Chapter13-8
久しぶりのきちんとした睡眠で、久方ぶりの夢だった。
キラリ。光を屈折して薄く輝く一枚の透明な板。それはエルミスが試行錯誤の末に手に入れた技術の一つだ。
"よく頑張ったね"という声が聞こえる。また女の声だ、と考えながら、これが夢だと気付く。
"次は楔の製作だが…その前に魔法文字と魔法陣を刻むところからだな、難しいから頑張れ"と、激励が飛んで来た。まだ難しい事がたくさん残っているのか、とエルミスは夢の中でぼんやりと考えながらも、頭の中で響くチャイム音に夢の海から引き上げられる。
「………、…だれだ。つか、なんじだ…」
遮光カーテンの下から比較的明るい陽がベッドの端を照らしているのが分かる。中々開かない瞼を軽く手で擦って目覚まし時計を確認すれば、九時半という半端な時間だった。
ベッドから起き上がり、ぺたぺたと歩いて部屋を出る。"はいはいはぁーい……"と元気のない返事をして階段を降り玄関ドアのスコープを覗けば、異色の組み合わせにエルミスの眠気が一気に吹っ飛んでしまった。
「やっ、エルミスおはよう」
「おはようございますエルミス!」
「え…あ…、お、おはよう二人とも…」
爽やかな笑顔が二つ並べば太陽より眩しいと、エルミスは思わずきゅっ、と目を瞑った後、力のない挨拶をしたのだった。
「携帯魔法炉?それだったら蔵にあるぜ。鍵取ってくるからちっとまて……」
携帯魔法炉を持ち出すという許可は既に貰っていると聞いたエルミスは、蔵の鍵を取りに一旦家の中に入る。
既に両親は家に居らず、祖父の気配もない家はエルミスのみとなっていた。家の鍵を置く為のシェルフではなく、祖父の部屋にある仕掛け机に魔力を流せば、中心から小さな四角い亀裂が浮かび上がり、スッ…と箱のようなものが押し上げられる。蓋を開けて蔵の鍵を取り出したエルミスは再び玄関に行き、待機しているセリーニとリーコスを引き連れて蔵の扉に立つと、エルミスの手いっぱいにある大きなカギを、鍵穴が開いている扉に直接差し込んだ。
「 認証接続 第一接続完了 第二接続完了 ゲスト二名、魔力感知…… 」
鍵をまだ回さず、魔力を流し込んで扉の防魔法を解除し始めるエルミスに、セリーニとリーコスは黙って待つ。魔力感知という言葉と同時に、二人の身体から微かに魔力が蔵の方へと流れていくのが分かる。
「 認証完了 接続終了 ……おっけ。入っていいぜ」
鍵を回して解除し、ゴロゴロゴロ…と鈍い音を立てて扉をスライドさせたエルミスは、二人を招き入れつつランプを付ける。小さな背中を大きな二人が付いていきながら目当ての物を探していると、丁度奥まった方にシートが被さった携帯魔法炉があった。
「おっ、あったあった。これだな……」
「意外と小さいんですねぇ…」
「エルミスと殆ど変わらない背丈だな」
シートを取り払って目視で確認したエルミスに、セリーニは素直な感想を言うと、リーコスも初めて見た携帯魔法炉の感想を続ける。
リーコスの言う通り、エルミス程度の背丈の為、持ち運びにはとても良いだろう。
シゼラス等、色んな鍛冶屋に置いてある魔法炉は縦も横も奥行きもある為、とてもではないが持ち運びは出来ないが、百五十五程度の小柄なエルミスとほぼ変わらない携帯魔法炉であれば、正しく持ち運びは容易く出来るだろう。
「早速持っていくか」
「ちょっと待て、一度だけ状態を確認する。持って行った後"実は壊れてました"なんて言えないだろ?」
「む…それもそうだな」
リーコスは抱えていた台車を組み立てて蔵に下ろし、携帯魔法炉を持ち運ぼうと近付いた時、エルミスがそれを制した。壊れているものをわざわざ運んでしまっては、持っていく意味がないというもので。その言葉に納得したリーコスは台車をストッパーで固定した後、エルミスの確認が終わるまで腕を組み静かに待つ。
「 量子接続 ……、 」
エルミスの最初の呪文と同時に魔法炉とエルミスが魔力の輝きを纏う。
暫く黙っている為、もしや壊れてしまっているのか、とセリーニとリーコスは僅かならが表情を固めていると、どうやらその心配は無いようで。魔力の輝きと魔法文字を身体に回したままエルミスは古い机の引き出しから使いかけのストッカーを取り出し、携帯魔法炉の周りをくるくると回ってスロットを探し当てると、半端にマナが溜まっているストッカーを挿す。
カチン、と小さな音が蔵に響き、携帯魔法炉の中にほんの僅かなマナが溜まった。
「 マナ流動確認 数値制御正常 強制終了機能正常 魔力変換 強制放出 」
どうやらマナが溜まっていなかった為、正常な点検が出来なかったらしい。マナを溜めて使う機械の為、確かにそれでは点検も無理か、とセリーニとリーコスは納得すると、魔法文字を纏うエルミスから強制放出という言葉と共に、多くの魔力が蔵へと流れ消えていった。
「ん、どっこも壊れてないっぽい」
「では持って行っても大丈夫です?」
「おう!溜まってたマナも魔力に変えて排出させといたから、危なくないぜ」
ストッパーの掛かっている台車の上に移動させるため、セリーニとリーコスが二人でゆっくりと持ち上げて乗せる。意外と軽かったという感想を二人同時に心の中で考えつつ、リーコスが流れる様にストッパーを下ろして台車を押し始めた。
セリーニはその様子に"ここは任せましょうかね"と、気を利かせたリーコスを立てつつ蔵から出ると、最後に蔵から出たエルミスが二人の様子に改めて首を傾げた。
「また戻んだろ?なんで二人一緒になってるかオレ知りてぇし、裏庭回って来いよ。休憩がてら茶ぐらい飲んでけ」
「では甘えようかな。セリーニ隊員、裏庭はこっちだ」
「え、あ、はい!」
背中から聞こえるエルミスの提案に、台車を押していたリーコスが方向を切り替えて裏庭へと進んでいく。
その背中をセリーニは付いていきながら一応専用通信機で時間を確認すると、微量の魔力で表された文字は間もなく十時を刻むところだった。
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