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Chapter24-3

挿絵(By みてみん)






 刻は第一王女生誕祭前夜祭"朝"。王城は忙しなく使用人が右往左往し、騎士団員も使用人の手伝いに駆り出される中、ある一室では焦りの声が広がった。



「リーコスが代理も用意していないって言っているのよ、あなた」

「ん~、こうなればもうセルペンを着飾るしかなさそうだが?」

「そうなったら大事(おおごと)になりますわ!セルペンさんがリーコスの護衛だって周囲に認知されているのに、"婚約者"だなんて……既婚者のセルペンさんに失礼だわ」




 モーニングを優雅に食べる余裕がない。王妃ぐらいだ、国王にやいやいと言えるのは。そうセルペンは考えつつ、食事を黙々と進めているリーコスを見た。この表情から見るに、前夜祭の食事会は出ないつもりだと簡単に見破ると、流石にそれではそろそろ"年齢"が厳しいとセルペンは理解している。唇を尖らせてもごもごと王妃に案を出す国王を見ながら、セルペンは軽く咳ばらいをして口を開く。



「リーコス様はどうやら前夜祭に参加しないご様子ですが、」

「セルペン、」

「失礼。しかし、もう期限は一年過ぎていますリーコス様。"十五歳までに婚約者を決めておく"という習わしを、二年も過ぎる様ではいけないと思いますが?」


「リーコス、流石に駄目よ。学校が卒業するまでは"学業"を理由に欠席していたのは目を瞑ったけれど、流石にもう駄目。お母さんはきちんと言いました、代理でもいいからって」



 セルペンの読みは当たったのか、どうやら本当に前夜祭に出ないつもりだったリーコスは、セルペンの告げ口とも言える行動に思わず視線で刺す。それを卒なく受け流しながら尚且つ刺し返すその行動は、流石幼い頃から護衛に付いただけはあると、その場に居た使用人たちが一斉に思った。



 王族には様々な約束事がある。その一つが"満十五歳までに婚約者を一人作る事"だ。まだ早い、と思うかも知れないが、長い苦楽を共にする事を重んじる王族には、決して早いという事でもない。現に王族として血のつながりがある親戚には、既に見合いによって婚約者を決めた者達もおり、リーコスは度々親戚に"紹介ぐらい出来るがどうだ?"と声を掛けられることだって少なくない。




 だが頑なにリーコスは首を縦に振る事もなく、見合いも断り、代理を立てれば良いと思っていた前夜祭は結局代理を頼める女性が居らず、もういっそのこと架空の人物の噂を広めてしまおうと思っていたところを、セルペンと母親の釘刺しによって身動きが完全に取れなくなってしまった。



「そう言えば最近ギルドの親子関係で、女の子の親が出来たって言ってたわよね?その子はどうかしら?」

「セリーニ隊員と接する時は、”親"として接しています。"親"であるセリーニ隊員を、自分の私用に巻き込みたくはありません」

「うっ……そうね、そうよね……」



 ぴん!と閃いた表情を浮かべた王妃が落胆の表情に変わるまでの間約二十秒。リーコスはデザートに出されていたフルーツ盛りをフォークでひょいひょいと食べながら"親"の背中を思い出す。


 フルーツボウルに入っていた最後のグレープフルーツを刺して口に放り込んだリーコスは、両手を合わせて無言のご馳走様を行い、席に立ちあがって自室へと戻っていく。"あ、"という王妃の声はパタンという扉の閉まる音と重なってしまった。




「あの子ったら……」

「まぁ許してやってくれイスティア。リーコスは見合いよりも、私たちの様な恋愛結婚を望んでいる。代理を立てないのも、女性を思っての事だろう」

「……モテないのかと不安を持っていたのは貴方もよリンギル。優しいのはあの子の性格だし分かるけど……魔法学校で告白の類も受けなかったのかしら……」


「国王、王妃、護衛の私からプライバシーの一つを伝えてよいのかは分かりませんが、恋文の類は受け取っていました」



 息子の背中が消えた扉から食事の方へと視線を向けながら会話をする夫婦に、まだその場に留まっていたセルペンが口を挟む。リーコスの護衛であるセルペンが出て行ったリーコスの元に付いていかなかったのは、もう一人の護衛であるヴァリーの方が男同士で良いと思ったからだ。女性である己が付いていっても、ほんの少し心が落ち着いていないリーコスの力にはなれないと理解している。


 恋文の言葉に、夫婦が一斉にセルペンへと視線を向けるが、"全て丁寧にお断りをなさっていました"という言葉で肩を落とす。もしその中で気が合う者がいたら、代理にと頼み込もうとしていた夫婦の考えは一緒だったようだ。



「リーコス様は、一回だけでも婚約者と共に顔を見せれば、第一王子の血筋が続くと分かって皆安心すると理解はしている様です」

「けれど、その一回だけの女性に迷惑を掛けたくないから、代理も立てれず……ってことね?」

「はい」



 セルペンの説明に王妃が結論を出せば、完璧ですとセルペンが首を縦に振って短い返事をする。優しすぎる性格が良い、と国王は甘いマカロンを頬張りながら珈琲を啜っていると、妻である王妃の表情を見た。何か真剣に考えている、ああいう顔をするときは"なんとかしよう"と思っている表情だと思い出した頃には、勢いよく椅子から立ち上がって決意を固めた表情に変わっていた。



「わたくしが代理を見繕いますわ!!セルペン、付いてきて。あなた、前夜祭の準備と、イエラとリーコスの面倒を、」

「う、うむ……」



 セルペンは王妃が出やすいように椅子を大きく引けば、ドレスの裾を持って走って出て行った。セルペンも椅子を直して後を付いていくと、残された国王と使用人が互いに目線を合わせながら、いそいそと王妃に言われた通りに行動を始めたのだった。




誤字報告有難うございます!めちょ助かってますこんばんは!!!


今日はじめてどらもっちを食したんですけど、おいしい!すっごくおいしい!あれ皮なにでできてるんだろーなぁ、、、どら焼きの皮っていうよりかは、クレープっぽい質でした。おいしい。


相変わらず誤字の報告修正システムの凄さにびびっております。なんだこの神機能は…そして誤字機能を使用している猛者のかたすげぇな…ありがたい、本当に。出来るだけ誤字がないか確認したりもしてるんですが、どうしても目が滑ってるときもあるので、皆さんこれからも誤字があったらよろしくお願いします…。

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