Chapter23-11 (次回更新3/14!)
「電気消すぞー」
「あぁ」
寝巻に着替えたエルミスが、簡易ベッドに腰掛けるリーコスに一言声を掛けて明かりを消せば、読書用のランプが部屋に明かりを灯す。簡易ベッドに乗り込み、備え付けのベッドに寝転んだエルミスは、時計塔参考書を広げつつ寝転ぶ。
リーコスも同じように寝転んでいると、ふとエルミスの胸元に仄かな明かりが灯っている事に気付いた。
「それ、なんだい?」
「ん、あぁ。そうだ、そういえば今日学校長から返してもらったんだよ、これ」
そう言って襟に手を入れて取り出したのは、四角い金属装飾箱に入れられた例の硝子玉だ。チェーンに繋がれているソレは、一見美しいアクセサリーと思わせる代物で、綺麗な装飾を描いたそれがエルミスの作品である事は、リーコスもすぐに理解した。
「良く出来てるな」
「リーコスが来る前にちゃっちゃと作ったんだよ。こうすりゃ無くさねぇだろ?」
「相変わらずセンスが良い。それで、学校長から何か聞いたか?」
リーコスの質問に対し、縦に頷いたエルミスはネックレスを仕舞いながら学校長の言葉を思い出す。
「シゼラスの作ったモノだっていうのが本当だって事と、害のないものであることは確かだってよ」
「やはりそれぐらいの事しか分からないか……」
「あっ、後は層になってる鍵は、誓約魔法によって掛けられているらしい。どんな内容かまでは分からなかったって」
胸元が仄かに暖かい。決して熱いという熱ではなく、癒される心地よさがエルミスの身体を包む。報告を全て聞いたリーコスは、明かりに照らされている参考書の図面に視線を向けたまま、一つの考えを口にする。
「ソレは、魂下ろしの一族から"預かっていた品物"だと言っていた。シゼラスの書庫にあった神代技術の書の様に、書庫に保管してあってもおかしくはない道具の一つだが、なぜかそれは魂下ろしの一族が預かっていて、エルミスという子孫に返した。―――なぜだろうか」
図面からエルミスの方に視線を向けるリーコス。橙の明かりが青い瞳の色と混ざる。それを橙の色が強く映るエルミスの灰白色の瞳が捉え、リーコスの疑問に口を噤んで考えを巡らせ始める。
エルミスが最初に頭の中に浮かべたのは"預ける理由があった"という事だ。先祖はこの魔法道具を作るにあたって、"誓約魔法"を使って厳重に鍵を施し、尚且つその道具を魂下ろしの一族に預けた。そんな重要な魔法道具を魂下ろしの一族が預かる意味が、この道具の詳細に結びついているのかもしれない。
「……なぁリーコス、その魂下ろしの一族、どんな理由でアステラスに来てるんだ?」
「それは……国王にしか分からない。だが、少なくとも国の為になにか行っていることぐらいは分かる」
「そか。……じゃあ、オレとか父さんに渡すなら、なんでシぜラスに寄らずにリーコスに渡したんだろーな」
エルミスの言葉にリーコスは誓約魔法の仕組みを思い出す。誓約魔法は簡単な約束事から、人の生命を左右する重いものまで多種多様。贄を使えば強い魔法となり、半端な解除魔法は通用しない。
「………直接渡せない事が、誓約魔法の"贄"の一つとなっている…?」
「強い誓約魔法は動物の命やら、それこそ人の命を贄にしてするものまであるが、"この先一生の何かを犠牲にして、約束事を破らなければ魔法が持続する"っていうものがあったはずだ。時間やら、認識やらな」
「つまり魂下ろしの一族は、ロドニーティスの血族に近付かない、というものを贄としたのか…?」
「そこまで詳しくは分からない」
"こういった交友関係があった"と、エルミスの祖父が語る事がある。それは祖父が幼少の時や、皺ひとつない顔で働いていた頃、そして先祖から言い伝えられてきたであろう大昔の話まで数多くあった。下手をすれば三桁を遡る話まであったが、先祖が道具を預ける程親密な関係だった一族の話は一切出てこなかった。祖父が秘密にしているかと言えば、決してそうではない事ぐらい家族のエルミスには理解できる。
「ただ、俺に渡したという事は、エルミスに渡しても良いと思った何かがあったという事は間違いないだろう」
「……オレがこの道具を分かる様になるってことか?まぁ……神代技術っぽいからなぁ、これ」
うつ伏せの状態で襟の中から仄かに灯りが揺らぐのを眺めるエルミス。未だ神代技術や魔法を全て理解したわけではなく、まだまだ理解できない単語の意味や、技術の未熟さを理解している。
魔法学校に通えばまた何か変わっていたのかもしれないと、ふと思った事も少なくないエルミスは、それでも鍛冶屋の道を選んだ。ならば途中で投げ出すことなく、そして新たな知識を得る為に、隣で眠たげに舟を漕ぎ始めたリーコスを眠気の限界まで図面の解読をしてもらいながら、限られた夜を過ごしたのだった。
ハロって天気が崩れるサインなんか、、、初めて知ったわこんばんわ!!!
今日は3/11の震災の日ですね。関西住の私は、その時丁度神奈川に居る知り合いのお家に二週間ほど遊びに行ってて、丁度そこの家で色々作業やらやってたんですけど、ぐらぐらしてきてすぐに鳥かご持って飛び出したんですよね。その時はまだ鳥かご一つだけだったんですけど、今では大所帯になってしまって、鳥かご三つあります。毎年震災の時、どないして鳥かごを持つべきか、と考えながら過ごしています。