるために風の精霊に深く頭を下げる。


「ありがとうございました。

 風の精霊のおかげで子供達を助けることができました」


僕に続いて、ハイロスさんもお礼を口にしながら深く頭を下げる。


「うん。長年気になっていたことがまた一つ解決されて私も嬉しいかな! 

 さて……。私はそろそろミッシェルのところへいこうかな」


「はい」


「あ、そうだ、セツナ。

 今、聞きたくはないけれど、

 ミッシェルを喜ばせてくれた対価を考えていて欲しいかなって」


「先ほど、蒼露様に連絡を取ってもらいましたよ?」


「蒼露様とセツナの約束のために私達が仲介するのは、

 対価にはならないかな。そんなことをしたら、

 蒼露様も他の精霊達も怒るかなって」


「わかりました。では、また後日」


「うん。明日には聞きにいくかなって!」


彼女はそう告げると少し寂しそうに笑ってから、

空気に溶けるようにこの場から消えたのだった。


風の精霊を見送ったところで、僕も部屋に戻ることにした。


「僕もそろそろ帰ります」


僕の言葉にハイロスさんがゆっくりと頷いた。

そして、その顔に笑みを浮かべる。


「はい、セツナさん。本当にありがとうございました。

 これで、子供達は生きることができます。

 外の世界を見ることができます。

 本当に……ありがとうございました」


「どういたしまして。治療のために一時預かりますが、

 ハイロスさんがこの子供達の親代わりであることに、

 変わりはありません。

 僕では至らないこともあると思います。

 これからも色々と教えていただけるとありがたいです」


「……そうですね。

 この子供達をわたしくしも見守らなくては。

 ここで終わりではないのですから」


シルワをトゥーリのもとへと戻し、

レウスをリヴァイルの実家に戻す。


そして、ヴァーシィルとギルスを、

アルトのもとへと戻そうとしたとき、

2匹が嫌がる素振りを見せた。


僕から離れ、ハイロスさんにぺたりとくっつく。

なんとなくばつが悪そうに僕を見つめる2匹に、僕は小さく笑った。

ハイロスさんは2匹の行動に目を見張りその動きを止めていた。

記憶を封印したはずなのにな……。


憶測ではあるけれど、

魂の深いところで覚えているのかもしれない。

ハイロスさんのことを、長年守ってくれた人のことを……。


「この子達は、ハイロスさんから離れたくないようです。

 ここに残しておこうと思いますが、ご迷惑ではないですか?」


「迷惑だとは思いませんが、

 アルトさんが悲しまれるのではないでしょうか。

 それに、セツナさんもお困りになるのでは?

 使い魔を自分から離すのは……」


アルトと聞いて、ギルスがピクリと小さく反応する。


「子供達が中に入っているとはいえ、

 僕の使い魔ですから呼び戻そうと思えばいつでも呼び戻せます。

 それに、トキアもシルワもレウスも、

 僕から離れて暮らしていますから、今更気にしません」


「……風の精霊様のいうとおり、それはやはりおかしいかと」


ぼそっと呟かれた言葉を聞かなかったことにして、僕は話を続けた。


「確かにアルトは寂しがるかもしれませんが、

 新しい友達ができる予定なので大丈夫だと思います」


机の上で気持ちよさそうに寝ているコツメカワウソに視線を落とすと、

ハイロスさんが苦笑した。


「この2匹はアルトさんの護りでもあったでしょうに」


「この子も同じぐらい強いですよ。

 意思がある分、アルトとよい関係を築いてくれるかもしれません」


これからどのように成長していくかは未知数だけど、

僕が干渉しなければ、普通の動物と変わりがない……とはいえないけれど、

多分大丈夫。きっと、大丈夫なはず。


「本当にいいのでしょうか?」


「はい」


「ありがとうございます」


ハイロスさんは、ヴァーシィルとギルスに優しい眼差しを向けながら、

何度も何度も撫でていた。


「さて、君達はどうする?」


僕達のやり取りをじっと見つめていた、鳳凰の雛に視線を向ける。

2羽は優雅とはほど遠いパタパタと必死に羽を動かして空中を移動し、

僕の肩に乗った。


「気を使わなくてもいいよ?

 君達の人生は君達のものなのだから。自由に選んでいいんだ」


そう伝えると、雛達がしばらくつぶらな瞳で僕を見上げていた。

肩から動かない2羽にどうやら二人の意思は固いようだと判断し、

連れていくことに決めた。


「それではハイロスさん、またお会いしましょう」


「はい。旅立つ前にご連絡いただけると嬉しいです。

 セツナさんが転移でここに移動してきた瞬間に、

 わたくしは、貴方の居場所を把握することができますので」


「わかりました。それでは……」


簡単に魔法を詠唱し転移魔法で戻ることを伝える。

ハイロスさんは深く深くお辞儀をして……、

僕が消える瞬間も頭を上げることはなかった……。



長い一日が終わり、ベッドの上に座りほっと息をつく。

今日も一日いろいろあったと思いながら、

ベッドの端で寝ている2羽の雛達を見た。


2羽はピタリと体をくっつけて寝ている。

止まり木を用意してみたけれど、一瞥しただけで近寄ることはなかった。


梧桐(アオギリ)じゃないから、止まりたくないのだろうか?

僕の肩には乗ってきたのに……。


まぁ、ただ単に、布団のほうが好きなだけかもしれないけれど……。


「何が好きで何が嫌いなのか、ゆっくり知っていこう」


瑠璃紺色と黒紅色の尾羽を持つ鳳雛がアリアケ。

その中には男性の命が息づいている。


淡黄蘗色と黒紅色の尾羽を持つ凰雛がシノノメ。

その中には女性の命が息づいている。


魔力が少ない状態なので、

彼らの意識はしばらく眠りの中にあるだろう。


彼らが眠っているときは、

今まで通り自由に動く使い魔と同じ状態になるはずだ。

風の精霊からは使い魔と同じ扱いでいいといわれているので、

僕の中に戻すことも可能だけれど、

その環境がどうなっているのかがわからないため、

できるだけ外にだしていようとは思っている。


ふわりと欠伸が一つでる。

あと数時間もしたら夜が明けるが、軽く仮眠を取ろうと横になった。


身じろぎすることなく深く眠る2羽にそっと声をかける。


「お休み……アリアケ、シノノメ。これからよろしくね……」


彼らが完全に回復し、自分達の主を見つけるその日まで。

他の使い魔達も眠りについたようだ。


「トゥーリとリヴァイルには……当分黙っておこう……」


幼い二人は、魂の傷が深いために当分目覚めないと精霊から聞いた。

二人の目が覚めたらそのときに伝えるか考えればいいだろう……。


ゆっくりと目を閉じながら、アルトのことを考える。


「明日の朝起きたら、アルトはどんな反応をするのかな……」


コツメカワウソは、抱き上げても起きなかったので、

アルトのベッドの上に置いてきた。


ギルスとヴァーシィルがいなくなって、

見たこともない動物がいたらきっと驚いてくれるに違いない。


アルトの反応を楽しみに思いながら僕は眠りに落ちたのだった……。



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僕達の小説を読んでいただき、また応援いただきありがとうございます。
2025年3月5日にドラゴンノベルス様より
『刹那の風景6 : 暁 』が刊行されました。
活動報告
詳しくは上記の活動報告を見ていただけると嬉しいです。



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