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Chapter24-17

挿絵(By みてみん)





 永遠の別れと思っていた兄が、永遠の別れと思っていた第一王子が、生きて帰ってきた。身を潜めていた弟と九人の候補者の前に現れたハルコは、十人分の嬉しさ、涙、鼻水、少しの打撃、そして歓喜と笑顔を受け取る。



「けれど兄さんどうして、呪いを解いてもらったのか?」

「あぁ、アステラスに凄腕の呪術師が居た」

「すごいわ……!流石は魔法大陸……!」



 弟は兄の生存が嬉しくて理由を聞けば、魔法大陸によるお陰だという言葉に十人全員の顔が驚いていた。王位継承争いに疑問を持ち、声を上げた女性は声を大にしてアステラスの凄さを今一度確認している。



 呪術師、という言葉で少し嘘を吐いたハルコは、出来る限り王家とシぜラスに迷惑が掛からない様にと吐いた嘘だ。宝剣をスキャニングした際、修理した担当の名前が無く、ターランドスという鍛冶店の名前のみが記載されていたのは、あくまで"修理のみ"を請け負ったという証だけ……つまりは"壊れていたので修理に出した"と嘘を吐けることになる。ターランドスという店にも被害が少ないその配慮に、ハルコはどこまでも良い人物に出会えたと感情を深めた。



「今から国王の元に行き、今日の昼に王位継承の儀が行われる様手配する。……皆、それまで待っててくれるか」



 ハルコの言葉に十人、そして世話をしていた使用人、給仕、護衛、全員が一斉に頷いた。









 第一王女生誕祭本番。賑やかな中央通りを眺めながら追加の仕込みをしていたコラーリの元に、一本の通信が入った。"キャンドル・キャシー"と書かれたホログラムに首を傾げたコラーリは通信を取ると、キッチンスタッフに"防音魔法掛けて"という合図を送った。



「あらキャシー、この間ジェンスさんが頼んでた情報の追加?」

〈ちちちち、違うわよ!!違うのよ!!ねぇ聞いてコラーリ、今イガンダス国が凄い事になってるのよ!!〉



 通信越しから聞こえる焦った野太い声に、キッチンスタッフも珍しいとばかりに目を丸くしている。それはコラーリも例外ではなく、パッチリまつげをぱちぱちと上下に動かしながら驚いていると、キャシーと呼ばれた野太い声が続きを語る。



〈イガンダス国が今日王位継承の儀なんだけどね!?昨日の夜情報くれってアンタが言ったから、なぁ~んでそんな分かりきった事一々調べんのよ!って思ってたんだけど……〉

「……なぁに、ハルコ王子が国王なんじゃないのん?」



 コラーリが言った言葉は一種の"希望"だった。死を悟っていた様なハルコの背中を見ていて、どうせならば生きていてほしいと願っていた。一気にしゃべり倒すキャシーは喉が渇いてしまったのか、水を飲む豪快な音が通信に乗っている。



〈そうなんだけど!〉

「……!?」

〈そうなんだけど、全員居るのよ!!全員!!〉

「ぜ、全員ってなにがよ!?」


〈候補者全員よ!!噂が真実であれば、"みーんな死んでなきゃおかしい"のに、生きてんのよぉーーーー!!〉

「なぁんですってぇー!?」



 決して厨房の外にコラーリの声は聞こえていないはずだが、どうやら声量のせいで特殊硝子がビリビリと音を立てていた様だ。びっくりしながら厨房を見る客に、コラーリは慌てて笑顔を作った後、口元が見えない様に手で隠す。



「ど、どういう事よん!?」

〈わっかんないわよ!―――あ、臨時ニュースがラジオで出るから、それ聞いて、詳しい事は後で!!〉



 ぷつんと音声が切れてホログラムが魔力粒子を散らして消える。店内でも流しているラジオも丁度良く臨時ニュースを知らせる声が聞こえ始めた。



『―――ここで臨時ニュースです。本日昼、第四大陸イガンダスにて執り行われた王位継承の儀にて、国王の第一王子でイガンダス軍閥副指揮官のハルコ王子が、本日国王としてイガンダス国の大陸を収められる事となりました』

「…………」



 生きている。ハルコ王子が生きている、その事実にコラーリは胸元のエプロンフリルをぎゅっと掴んで耳を立てる。どうやら店内にいる客達も静かに聞き入っている様だ。無理もない、"噂"があまりにも有名な為、"ハルコ王子が全ての候補者を殺したが故の地位"だと今のところ皆思っている。だが―――、



『国王就任後、イガンダス国の王政を改正、王政によって決められていた全ての法を廃止、新たに追加し、第四大陸全土を区分化、王族による代表管理の元、王位継承の儀に参加した同胞と共に国を立て直すと宣言されました』

「……!!」



 コラーリを含め、全員が騒めきながらも歓喜の声を上げる。"噂は本当だった!"という真実の裏付けもあれば、"これからハルコ王子があの国を変えてくれる!"と、イガンダス国からの客の評価も上がっている。


 死に顔の様な表情で出て行ったあのハルコ王子から、まさかこんなことになるとは思わなかったコラーリの元に、臨時従業員の一人が大きな花束を持って厨房に入ってきた。



「あらん?その花束どうしたのん?」

「店長にって、花屋さんが持ってきてくれました」

「ん~~?今日は特別そんな店の記念日じゃないんだけどぉ……」



 とりあえず渡しておきます、とコラーリに渡した従業員は厨房を出ていき接客に戻る。まだ仕込みの火入れ途中なので時間があるコラーリは、一先ず花束を持って厨房に続いている自室に向かいながら、花束に飾られているカードを手に取った。



 薄桃色のそれはコラーリの好きな色。コラーリへ、と書かれた紙を裏返す。



『来年、王として改めて君の店に。―――ステーキ、美味しかったよ』



 差し出し人の名前は書いてはいなかった。けれどここ一週間でステーキを出したのは一人しかいなかったコラーリにとって、十分すぎるアプローチだった。




「……んもう、イケメンってこれだから憎めないのよん」



 心配して損した!という言葉を吐き出す事は無かったが、心の中に留めて置いたコラーリは、花束を丁寧に花瓶へと移し替えた後、急ぎ足で仕込みの続きに厨房へと向かったのだった。





明日は定休日です~。


偶に「うわっ、これ食いたい!」って思った時に限って該当するものが家に無かったりすると、それを補うように他の物を食べて虚しくなる現象に名前が欲しい。



昨日凄い雨風やったんですけど、あまりに楽しいのでお外でちょっと風を感じた後にお風呂入ったら、むちゃくちゃ手足が冷えてて逆に湯が痛かったんですよね。人間ってむちゃくちゃ不便やな、、、


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