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Chapter22-5

挿絵(By みてみん)




 荷物を纏めて土産と持つギルド隊員達が特殊転送魔法陣で帰っていくのをエルミスは視界に入れながら、部屋から運び出された携帯魔法炉を運ぶ隊員の後ろに着いていく。



「よいしょ…、…っと。では、帰りはどうしましょう?シゼラスに寄りますか?」

「店じゃなくて家の蔵に仕舞ってたんで、出来れば家に寄ってほしいんですけど…出来ますか?」

「はい。大丈夫です、一応地図に魔力点を打ってもらえますか?」



 荷台に積んだ隊員がエルミスに向かってそう言うと、通信機を起動させて王都アステラスの地図を出した。ここを大きくしてください、と言いながら隊員の通信機を覗き込むエルミスは、自分の家の場所を見つけて指で押す。魔力を小さく指先に込めれば、淡い青色の輝きが灯った。



「ここです」

「了解しました」



 にこりと笑った隊員はそのまま待機している御者の方へと向かっていく背中をエルミスは見ていると、数人の職人と共に父親がエルミスの元へとやって来た。



「魔法炉、もう運んでもらった?」

「ん。ついでに、家に直接荷台を着けてくれるっぽい」

「そうか。――エルミス、」

「ん?」



 魔法炉の確認をしに来た父親に、手身近に報告をしたエルミス。数回相槌を打った父親はエルミスの名を呼ぶと、ぽんと頭に手を置いて癖毛の頭を数回撫でた。



「総隊長から聞いたよ。お手柄だったね」

「む……ありがと、」

「魔獣が沢山来て、道具の簡易修理をしている間にエルミスの姿が見えなかったから、安全な場所に避難しているのかなって思ってたけれど……思っていた以上に勇敢な行動をしていてびっくりしたよ」



 親指と人差し指の腹をくっ付けた指を鼻先に中て、人差し指を離し伸ばすと、"鼻が高い"というポーズを取る父親の無邪気さにエルミスは歯を見せ笑う。



「さて、そろそろ時間だね。エルミス、母さんにお土産買ったかい?」

「ん、ロールケーキ買った」

「良かった、被ってたらどうしようかと思ってた」

「父さんは?」

「入浴剤のセット」



 互いに鞄の中を開けてちらりと見せ合う親子を微笑ましく見守っている職人達。


 もうすぐ特殊転送魔法陣で中央へと帰る隊員が居なくなるころ、南の関門へと一直線に走ってくる人影がエルミスの視界の隅へと入ってきた。鞄のジッパーを締めて形がはっきりとしてくる人影に視線を向ければ、片手を上げて手を振り名を呼ぶ。



「レヴァン!父さん、紹介する。セリーニの弟で、ナノスで仲良くしてもらったレヴァンだ」

「へぇ、セリーニちゃんの。こんにちは、エルミスのお父さんです。ナノスでエルミスと仲良くしてくれてありがとう」

「いえ!とんでもないっす!おれこそエルミスと沢山居れてすげー楽しかったです!」



 少し息を切らしながらも言葉を途切れさせないのは体力がある証拠なのか、大きく胸と肩を動かしたのはたった数回。互いに握手をする二人にエルミスは軽く笑みを浮かべていると、"先乗ってるね"と父親は職人たちが既に乗っている荷台へと乗り込んでいった。



「見送りに来たのか?」

「それもある。でももう一個は……っと、これだ」

「お、通信機のカード」



 レヴァンがごそごそとポケットから取り出したのは、家庭用通信機に差し込むカードだ。エルミスはそれをストッカーポーチに入れると同時にメモ帳を取り出しペンを走らせる。メモに書き込むエルミスをじっと見るレヴァン。数秒後、ピリッと音を立ててメモ帳から切り離されたメモをレヴァンに渡す。



「一応割り当てられたオレの番号。上が工房、下が家。ちなみに時間不定期なんだが……大体は工房に居る事が多い。家に掛けて出なかったら工房に掛けてくれ」

「サンキュー……!」



 エルミスの説明にメモを見ながら頷くレヴァンは大事に内ポケットへとメモを仕舞うと、総隊長の出発の合図を取る隊員の声が聞こえる。



「またいつでもナノスに来てくれよ」

「暇ができたら、な。レヴァンも中央に来る時は言ってくれ、案内する」

「サンキュ。……元気でな!」

「―――あぁ!」



 エルミスは鞄を置いてレヴァンと抱擁を交わす。互いに背を軽く叩きながら身体を離して笑顔を見せると、エルミスは鞄を持って荷台に乗り込んだ。



 走り出す荷台からエルミスは顔を出し、大声でレヴァンに言葉を投げる。



「無茶な実験はすんじゃねーぞー!!」

「エルミスこそー!!不健康な生活はやめとけよー!!」



 そういって互いに大声を上げて笑い、同時に手を振り合う。やがて見えなくなった互いの姿に手を下ろし、ナノスの森が生んだ風が二人の身体を撫で過ぎ去っていく。





「さぁて、貰った資料をじっくりみるとすっか……!」



 そう言った一人の少年が、誰もが放り投げてしまった匙を拾って目標を成し遂げるのは、もう少し後の話――――。





と、いう訳でですね。ナノス編終了です!いやー、長かった。大体プロット通りにはいったので、まま良かったのでは。


次回は29日21時更新予定です。その間は小話(長い)二つぐらいと、大きいお話を一つです。ストックはまだまだ溜まっていませんが、プロットは出来ているのでずらーっとストックを溜めつつ、おそーいお正月休みを堪能したいと思います。

なにかあればお気軽にメッセージをどうぞ!ではでは二週間後~!:)


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