表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
157/175

Chapter24 歴史の変革

挿絵(By みてみん)





「いやです兄さん、やはり私が変わるべきだ。兄さんがその役目を担ってはいけない!」

「……我が最愛の弟よ、後は頼んだぞ」

「兄さんッ…!!にいさんッ…!!」



 仄かな温さを纏う潮風が頬に当たり、一人の男の頬に伝う涙の筋を歪ませる。付き人が涙を流す男の肩に手を添えて制止させながら、別れの言葉を口にする人物に対して涙を堪えながら頭を下げた。


 船に乗り上げ"同じ顔をした片割れの弟"の叫び声を聞く。約束された"次期王"の道を歩む"同じ顔をした兄"の顔は、泣き叫ぶ弟とは違い、まるで死神に会いに行く様な物騒な表情を携えていた。剣帯に下げられた国の宝は、風に揺れてかちり、と音をたてつつ月の光を受け止めている。







「街に妨害魔法の類が掛けられているかもしれません」

「昔、とある男……いや、女か。女から警備の薄い道のりを聞いている。二時間ほどで戻るので、少しだけ私の身代わりとしてここに留まっていてくれ」

「それは構いませんが……」



 大陸を離れ、丸一日掛けてアステラス国の船着き場である南の港に着き、馬車で中央へと移動した男と護衛の付き人は、王族が用意した高級ホテルに宿泊していた。自身も王族の為外の警備が厳重である事を理解しており、玄関に一歩踏み出せば沢山の隊員達が付いてくるだろう。


 黒いマントを手渡した護衛は、"お気をつけて"と口にして、マントを羽織りフードで顔を隠す男の背中に、腰を折ってしっかり頭を下げながら見送った。







 "第一王女生誕祭・前夜祭"一日前、他の大陸からやってくる王族や貴族が一斉に中央へと集まるため、警備体制が一層強化された深夜の王都アステラス。裏道を通り抜けて警備をやり過ごす男がたどり着いたのは、仄かな明かりのみしか見えない一つの店だ。


 来客を告げるベルを聞いた店主は、キッチンルームから顔を覗かせながら申し訳なさそうな声を上げる。




「申し訳ないわぁ~~ん。今日だけ生誕祭と前夜祭準備でお休みしてるのよぉ~ん……、またお日様が上った時に……」

「…人が居ないのは好都合だ。今が良いと、我儘を言っても?」

「ん、ん、んんんまぁ~~~♡」



 マントに付けられいたフードを被ったままの男は、ドアを閉めて顔を見せる為にフードを取ると、目を白黒させた筋肉女装男が大きく縦に頷きながらカウンターに案内する。



「久しぶりねぇハルコ第一王子♡三年ぶりかしらん?よく護衛付けずにここまで来れたねん」

「お前が警備の薄い裏道を教えてくれたからな、コラーリ」



 ウェルカムドリンクとして甘めのワインを入れたグラスをコースターと共に出したコラーリは、久々に見た顔の良い王子の登場に頬を緩ませる。グラスの柄を持ちワインを呷るハルコ第一王子と呼ばれた男は、甘さと仄かな渋さが広がる味わいに"うまい"と一言小さく感想を口にして、コースターにグラスを戻した。



「それでぇ?いつもは第一王女生誕祭の後か、第一王子生誕祭の後に、私の店に来てた記憶があるんだけどぉ~~~……なにかあったのかしらん?」

「察しが良い。……これは、前払いだ」



 そう言ってハルコは懐から財布を取り出し、挟んであった封筒をカウンターに置いてコラーリの元へ寄せる。封筒を手に取ったコラーリは、ぱらぱらと札束を捲って計算をすると、片眉を上げて唇を尖らせながらハルコに視線を向ける。



「量が多すぎるわん」

「前払いだ。"シェフの愛情たっぷりディナー"を頼む」

「んも~。第一王子だから贔屓しろなんて言わないハルコ第一王子の律儀ぃ…♡はぁ~い、じゃあここに……」



 封筒をとりあえずエプロンの大口ポケットに仕舞ったコラーリは、小さなメモ帳から紙を切り取りペンと共にハルコに差し出すと、紙に書かれていく文字を目で追っていく。完成されていく"情報提供依頼"内容に眉を顰めて首を傾げれば、メモとハルコを交互に見た。



「……結果が出てるじゃない」

「今一度、改めて"世界の認識"を聞いておきたい」

「…真意は分からないけど、とりあえず依頼は熟すわ。じゃあご飯作ってくるわねん♡」




 "第四大陸、イガンダス国の時期国王は誰だと情報が回っているか、"―――そう書かれたメモを受け取ったコラーリは、ばちーん!と華麗にウインクをキメて奥のキッチンへと戻っていく。その後姿を眺めながら、ハルコは飲みかけのワインを一気に呷って咥内を湿らせると、何れ来るであろう巨大な料理をのんびりと待つのだった。




昨日あまりにも忙しくて疲れがピーク、眠りに眠って今普通に飯食っていつのまにか21時!こんばんは!慌ててあとがき書いてます!!



これも小話、されど小話。お付き合いの程よろしくお願いします~


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