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Chapter24-5

挿絵(By みてみん)





 第四大陸イガンダス国、別名"鉱山と鍛冶の国"と呼ばれる程の鍛冶大国だ。技術面で言えばアステラスも負けてはいないが、それでも豊富な材料、担い手、鍛冶屋の多さで言えばイガンダス国の方に強みがある。


 そしてその第四大陸イガンダス国が誇る国の宝"宝剣ロズ・ディアマンティ"。希少、尚且つもう手に入る事のない魔法石がはめ込まれた宝剣は、イガンダス国の"王族の血筋のみ"が持つ事を許された装飾剣だ。


 儀式や式典等に出席する際持ち運ばれるその宝剣は、第一王女生誕祭に姿を見せるのは確実だとエルミスは考えた末、"男としての尊厳云々"と"宝剣が見れる"という二つを天秤に掛ければ、どっしりと"宝剣が見れる"に一瞬で傾き地に落ちた。






 簡単に着替えを済ませてエルミスとリーラがやって来たのは王城のドレスルーム。ドレスルームと言えど、エルミスの小さな部屋四つ分程の広さを誇り、正直言えば普通の部屋として住める。数人の使用人とイスティア、そしてリーラがエルミスの身体に見合うドレスを探し、代わるがわるエルミスの背中や前にドレスを当ててどれが良いかの大問答が始まっていた。



「やっぱりリーコス君と並ぶんだし、色の強い方が良くない?赤とか」

「今回はイエラが赤のドレスを着こむんです、青とか、濃紺とかいかがでしょうか?」

「おー、いいね。深緑とかもどう?落ち着いてるし」

「まぁ!それも捨てがたいですわね……」


「…………」



 エルミスは何もしなくて良いと言われたが、流石に暇すぎると欠伸を一つ零しながら、運ばれては身体に宛がわれていくドレスのふわりとした感覚を受け流していく。あれやこれやと親友同士の会話を聞きながら、長い問答の末選ばれた一つの黒いレースが映える濃紺ドレスに決まると同時に、ドレスルームに入ってきたセルペンが厳重に鍵の掛けられた一つの箱を持ってやって来た。



「王妃、参謀から貸し出し許可が得られました」

「有難う。参謀はなんて?」

「"致し方なし"と、」

「ふふ、本当に参謀はリーコスに甘いわねぇ。まぁそこが良いのだけれど……では開けましょう」



 両手で抱えていた箱をドレスが重なっている机の空いた部分に置いたセルペンの報告を聞いた王妃は、ほんの少しため息を吐きながらも許可を出す参謀の顔を思い浮かべつつ、ドレスの専用ポケットから杖を取り出すと、ぱちぱち、と軽い音を立てて杖を箱に当てる。


 かちん、かちゃん、と鍵が外れていき、最終的に防魔法の類が解除されると、杖を仕舞った王妃の代わりにセルペンが箱の蓋を開けた。



「おっ、ここでそれ出すとは思わなかったわ」

「やはり少しでもエルミス君と分からない様に、と思いまして……」



 箱の中を覗き込んだリーラと同じように箱を覗いたエルミスが見たのは、レースの付いた小さなティアラだった。王妃は手袋を嵌めた両手でティアラを取り、エルミスの方へと向ける。



「エルミス君、これをご存知でしょうか?」

「いえ、知らないです……」

「エルミス、これはね、髪の色と目の色を変える事が出来る魔法道具なのよ」

「……人の目と髪の色を変えるって…それって、」


「そう、禁忌魔法手前ギリギリのギリね。神様が魔法を人に教えた時、人の顔や髪の色を変える様な魔法は教えなかった。伝承や言い伝えによれば"顔は人となりを表す"からって、魔法で姿かたちを変える事は禁忌として禁止していたって話、学校で習ったでしょう?」

「ん、総合義務で習った。魔法で変えたら駄目だから、髪染めの技術が良いって皮肉も習った」



 母親の説明にエルミスは復習しているようだと考えつつ、王妃の手に収められたティアラをじっくりと覗く。禁忌魔法手前の魔法道具だからこそ、参謀の許可を得なければならないその道具をスキャニングしたい気に掛けられたエルミスは、また後でやればいいかと考えつつティアラから視線を外すと、ティアラを箱に戻した王妃がパンパンと手を叩いてドレスを片付けていた使用人を集める。



