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Chapter23-3

挿絵(By みてみん)







 賑わう声を響かせていた廊下は、生徒の声ではなく教員の声のみが微かに聞こえており、どちらかと言えば学校長のパンプスの音の方が大きい。



 時折廊下側の窓から生徒達の様子を眺め、教員の出す問題に答える生徒に小さく拍手を送ったりする様子を後ろから見るエルミスは、"なるほど、道理であのやんちゃな母さんが学校長の事を好きなわけだ"と納得した。教科書に隠れて手を振る生徒ににっこり笑って手を振り返す学校長は、そのまま黒板の方を指さした後もう一度手を振って歩き始めた。




 学校長がエルミスを連れて最終的に足を止めた場所は、校舎と校舎を繋ぐ渡り廊下。二階部分のみ渡り廊下の機能を果たしており、一階部分はアーチ状を描いた石組みが連なっている。

 その一階部分――つまり外へと移動したのだが、教師がクラスを引き連れて授業を行っており、複数の生徒がアーチを潜りながら魔法を駆使しているのが見えた。



「……罠解除、ですか?」

「当たり。最初に罠となる"魔法"を設定する生徒がアーチに入って設定して潜り抜けた後、次の生徒がアーチの中で前の生徒が設定した"魔法"に、"同等の威力を中てて解除する"」

「設定する側も、解除する側も、適切な威力で魔法を扱うことが出来るか……って、事です?」

「その通り」



 魔法は、魔力によって均一に形成された魔法文字、適切な魔力量によって発動する。たとえ魔法文字を形成するのが上手くとも、魔力の込め方が足りなければ魔法文字は消えてしまい、魔力を込め過ぎれば魔法文字が歪となって暴発してしまう。



 罠を解除していく生徒達の腕輪が魔力特有の輝きを帯びているのが分かる。どうやら学校支給の物で、エルミスが直した物と同じ系統だという事が目視で確認できたが、遠くからでも分かる違和感に首を傾げた。



「あの道具、少し壊れてませんか」

「えぇ、あれは罠解除授業専用の道具で、"わざとその状態"にしているの」



 道具をわざわざ"少し壊れた状態"にする意味が分からないエルミスは、生徒達から学校長に視線を移すと、その視線に気付いた学校長は視線を合わせて緩く笑うと、再び生徒に視線を向けた。



「道具というのは常万全の態勢でなければならい。けれど、決して外が安全であるという事はありません。途中で道具の不調が分かった時、"道具が不調でも使わざるを得ない"時があります。身を護る事だけを考えて、道具を使う事を学ばせるのですよ」

「なるほど……確かに、壊れかけでも使用していた道具が幾つか修理に来たことがある……」



 道具を直す鍛冶屋で育ったエルミスは、道具が壊れる程酷使する機会があまりなかった。だがよく考えてみると、ギルド隊員や騎士団員達が持ってくる傷付いた道具を修理する際、スキャニング魔法を掛けて情報を見た時、マナの路が潰れていたり、専用の加護が無くなっていても使用していた履歴が残っていたのだ。


 なぜこんなに酷使するんだ、とは思っていたが、やはり危険な場所で活動する者達は「すぐに道具を直せない」からこそ、壊れかけていても上手く使って己の無事を最優先するのだろう。



 独り言の様に呟くエルミスに学校長は大きく頷くと、丁度チャイムの音が敷地内全域に響き渡る。授業終了のチャイムで教員が生徒達に大声で終了の手引きを説明しているのを眺めていると、生徒達が学校長に気付いて手を振りながら教室へと戻っていく。




 人気(ひとけ)が少なくなり、後片付けを終えて報告する一人の生徒と教員を残して渡り廊下は通常通り使用されている。賑わう生徒たちの声を聴きながら渡り廊下――罠解除の場まで近付くと、学校長が一つのアーチに入って罠を設定する道具を手に取った。


 そして学校長が懐から取り出したのは、およそ三十センチほどの杖だ。エルミスは思わず視線を注目させる。



(杖……!!魔法道具で一番扱うのが難しい道具を学校長も使ってんのか……!!)



 罠を設定する道具に、学校長は杖先を使って数回叩く。ぱちぱち、かつかつ、どちらの擬音を使っていいのか分からない程小さな音がエルミスの鼓膜に届くと、学校長の周りを一気に三つの魔法文字が囲い始めた。



(杖を使い熟している人は、今まで一人だけ知ってるが……学校長も杖を使い熟してる。どんだけ天才なんだよこの人……)



 通常、呪文を唱えて魔法文字を形成し、一本ずつ呪文を成立させて魔法文字の輪を重ねていき、魔法文字を結ぶ呪文を唱えて魔法を発動させる。


 例外はいくつかある。まず一つは呪文を短縮させるための魔法陣を道具に刻む事によって、初級魔法や簡単な中級魔法を呪文無しで発動させる事が出来る。

 次に指輪を使い、指先に魔力を乗せて空中で魔法文字を描き出す。声に出さない分、補助の無い魔法文字を宙に書くだけでも至難の業だ。


 そして最後は杖という魔法道具。



(杖の歴史は古い。初めに出来た魔法道具と言っても良い……作るのも至難の業だが、何より加護を付与する魔法陣やマナの路を刻むのがダントツに少ないシンプルな道具。……担い手の技術のみが問われる道具を、ああも簡単に使うのか)



 "えぐい"、その一言がエルミスの頭の中に浮かんで消える。魔法文字の詳細はどうやら完全に分からない様になっているのか、アーチ状内で魔法を使用する学校長の魔法文字はぼんやりとしか見えないが、きっと整った正確な魔法文字が円を描いている事は容易に想像できる。


 やがて三本の魔法文字は一つになり、罠専用の道具に魔法文字の輝きが吸い込まれていく。コッ…ズズ……、と石特有の音を立てて窪みに道具をはめ込んだ学校長はアーチの向こう側へと出ていき、エルミスに軽く視線を向ければ、その視線に気付いたエルミスはアーチの中へと足を進めていく。



 アーチの中に入った途端、ほの寒い風がエルミスの項を撫でていく。日陰の空間は一層寒さを感じさせる、そう思いながらエルミスはアーチの中に置かれている箱に入れられた種類別の壊れた魔法道具の中からブレスレットを取り出し腕に通した。




毎回焼きそばのきゃべつは千切りの方が食べやすくない?て思ってしまうまじすかです。こんばんは!!



今日は一日ずっと眠くてやばかったです。昨日なんやかんや色々考えて五時に寝て、八時に起きて、とかいうくそみたいな夜でした。あと今日すんごいあったかくて…こらねむなってもしゃーないやんって思いながら家帰ってすぐに二時間ほど寝ました。


ねむい。


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