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Chapter12-5

挿絵(By みてみん)




 顔色一つ変えずに美味しく食べているエルミスは一番底にあるスポンジケーキを掘り当てつつスプーンを止める。中間にあったスポンジケーキは溶けかかったアイスが染みているのもあってか食べやすかったのだが、一番下のスポンジケーキの上は生クリーム。その生クリームが、どうやら上のベリーソースとチョコアイスの侵略を防いでいた様だ。



 ふわりとしているスポンジケーキを掘り起こして、溶けかかっているチョコアイスと軽く混ぜる。後半戦はアイスも柔らかくなっている為混ぜやすく、最後に口内の水分を奪っていくスポンジケーキをそのままにしておくのは、最後まで美味しく食べるという意味では負けである。



 アイスと混ぜる度にチョコアイスの溶けた水分がしゅわりと染みていく光景を黙って見ていたエルミスは、はっ…!とした表情を浮かべると、今の光景を忘れない様にストッカーポーチからペンとメモ帳を取り出して"満たす、固定"と書き込んだ。



「どうしたエルミス」

「…もしかしたら、って思った事があってな」

「…?そうか」



 首を傾げたリーコスは、一人確信を得始めた表情を浮かべているエルミスを見つつ鉄板に残っているソースをバケットに付けて綺麗に食し終わると、紙ナプキンで口元を拭いエプロンを外した。エルミスもそのまま最後まで美味しく底まで堪能し、別皿に移しておいたチョコレートケーキを二口で食べ終える。



「ふいー、ごちそうさま…あー、甘いものってやっぱうめぇなぁ…」

「ごちそうさまでした、…良い食べっぷりだったよエルミス。お陰で、俺は今自分の胃の中にデザートがある気分だ」



 腹を擦って美味しさを思い出しているエルミスをリーコスは同じように胃を擦って甘い物が入っている感覚を感じつつ軽く笑う。


 食べ終わった食器を片付けに来た店員が"完食おめでとうございます"とエルミスに言いつつテーブルの上を全て回収し戻っていく。


 時間制限は無いがチャレンジなので完食後の褒美がある事は確かだ。エルミスはその褒美と食後のコーヒーを待っていると、前に居たリーコスの手首にあるギルド専用通信端末が一瞬光を点滅させた。ちらりと視線を下に落とし端末を操作するリーコスを、半端に減ったグラスの水を飲みつつ見ていると、食後のコーヒーが運ばれてきた。



「砂糖とミルクはお好みでどうぞ。それと…チャレンジメニュー完食の商品です」

「ありがとうございます。おっ…アフタヌーンティーセット無料券…!母さんにやったら喜ぶかなぁ」



 一枚の券をエルミスへと渡した店員は一礼してテーブルから離れていく。使用期限を確認しながら母親にやろうとストッカーポーチに入れたエルミスは、置かれたシュガーポッドから角砂糖をシュガートングで摘まみ、端末を弄っているリーコスの前に置かれたコーヒーへとぽとぽと入れスプーンで掻き混ぜてやる。


 溶けた事を確認してミルクを入れてやり、自分のコーヒーに砂糖を入れたところで端末のホログラムを見ながらリーコスがコーヒーを飲み始めた。



「なんか重要な事か?」

「三週間後に新人の最終研修が行われるんだが…それに付いていく隊員の正式名簿が上がった」

「へぇー、リーコスは新人だから勿論行くんだよな」

「あぁ…因みにだが、シゼラスも行くことになっているぞ」

「えっ!?」



 ぐるぐるとミルクが混ざっていくのを見ながら一口飲もうと思ったところでとんでもない言葉がエルミスの耳に入ってきてしまった。思わずコーヒーカップを持つ手を止めてリーコスの方を見るエルミスに、端末のホログラムを見やすいように左腕をエルミスの方へと向けながらリーコスはコーヒーを啜る。



「………マジじゃねーか。じゃあ今日父さんが商業ギルドの集まりがあるって言ってたのって、」

「新人研修に付いていく補助員を決める集まりだったんだろう。シゼラスが出るのは確か…まだ前店主が現役だった頃と聞いている。まぁ粗方俺の魔法剣を直せる者がエルミスしかいないから選ばれたんだろう」

「…え?じゃあオレも行くのか?でもオレまだギルドには入ってねぇし…」

「エルミス自体は正式入隊をしていないが、店としては加入している。つまりエルミスも問答無用で行くことになる」



 ホログラムに写された各店舗名の中にシゼラスという店名がしっかりと書かれており、エルミスはテーブルを乗りだしていた身体を椅子に落ち着かせながら改めてコーヒーを一口啜りつつ年齢を満たしていない為まだギルドに加入していない事を言うと、店として登録している為同行可能だという事を言ったリーコスは端末を操作してホログラムを消す。



「まぁ、他の奴に魔法剣を触らせるのもちょっとアレなのは確かだ…」

「君の作った魔法剣は他とは違うらしいと、職人と魔法剣を使っている者は分かっている様でね、"スキャニングさせてくれ"やら"ちょっと貸してくれ"やらよく言われたものさ」

「その口ぶりだと他人に渡してねぇようだな。流石だぜ」

「それはどうも。職人が特別に作った物を、安易に貸したり渡そうとはしないよ」



 職人の技術は他人に安易に渡してはならない、というのは暗黙の了解となっている。唯一継承、または技術を得ることが可能なのは弟子入りや、気の知れた職人仲間の内だけだ。


 共通しており、尚且つその技術が効率が良く簡単であったり分かりやすい物であれば共有して広めていくのだが、唯一となる"職人の色"が出ている技術は余程の事が無い限り他人に渡してしまうとすぐに真似をされてしまい、顧客を取られてしまう場合がある。


 エルミスは父親と祖父が作った魔法剣とは全く別の方法でリーコスの魔法剣を創った。無論、父親と祖父の技術と己の発想をプラスしている為、父親がリーコスの使っている魔法剣と同じ元を作れるかと言えばノーだ。だからこそ他の魔法剣とは全く違い、魔法が使いやすく、そして美しい魔法剣が出来上がった。



 全く見た事のない魔法剣に多くの職人が驚いた事は知っていたエルミスだが、まさか持ち主に貸してくれとまで言う者が居た事は知らなかった為、一瞬ひやりと肝を冷やしたのだが…幼馴染はちゃんと職人の気持ちをよく分かっていた様だ。

 



 温くなったコーヒーを飲み干したリーコスは、同じように飲み干したエルミスがコーヒーカップを置いた事を確認して籠に入れていた上着を取り立ち上がりつつ伝票を手に取り会計へと向かう。



 その背中を追いかける様に立ち上がり会計を終わらせてしまった素早いリーコスに"ごちそうさまでした"と礼を言うと、"エルミスのお代はコーヒー代だけだったよ"と返ってきた。どうやらチャレンジメニューは完食すると無料になるらしい。得した、とエルミスは思いつつ、満腹感で満たされる腹を慣らす様にシゼラスまでの道のりを、二人でのんびり帰った。




この部分で完結します、というのを押したらどうなるのか…その実態を探るべく、我々はアマゾンへと向かった……。


怖いので押していません。



ひっさびさに冬の大三角を探しました。オリオン座も見つけれて、案外小学校の頃にやった事忘れてない。

新しい星座や星に名前を付ける。その時に「あの星は新しい!」と分かる脳が凄い。少しその知識を分けてください…。


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