Chapter24-15
「……ハルコ王子、一つ聞いても?」
「あぁ」
エルミスの帰還を待つ間、ドレスルームからエルミスが使っていた来客用の部屋に案内したリーコスは、ソファに座って静かに待つハルコに声を掛けつつ向かい合うように座る。
「呪いがある事を知りながら、なぜ自らの命を犠牲にしてでも、王位継承争いを根本から変えようと思ったんですか?」
「…………」
「あの国は強い。力ある国のトップが力を持っていなければ、国民の不安が出てくるものです」
リーコスの意見は最もだ。国を治める者が軟弱ではいけない。資源のある国は特に力を付けていなければ足元を掬われる、その考えはきっとどの国の王や長も思う事だろう。
だがリーコスの言葉を聞いたハルコは、微かに二回頷くと、リーコスの意見に否定はしなかった。
「リーコス王子、孤独の王というのは、実は非常に"足元"が脆い」
「足元……」
「そうだ。たとえ国民に力を示していても、同じ血を分かち合った身内が、決して力に従うかと言えば……そうではない」
ハルコの言葉に、リーコスは数時間前に王位継承争いの全貌を聞いた内容を思い出す。
王位継承争い――― 満二十になる王族一家の長男または長女に与えられし参加権。その際必ず「兄弟が二人以上居なければならない」という条件付き。
国のトップに立てるのは勿論だが、王族の位争いにも発展する其れは、王族の血を引いていながらも位が低い一族には一世一代のチャンスなのだ。
必ず兄弟二人以上居なければならない理由は単純、―――王位継承争いによって一人子が死ねば、王族の血が続かなくなる。位の低い王族から、国王ではないが位の高い王族も、全員次男次女、三男三女だ。国王という地位、そして高い地位を得たいが為に参加する―――
"その歪さに、私は気付いた。兄弟も、血の繋がった他人も、全員な"
殺し合いによって得た地位は、確かに強いだろう。だがそれでは駄目だとハルコは言った。
「―――私が丁度十の歳を跨いだころだ。王族の身内である一人が資源を狙った小国に、良いように言い包められてしまった事があってね。国王の警備が一番手薄な時間や、私たちでさえ気が付かなかった抜け穴等をすらすらと教えてしまっていたんだ」
国王が資源を採取する現場に向かう途中、先回りしていた族に襲撃されたのを、総合義務教育中のハルコは緊急連絡で聞いていた。だが、心配したのは国王の安否よりも、「王族の一人と族」の心配をした事をよく覚えている。
「少ない精鋭で国王の首を取れると思っていた様だったが、結局国王が始末し、一人だけ生かして誰の入れ知恵か吐かせていたよ」
王族の中でも位の高い者だった一人が、ある日を境に一切姿を見せなくなった。国を脅かす存在を始末するというのが普通である国が、なぜその結論にたどり着いたのか、
「そのような者を血族から出し、始末する。そればかりではキリがない。ならば根本から直すしかないと気付いた。どうすればそのような者達を出さないか、―――そこで、私はアステラスの王族体制に目を付けた」
「……!」
アステラスの王族は先代の王の血を受け継ぐ者が五人、そして先代の王の兄弟が七人。リーコスが把握しているだけで同世代は九人と十一人、近からず遠からずリ同じ血が混じっている者達が居る。
そんな王族達は皆「分担制」となっており、第一大陸アステラス全ての国に関する管理を任す事になっている。国王だけでは決して大陸全土を見ることなど不可能だからこそ、同じ血が流れている者達と協力して国の視察、予算案、ギルドの状況把握、国民の声によって出された希望を国王に伝える――――等、
アステラスの王族達は「王族」で国を護っている。孤独の王よりも結束が強く、そしてなによりも「一人故の恐怖」がない。ただ強いだけの国にはない、見えない力があるとハルコは思ったのだ。
そうと決まれば、ハルコはもうすぐニ十歳になる十人目の候補者を含めて、他の誰にも気づかれる事無く内密に話し合う。"私たちも結束すべき"だと。
そして気付く。皆誰もが「たった国の王という者を決める為だけに死を選ばなければならないのは、恐怖でしかない」と語ったのだ。
『他の大陸が王を決める時は、国民の声と本人の意思によって決まると聞きました。私たちは、ただ殺し殺されながら、ただ強いだけの王を決める……それで、国が本当に一つになれるのか、私はそうは思えません』
ハルコの二つ下の歳、王族の位は上から三つ下の女性がそう語る。その言葉に賛同するように九人の首が縦に動いた。
そして王位継承争いによって国王に与えられる呪いを魔法石へ移動する事を決行する。呪いを掛けられた候補者一人ずつ、人目に触れることなく呪いを魔法石に移動させて閉じ込め、既に死人だと装う様に身をひっそりと隠してもらう事にした。
幼少の頃から交流のあった候補者全員が、「私が変わった方が良い」と言っていたのをハルコは思い出す。気持ちだけ受け取っておく、と言葉を交わして別れを告げ、合計十の呪いを受け取った魔法剣を、誰にも迷惑の掛かる事のない海の上にて発動させ己の「命」を「贄」として呪いを解く算段だった。
呪いの無くなった魔法剣を同じ顔である弟に護衛が渡し、弟が国王となった暁には、王位継承争いなどという殺し合いなどしなくて良い様に法律を改正してもらおう……ハルコはそう思っていたのだ、数時間前までは。
「命があるって、素晴らしいなリーコス王子」
「……そうですね、ハルコ王子」
そう言えばゼノブレイドのリメイクここで話題にしましたっけ?こんばんは!!!
ゼノブレイドはwiiのやつをやったんですが、そりゃあもうプレイ時間を振り切って必死にやった思い出があります。あれをやらずしてRPGを語ってはならないと思うぐらいいいゲームです。まだやった事ない人はぜひ。RPG大好きまじすかのお墨付きです。