「では、お着替えとお化粧、始めましょうか」



 "はい!"という気合の入った使用人たちの声に、エルミスは小さく"よ、よろしくお願いします"と言うしかなかった。





 服だけは自分で脱ぎます、と下着一枚になったエルミスに、様々な布たちが身体に纏わりついてくる。中でも括れを見せる為のコルセットの締め付けだけは"ぐええ"と情けない声を出して慣れない表情を見せるエルミスに、当母親のリーラが腹を抱えて笑っている。


 女性にしては幾分筋肉質すぎる腕をレースショールで隠してしっかりと化粧を施したエルミスに、王妃と使用人、そしてリーラが一斉に"おぉ!"と声を上げてじっくりと眺める。



「はえ~、女の子が生まれてたらこうなってたのかぁ」

「本当、昔のリーラにそっくりですわ」

「髪の癖毛具合と目の色は夫だけど、それ以外は私そっくりなんだよねぇ…」



 王妃とエルミスの母親は魔法学校時代に出会ったと聞いた事があるエルミスは、昔の母親を知る王妃の言葉に"やっぱり似てるんだな"と考えつつ、様々な視線を受けながら腹を締め付けるコルセットの具合に慣れる事で精一杯だった。



「ヒールはどうする?」

「足の骨格に合わせたものを探す様命じました。どうです、用意出来ました?」

「こちらにご用意しました」



 エルミスの足元はまだ黒のストッキングのみで、絨毯の柔らかさがダイレクトに足裏へと伝わっている状態だ。ヒールを履かせるのか、それともヒールの無いものを履かせるかを問うたリーラに、イスティアは使用人の一人に顔を向けて声を掛ければ、小さく頭を下げて並べた靴に手を向けた。



「あまり細いと足ガクガクになりそうだし、これでいいんじゃない?」

「わたくしもそちらでよろしいかと。エルミス君、ちょっと履いてもらえるかしら?」



 母親が適度に括れのある黒のコーンヒールを手に取りエルミスの足元へ置くと、王妃の言われるがままエルミスはヒールに足を入れる。少しふらついたのを母親に掴まって両足に装着すれば、いつもよりも目線が高い事にほんの少しだけ高揚感があったのは、エルミスの心の中にひっそりと仕舞われた。


 適当に歩きながら具合を確かめ、特別足元がふらつかない事を伝えて召し物関係をクリアすれば、とうとうティアラを手に取った王妃がエルミスの頭の上に置く。



「これ、使った事あんの?」

「一度だけ扱えるかどうかの確認を、嫁いだ時にしたことがありますわ」

「そ、なら私の手は必要ないわね」

「いえ、そこはリーラも手伝っていただきたいのです。出来るだけ一日見破られない様、しっかりと魔法を掛けたくて……」

「はいはい、イスティアの方が魔法技術は高いけど、やっぱり無属性は私の出番ってかぁ~?」



 母親がこうして王妃と共に軽口を叩く姿を見るエルミスは、思わず"仲良いなぁ"と思ってしまう。自分とリーコスの話す姿を見る常連や職人たちが"お前たち仲良いなぁ"と度々言っていたが、きっと身分を越えた友情というものを、素直に受け止めた感情なのだろうと考える。




 目元まで隠すヴェールにほんの少し視界がちらつくが、コルセットやヒールと同じく慣れるものだろうと考えて王妃と母親の呪文会議を耳に入れる。

 あの色だとこの呪文、この色と長さだったらこの呪文、素性をあまり知られない様に防魔法と妨害魔法の二重掛けにすればいい、など、少々物騒な話も飛び交う中、やっと呪文が纏まったのか"よし、これでいこう"と母親の声で二人の視線がエルミスの方へと向いた。




わにさんがおらんなる時間に更新ってどないなん。こんばんは!!


昨日は更新明日!って書いててびっくりしたかと思いますが、理由は昼に忙しすぎて燃料切れでした。爆睡の後、「あっ、、、これあかん眠いやつや、、、」と決死の覚悟でスマホを操作して書き加えました。今日は元気!



出先で猫ちゃん六匹いらっしゃるお宅にお邪魔してました。かわいかった。「なんやおまえ!」って顔で窓から覗いてくる子がいっぱいいた…


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