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Chapter24-10

挿絵(By みてみん)





「失礼しますロドニーティス先生!」

「あんたもー卒業したでしょ!」



 ドレスルーム内で優雅に茶を飲みながら使用人たちと語っていたリーラは、リーコスの掛け声の様な言葉に反射的に教員としての口調で返しながら、隣に居るハルコ王子に軽く会釈をして咳ばらいをする。



「し、失礼しましたエルミスの母上、どうしても学生時代の癖が……」

「いいわよ。ところでそのお隣の方は?」

「イガンダス国第一王子、ハルコです。ミセス・ロドニーティス。……ロドニーティス?ロドニーティスといえば、リーコスが所持している魔法剣を作った……」

「私の息子が作りました。ハルコ王子」


 ハルコはロドニーティスという家族名に、イガンダス国のラジオ放送で流れた"王族御用達のシゼラスにて、最年少で魔法剣を作った少年が誕生"と流れたことがあった事を思い出す。シゼラス、イコール、ロドニーティス、というのはイガンダス国でも有名で、その息子を生んだ母親に出会えたことにハルコは少し感動を覚えてしまったのは、やはり鍛冶という特色がある故郷故だろう。



「エルミスの母上、少し見ていただきたいものが……」

「なに?―――待って、その宝剣、なにかおかしい」



 リーコスが説明をする前に微かな違和感を感じ取ったリーラに、王子二人は"鋭い"と感心すれば、ハルコは剣帯から鞘ごと宝剣を取り出し机の上に置く。



「触っても?念のために手袋はします」

「構いません」



 適当に散らばっていた衣装の中から手袋を取って付けたリーラは、宝剣を手に取り魔法石に軽く触れる。布越しとは言え指の腹をちくちくと刺す痛みにほんの少し眉間に皺を寄せた後、宝剣を傷つけない様ドレスを引っ張り出して机に敷けば、その上にゆっくりと置く。



「とてつもない呪いが何重にも重なっています」

「エルミスの母上、これを解く事は可能ですか?」

「エ、……リーコス君の婚約者呼んできて。話はそれからよ」



 思わずエルミス、と我が息子を呼び掛けて押し留まったリーラはリーコスにそう伝えると、僅かな希望に表情を明るくさせたリーコスは通信機を起動させた。







 リーコスの通信を受け取ったセリーニは、"エルミスと共に今すぐドレスルームに来てほしい"という伝言をエルミスに伝える。一体どういうことだとエルミスは首を傾げながらも、まだ食べていないデザート皿をワゴンに乗せて食べ歩きながらドレスルームの前にたどり着くと、先頭に立って歩いていたセルペンがノックを二回鳴らして入室する。



「お連れしました」



 小皿に乗ったフロマージュの残りをフォークに刺して口に入れたエルミスは、ドレスルームにハルコ王子が居る事まで想定していなかったのか、のどに詰まりかけるのを何とか飲み込むと、小皿をワゴンに置いてドレスルーム内に入った。


 無言で手招きする母親に、エルミスは少し首を傾げながらも向かうと、耳打ちするように母親の手と顔がエルミスの耳元へと寄せられる。



「(あの宝剣の呪い、エルミスは気付いた?)」


 こっくり、無言でエルミスは頷く。


「(あれは多分だけど闇属性も絡んでるんだと思うのよ。お母さん見れないから、神代技術の書物、アレ貸して)」



 母親の言葉にドレスルームの荷物置き場に置いてあったバッグから下巻の書を取り出すと、再び母親の元に戻って本を手渡す。妙なモヤだけしか見えなかったリーラは、はっきりと黒いモヤが見える事実に"闇属性の呪い"である事を改めて理解すると、次はリーコスを手招きする。



「リーコス君、この子がスキャニングを同時詠唱で使えるように」

「分かりました」

「全部読むと何が起こるか分からないから、途中で止める事」



 てきぱきと指示を飛ばすリーラに、セリーニは思わず手際が良いと心の中で考える。これが魔法学校で教鞭を取るが故の頭の回転なのだろう。最後の最後まで油断しないリーラの指示を受けているエルミスも、言葉の要所で頷きながらリーコスの手を握った。




