Chapter24-2
「時期王子はあなた、ハルコ第一王子って噂が広まってる。貴方の自国であるイガンダスから、北西にある第一大陸ケノファニスまでね」
「アステラスは、」
「勿論、アステラスは特にイガンダスとの交流があるから、ハルコ第一王子じゃないかって噂は強く出てるわよ。バーの時だと最近その話もちらほら出てきてるしぃ~……」
集められた情報を伝えるコラーリに、紙ナプキンをして果敢に巨大ステーキに挑むハルコは、しっかりと咀嚼をして飲み込んだ後、念には念を入れて質問をすると、コラーリは夜の部であるバーでもその話が上がっている事を伝えれば、熱い鉄板で肉の火入れをする音が店に広がった。
「ならいい。それだけ広まっていれば、」
「―――じゃあ私も質問。まず、この分は返すわ」
そう言って、コラーリは先ほど大口ポケットに入れていた封筒を、鉄板の横に置いた。溢れる肉汁ごと肉を飲み込み、付け合わせのブロッコリーを頬張りながら封筒に視線を向けたハルコ。
「なんだ」
「イガンダス国の"次期国王を決める方法"、代表的な噂があるのは知ってるわよね?」
「……」
「あれホント?」
封筒から肘をカウンターに付けて両手の甲を顎置きにしているコラーリに視線を向けたハルコは、碧の瞳を真っ直ぐコラーリに向けたまま大きく一回、深く肺に空気を溜めて吐き出せば、香る焼けた肉とスパイスの香りが満たされた。
「――――本当だ」
「へぇ、じゃあ尚更"聞くまでもなかった"んじゃない?噂が真実ならば、今貴方が"生きてる"時点で、時期国王が誰か決まっているモノよ」
「……そうだな」
最後の一切れを口に放り込み、バラバラに散らばった甘いとうもろこしをフォークでかき集めるハルコの目は、何処となく安堵した様子だった。そうコラーリは感じ取ると、綺麗に鉄板の上を空にしたハルコに、食後のワインを冷えたグラスに注ぎ入れて差し出した。
「コラーリ、お前とは何年の付き合いになる」
「えぇん?そうねぇ…もう十年ぐらいじゃあなぁい?昔からのご贔屓様だし、なにより一年に会えるか会えないかのイケメンだものん…♡もっと贔屓しちゃう!」
「もう十年ほどか…、お前は魔力無しの"アスプロ"にしては、情報屋の腕もいい。これからも励めよ」
ハルコはそう言ってワインを呷る。冷えたグラスに注がれたワインの冷たさが、喉を通って胃を冷やすと同時に、じわりと熱が広がり香りが身体を満たす。コラーリはどことなくハルコの顔がいつもの飄々としたモノではないと理解しているが、敢えてそれを口に出す事は無かった。
「第一王女生誕祭が終わったら、飲みにきてねん」
「――――あぁ、そうする」
ご馳走様。と、チップを載せた代金を封筒の上に置いたハルコは、そのまま店を出る。
引き留める事も出来ないその背中を黙って見つめたコラーリは、残された封筒と紙幣を両手で持ち、ひっそりとため息を零したのだった。
円盤もっててもテレビで映画やってたら見たくなるよね。HFみるぞー!