Chapter24-12
「あの、」
「……?どうしたかな、ミス・エリー」
「宝剣の柄と、宝石を固定する土台が呪いのせいで抉れて融けています。もしよろければですが、私が直しましょうか」
長手袋を嵌めた手で柄を指さしながらエルミスが指摘し、同時に直すと口にすれば、思わず滑った"直す"という言葉にひくりと自分の目元をヒクつかせる。
(まずい、すごくまずい、ついつい無意識に直すなんて言っちまったけど、女が剣の鍛冶なんて怪しまれねーか……?)
「ミス・エリーは鍛冶師かな?イガンダスにも女性が切り盛りする鍛冶屋は多くある。やはりアステラスにも女性鍛冶師がいるのはいいね。……リーコス、彼女の腕前は?」
「俺のお墨付きです」
「決まりだ。ではよろしく頼もう」
「――――はい!」
イガンダス国に多くの女性鍛冶師がいるのか、女性に変装したエルミスの提案を特別不審がる事無く受け入れたハルコは、鞘に宝剣を戻してエルミスへと手渡す。重みはあれど祭事用の宝剣の為ずっしりとは来ない。
机に散らばっているストールを一枚手に取り宝剣を隠す様にくるくると巻けば、側に待機していたセリーニの手を握って歩き出す。
「セリーニ、行こう。終わったらセリーニの通信機からリーコスに伝言を入れますので!」
そう言葉を残してドレスルームのドアを開けて去っていったエルミスとセリーニの背中を、ハルコ以外の全員が微笑ましく見守っていた。
王城の廊下は警備に努めている騎士団員が巡回している。第一王子の婚約者として報告されているのか、エリーに扮しているエルミスに会釈をしつつ、その護衛を務めているセリーニへと"ご苦労様です"と声を掛ける騎士団員達に"ご苦労様です!"と声を掛けながら二人して廊下を駆けていく。
裏口には多数の馬車が止まっており、そこから"ギルド隊専用馬車"を発見すると、待機していた御者にエルミスは住所と店の名前を言って乗り込む。
エルミスが着込むドレスの裾が汚れない様にとセリーニは軽く持ち上げて馬車に乗り込むのをサポートしつつ同じように乗り込めば、動き始めた薄暗い馬車の中でも仄かな輝きを灯すエルミスの胸元に思わず目を向けた。
「それは?」
「ん?あぁ、なんか先祖が作ったらしい。オレが加工してぶら下げれる様にしたんだ」
「そうですか。とても綺麗で落ち着く色合いです」
セリーニの言葉にエルミスはチェーンを軽く持ち上げてドレス内に仕舞っていた先祖の置き土産を見せた後、柔い輝きを灯す其れを見て微笑みを浮かべる。
「良ければ触るか?なんかあったけぇんだ、これ」
「いいんですか?」
「おう、……ほら」
深く腰を落ち着けていたエルミスが腰を起こしてセリーニに近付くと、向かいに座っているセリーニも少し腰をエルミスの方へと寄せて柔い輝きに触れる。
あたたかい。どこか馴染みのある暖かさが指に馴染む。ほんの少し不思議そうなセリーニの表情が、柔い輝きを通して薄らとエルミスの瞳に映った。
「きれいだな」
「はい、とても」
「……へ、あ、だろ?綺麗なんだよ、これ」
エルミスの言葉にセリーニが灯りに視線を向けてそう返すと、ぱちり、ぱちりと数回瞬きしたエルミスは少し慌てて言葉を声として吐き出した。
(完全に無自覚だった……何言ってんだオレ……)
女性は褒めるべきだと母親に言われてはいたエルミスだったが、まさか無自覚に誉め言葉がポンと出た事に自分自身で気が付かなかったのだ。
そしてそれを"道具の評価"として受け取ったセリーニに、僅かながら助かったとホッとしていると、"有難うございました"と道具から手を離したセリーニに"構わねぇよ"と落ち着いた声で返す。
「ところでエルミス、シゼラスとは違う場所に向かっている様ですが……」
「あぁ、店は王城から少しだけ遠いからな。近くて、信頼できる腕の店に向かってる」
"セリーニも知ってるぜ"と、そう言ってエルミスはストールに包まれた宝剣をしっかり握って、緩やかにスピードが落ちていく馬車から街灯によって照らされている外を眺めた。
いつのまにか80以上のブクマを貰っていて、一瞬で駆け上がっていった感じがします。エルミスのママを水着にしてみましたこんばんは!!!!!!
風邪!!久々の!!風邪!!でした。すんごい鼻水、すんごい頭痛い、すんごい喉痛い。久々に体感しました。家族からもらった風邪を処理したので、もう風邪っぴきはいません。今流行りのやつかな?と一瞬思ってたんですが、調べたら鼻水出ないって書いてあったので百パーちゃうなと。でも春風邪もすごくしんどいので皆さんお気をつけて。