「「 同調 開始 」」



 重なる二人の声がドレスルームに響き渡る。使用人や給仕たちは昼間と同じように端の方で見守り、ハルコはリーコスの一歩後ろで宝剣と二人を視界に入れて見守る。セリーニは使用人たちに何かあってはいけないと側に寄って剣の柄に手を掛けながら見守り、セルペンもリーラの傍に寄って剣の柄を持ったまま行動を見守る。



「……」



 エルミスがリーコスを通してスキャニングした光景は、想像を絶する呪いの束だ。エルミスを通して見ているリーコスも、そのあまりの多さに驚愕しつつ、呪いの根源たる魔法文字を見つけると、二人で呼吸を合わせて声に出す。



【【 命の楔 贄の血戦 孤高の王にて呪いが沈む 】】



 黒い魔法文字がエルミスとリーコスの周りを囲っていき、それをリーラが下巻の書を通して確認する。周りで聞いている者達は言葉のみしか聞こえていないため、呪いがどういった魔法文字で書かれているかさえ分かっていない。



【【 血染めの儀式 (いにしえ)の契約にて実行せん 】】

「ストップ」



 リーラの言葉でエルミスとリーコスは魔力を途切れさせると、黒い魔法文字はさらりと消えた。なるほど、と呟くリーラに、ハルコが視線を向けて尋ねる。



「どうですか、」

「―――この呪いは、……私が聞いた王位継承争いの"噂"が本当であれば、"誰かを殺めた場合力が増す"様に出来ている仕組みです。ですが、"誰も殺めていなかった場合、この宝剣を持った持ち主以外が死ぬ"様に出来ている」

「…………流石は魔法大国です」



 "当たっています"と、ハルコが言う。リーラの説明に"噂は本当でしたか……"と、セリーニが内心驚きと戸惑いを抱えていると、リーラはもう一つ付け足す。



「ただ、宝剣はまだ"贄を得ていない状態"です。贄を得た状態であれば、もう少し魔法文字が変わっていた。贄を得ておらず、尚且つ贄を求める呪いを一か所に集めた……―――つまりハルコ王子、貴方は王位継承争いという贄の呪いが掛けられた者達の、全ての呪いを受け取った……そうですね?」



 リーラの言葉に無言で頷くハルコ。付け加える説明など何もない、一字一句全くその通り。

 エルミスはスキャニングを完全に完了していない為、どのような呪いの類なのかは把握していない。だが母親はそういった呪いの類も全て知っているのだろう。流石は無属性のスペシャリストと呼ばれるだけの事はある、と考えつつ、ドレスの上に置かれている宝剣を見る。



 美しさは変わらない、薄らと見える闇属性の魔力と呪いの色さえなければ、魔法石の美しさが更に出ていただろう。真の色が見れないのが残念でならない、とエルミスが考えていると、母親が腕のブレスレットにストッカーを詰めながらセルペンに何かを話しているのが見えた。



 ドレスルームから出ていくセルペンを見送って数分後、再びセルペンと共に現れたのは王妃だった。



「お待たせいたしましたわ」

「イスティア、ちょっと打ち合わせ」

「はい」



 王妃を手招いて小声で打ち合わせを始めるリーラに、どういった間柄なのかというハルコの視線がリーコスへと向けられる。"学生時代からの親友だそうです"という説明に、納得の頷きが追加される。




 およそ三分。どうやら打ち合わせが終わったのか、再び宝剣に視線を向けたリーラとイスティアの表情は真剣みを帯びていた。




朝からお酒をのんだよ!こんばんは!!


昨日大忙しからの、今日は暇。また五日間ほど忙しい日がやってきそうなのですが、その時はまたアナウンスします。三月から四月に掛けて忙しいというのに、世間はお外に出るなっていうから……難しいですね、色々と。


しかし不要な外出は極力控えて、皆さん養生してください。家族や周りに迷惑が掛かるのが厄介なウイルスっていうやつなので、みなさん乗り切りましょう。

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