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Chapter14-5

挿絵(By みてみん)





「あそこが大通り、こちらが薬屋、あとあちらが整体が多い通りで――…」

「あの店、モロに木の根の下にあるけど大丈夫なのか?」

「ふふ、一応大丈夫らしいです」




 "今日一日と、最終日の夜は自由なので、"という言葉と共に、セリーニのナノス案内が始まった。



 木々と共存しているという言葉が似合うナノスは、そこら中に巨木が立っており、根の空いた場所に店を構えているものがいくつかあった。いずれ物理的に潰されたりしないのか、と考えるエルミスに、セリーニは肩を軽く揺らして笑いながら、店主本人から聞いています、と答えた。



「あちらの奥に見えるのが、今回の最終新人研修で協力してくださっている中央ナノス薬学学校です」



 林道の向こうに見える、巨大な門と巨大な構造物。遠くからでも分かるその大きさは、王都の魔法学校の引けを取る事ない巨大さだ。生徒達が門を潜って中に入るところを見ると、どうやら昼休みが終わったらしい。



「薬学学校ってすげぇでけぇな」

「一応総合義務と、十二歳から入学できる薬学専門学校も入っているので規模は大きいんです」

「レヴァンが言ってたやつだな。専門学校は十二から十五までか?」

「はい。そこから薬学学校に入って、十五から十八まで勉学に励む、という感じです」

「へぇー……長い事勉強するんだな」



 人の生死を扱う事になるからだろう、しっかりと勉強をして、尚且つ取る事が難しい資格を得なければ薬を扱う事は出来ないと、且つて父親から聞いたことがあった。長く勉学をして、人の痛みを取り除こうとする、それを目指す者達があの大きな構造物の中で勉強をしているのだ。エルミスは感心しながらセリーニとリーコスの後ろ姿を捉えつつ林道を横切る。



「セリーニ隊員は薬学専門学校に行っていたのか?」

「はい、一応」

「それはすごい。薬学学校に上がらなかったのが不思議でならないな」

「……?」




 リーコスの言葉にエルミスが首を傾げた。どこが不思議なのだろうか…と考えつつ、眉を下げて苦笑いをするセリーニの案内でナノスの中心部である"時計塔"の公園へと到着する。



「おぉー、なんか長げぇモンが建ってんなーと思ってたが、時計塔かぁ。洒落てんなぁ」


「ここはナノスの中心であり、シンボルですね。昼の十二時、夕方六時に鐘の音がなります」

「上に登れるんだぞエルミス」

「えぇ!?まじ?」



 首が痛くなるほど上を見上げているエルミスに、リーコスが登れることを伝えると、灰白色の目が煌めく。真偽を問う言葉にセリーニは笑いながら頷くと、公園の原っぱで昼寝や休憩をしている人々を横切り建物の中に入る。



 こつん、と靴音が鳴り、反響して消えていく。内部に施されている魔法文字の羅列を見たエルミスは、思わず身近に感じてしまった。



「この文字、神代魔法文字だ……」

「……!そういえばそうですね。読めませんが、見慣れた文字です。神代文字を見た事が無かったときは、ただの模様かと思っていましたが…」



 エルミスの言葉に改めてセリーニが内部に施されている魔法文字を眺めると、上巻の間にて自分が書き写している形である事が理解できた。生まれてから親しい時計塔の内部が、まさか神代魔法文字が施されているなど露知らず、ただの落書きか、あるいはそういったモチーフなのかと思ったほどだ。きっと知らないものであれば、セリーニの様に答えているだろう。



「ナノスはアステラスで一番最初に出来た地と言ってもいいほどに、王都よりも長い歴史がある。この時計塔は細かな修理こそすれど、神代魔法文字によって施してある防魔法が上手く働いている。几帳面なナノスの良いところだ」

「防魔法…確かに、神代魔法文字の指す言葉は防魔法に関するものだが…」



 リーコスの説明は簡単ではあるが充分だった。エルミスはぐるりと円柱の時計塔内部を見渡して神代魔法文字を読み取りつつ、セリーニの背中を付いていく。



「そういやリーコス。お前神代文字読めねぇのによく光属性の魔法使えるよな」

「脳内で呪文が流れてくるからね。特別神代文字を読み解くことをしなくてもいいんだ。ただどれも似たような記号で……読むのを諦めて以来、読もうとしていない」

「……」



 リーコスは"似たような記号"と言っているが、微妙に違ったりもしている。確かに読み解くにはいささかギミックもあってか難しいのだが、エルミスは鍵を解放して読むことが出来るようになった時以来、時折そのギミックや記号の区別がつくことが出来た。


 そして上巻の間を紙に写しているセリーニも、分かりにくく似たような記号は、区別がつく様に分かりやすく書き記したりと工夫している。



「……なんだエルミス」

「……いや、なんでも」



 エルミスの何か言いたげな視線を感じ取ったリーコスは、簡易的な転送魔法陣の上に立ちながらエルミスへと視線を向けると、ふい、とエルミスは視線を逸らして転送魔法陣の上に立つ。



「(こいつ、芸術はポンコツだからなぁ…)」



 簡単な地図を描こうとすれば、歪な物が出来上がり、人の特徴を捉える様に描かせた絵は、棒人間の方が良いと言ってしまう程酷い物が出来上がる。第一王子の唯一の欠点によって、きっとこの先神代文字を読み解かせる事になった時、一番苦労するだろうなとエルミスは考えながら、転送魔法陣から吸い寄せられる魔力を感じ取ったのだった。





明日は水曜日でおやすみです。


牡蠣の季節ですが、生、蒸し、焼き、フライの中でフライが一番好きです。次点で焼きですかね。

生も勿論好きですけど、生は小さいの2個ぐらいしかたべられないです。なんだろう。くどいのかな?でもフライにすると無限に食べられる。


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