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Chapter8-2

挿絵(By みてみん)





 ばふ、と柔い羽毛に何かが振り下ろされた音が静かな部屋に響いた。


 発生源であるエルミスを見ながらリーコスは起き上がって、腹にあるエルミスの腕を掴んで退ける。遮光カーテンの下から適度な日が差し込んでおり、朝だということを知らせていた。



「七時半…」



 生活習慣を出来るだけ崩したくない為、休日でも目覚ましは付けていたのだが昨日は忘れていた。徹夜癖のあるエルミスを休ませたかったのもあるが、リーコス自身も光魔法を使い大量の魔力を消費したため休息が必要だった。勿論ストッカーで魔力を補充するのも可能だが、自然生成によって生み出す自分の魔力の方が質は何倍もいいのは事実。




 両手足を目いっぱい伸ばして眠りこける幼馴染に、寝ぼけ顔で笑いつつベッドを降りると、穴だらけの床に転がっている指輪を拾い、ソファーに設置されているローテーブルへと置く。ぱち、と軽く音が鳴ってしまったが、エルミスが起きる気配は無かった。そのまま洗面所へと向かって顔を洗い、歯磨きをしながら寝ぐせを確認し、口を濯いで洗面所から出るとエルミスが上体を起こして目を擦っていた。



「おはようエルミス」

「おはよーリーコス…ねみー…」

「二度寝するかい?」

「いんや、いい…腹も減ってるし」

「分かった、朝食を持ってこさせよう」




 眠気交じりの声にリーコスが二度寝の提案をするも、首を振ってもぞもぞとベッドから降りるエルミスが手で腹を擦り空腹のサインを出していた。エルミスが洗面所に、リーコスが廊下へと続くドアの前に立ってドアノブを手で掴み押す、顔を軽く左右に動かして近くに居た給仕に目配せすると、軽くお辞儀をした給仕が食堂の方へと小走りに向かっていった。



 ドアを閉めて振り返ると、丁度洗面所からエルミスが出てきて遮光カーテンを開けていた。一気に朝日が部屋に入り込んで明かりを提供している。



「うわぁ…改めて現実に戻るときついな…。これ、なんて言い訳すりゃいいんだ…?」

「ふむ…理由は聞くなと先に言っておこう」

「先手必勝か。良い案だ」



 部屋全体を照らす朝日によって、改めて昨晩の騒ぎがとんでもないことを知る。


 穴は壁と床に無数開いており、火のギアが付いていたランプが一つ割れてガラスに穴が開いていた。割れずに穴だけ開いているという事は、刺して抉るのではなく"穴だけをあける針"だったという事だ。綺麗にくり抜かれている個所もあれば、床の大理石が抉れて転がっているのもある。魔法文字を壊すはずだった針だったのだろか、と考えるが、今となっては分からない。


 どうやったらこうなるのか、と必ず言われてしまうのを、リーコスは敢えて言わない作戦を立てた。良い案だとエルミスは一つ頷いてソファに座る。



「そういえば…闇属性を解除した状態でスキャニングしても、詳しい事は分からなかったのか?」

「おう、成分と製造日ぐらいしか分からなかった」

「そうか。その指輪はどうする?」

「うーん…指輪は扱えないがモノはいいからなー…分解して道具作りの参考にする為に持って帰る」



 "これは自分の金で買ったようなもんだしな"と言ってソファに置いていた作業ベルトに付いているストッカーポーチへとエルミスは仕舞うと、ノックが二回室内に響いた。



 "入れ"というリーコスの言葉でドアが開き、朝食を銀のトレイに乗せて持ってくる給仕は一瞬穴だらけの床を見て驚きの顔を見せていたが、そのままローテーブルへと朝食のサンドイッチとフルーツの盛り合わせ、飲み物のアイスコーヒーを置いて軽くお辞儀をし部屋から出ていった。



「……ビビってたな」

「あぁ……」



 これは入ってきた全ての人間は驚くだろうな、と二人は考えつつ、手を合わせていただきますを唱えた。


 アイスコーヒーの一つは黒く、もう一つは茶色、ミルク入りと無しの違いではあるが、エルミスはしっかりとミルク入りのものを手に取って一口飲む。ふわりと香るコーヒーの香りに、ラグダーキのコーヒーとはまた違った美味しさを感じながら、ふわふわの柔いパンで挟まれているハムチーズを取って頬張る。うーん、ローストしてあってうまい、と咀嚼しながら昨晩読み取った情報の一つを言葉する。



「南西八十九の五ってどこだ?」

「工場で南西と言えば第六と第七しかない。尚且つ指輪を製造できるのが第六の第二製造施設付近だろう…、まぁ一応…詳しく見るか」




 そういってリーコスは腕に付けていたギルド専用通信機を起動する。ギルド支給のそれを新人ながらもしっかり使いこなしているリーコスに、"こいつああいう機械系好きだよな、"と考えつつ、たっぷりの生クリームといちご、オレンジ、バナナが挟まったフルーツサンドを手に取り大きな口を開けて齧る。甘い生クリームとバナナに酸味のあるイチゴとオレンジが混ざり合って口の中が幸せになるのが分かる。



 リーコスの魔力によってホログラム化したアステラ全体の地図が広がり、八十九の五を検索した途端一点に向かって拡大されていく。




「……第七工場?」

「むえ、ふぁいふぉくふぁふぇーふぉは?」

「地図だと第七だ。第七魔法工場第一製造施設…だが、あそこはスロット接続部分の製造だったはずだが…」

「んぐっ…。スキャニングの製造場所は絶対に間違ってねぇぞ」

「……一度確認しなければいけないな」



 第六じゃないのか、と言う言葉にしっかりと返事をしたリーコスの顔色は一見涼しいものだが蒼の瞳は思案気だった。


 エルミスはもふもふのパンをしっかり咀嚼してずず、とアイスコーヒーを飲み、一応自分のスキャニングは失敗していない事を伝えると、それはしっかり分かっているリーコスはフルーツをフォークで刺して口に入れながら頷いた。





あらすじ絵はおじいちゃんと孫第二弾:)


ハロウィンキョウカちゃん来ませんでした…かなしいなぁ。


サモアって聞くと、どうしても某もちもちの戦車の話を思い出します。\サモアー!/


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